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光速のレジェンド(アグネスタキオン)

  • 2013年09月16日(月) 12時00分
アグネスタキオン

アグネスタキオン


◆名種牡馬×名競走牝馬=“幻”の三冠馬

 プレーと采配は別物。名選手が名監督になるとは限らない。競馬の世界にも「名競走牝馬、必ずしも名繁殖牝馬にあらず」という言葉がある。名種牡馬×名競走牝馬。この至極の配合なら、次々と一流馬が誕生してもよさそうなものだが、これがなかなかうまくはいかない。

 だが、半世紀に1頭出るか出ないかの確率で、その難題をクリアする名種牡馬が誕生する。自分の長所を余すところなく伝え、一方で配合牝馬の資質の高さ、血統の良さも巧みに取り込むのだ。日本に未曾有の血統革命を巻き起こしたサンデーサイレンスが、まさにその併せ技の持ち主だった。

 この種牡馬の天才的な和合性は、「サンデーサイレンス×名競走牝馬」の配合が、名馬を世に出す“勝利の方程式”をつくり出すこととなった。桜花賞馬に輝いた名牝アグネスフローラが、2年連続で送り出したアグネスフライト(日本ダービー)、アグネスタキオン(皐月賞)の全兄弟がその好例である。

 アグネスフライトよりも能力はさらに上。それがアグネスタキオンの牧場での評価だった。デビューは2歳の12月。調教が目立たなかったため3番人気だったが、確かに驚異的な末脚を繰り出して3馬身半の快勝。続くラジオたんぱ杯3歳S(現ラジオNIKKEI杯2歳S)もレコードで圧勝した。

 2着に敗れたジャングルポケットは翌年の日本ダービーを、3着のクロフネはNHKマイルC、ジャパンCダートを勝っている。そのハイレベルなメンバーが集まったレースで、アグネスタキオンは次元の違うスピードを見せつけて、クラシックの最有力候補に躍り出たのだった。

ラジオたんぱ杯3歳S(現ラジオNIKKEI杯2歳S)もレコードで圧勝したアグネスタキオン

ラジオたんぱ杯3歳S(現ラジオNIKKEI杯2歳S)もレコードで圧勝したアグネスタキオン


 明けて2001年。馬の年齢表記が、この年を境に従来の数え齢から、満年齢へと変わっている。3歳の初戦に弥生賞が選ばれたが、その能力の高さは関東にも知れ渡り、恐れをなして回避馬が続出する始末。フルゲートの半分にも満たない8頭立てとなったが、もはや敵などない。不良馬場を2着に5馬身の差をつけて圧勝した。

 そして迎えた皐月賞。「能力はシンボリルドルフ(1984年の三冠馬)に勝るとも劣らない」。高評価を得たアグネスタキオンは、単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推された。しかし、ここでもまったく期待を裏切らない。楽勝で三冠レースの第1関門を突破した。これで4戦全勝。続く日本ダービーの勝利は決まったようなものだった。

 ところが、皐月賞から2週間経って左前脚に屈腱炎を発症。日本ダービーを断念するどころか、競走生命までも絶たれてしまうことになる。わずか4戦、デビューから半年も経たないうちに、早くもターフを去ることになった。無事なら三冠馬も夢ではなかったろう。能力が高すぎたゆえの悲劇であった。

 しかし後年、その光速のレジェンドは種牡馬となって、血の第2幕を全開させることになる。優秀な産駒を続々と送り出し、日本リーディングサイヤーにまでのぼり詰めたのだ。そして今も、その血は脈々と息づいている。(吉沢譲治)

◆レース詳細
2001年04月15日
第61回 皐月賞(GI) 中山/芝右2000m/天候:晴/芝:良

1着 アグネスタキオン  牡3 57  河内洋  2:00.3
2着 ダンツフレーム   牡3 57  藤田伸二 1.1/2
3着 ジャングルポケット 牡3 57  角田晃一 1/2


◆競走馬のプロフィール
アグネスタキオン(牡3)
父:サンデーサイレンス
母:アグネスフローラ
騎 手:河内 洋
調教師:長浜 博之(栗東)
馬 主:渡辺 孝男氏
生産牧場:社台ファーム

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