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黒潮の微妙な波

  • 2003年08月18日(月) 11時33分
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 8月14日、大井「黒潮盃」。伏兵ジョイフルハヤテが金星をあげた。絶好のスタートを決め、来るなら来いという強気の逃げ。終始快調なテンポで飛ばし、追いすがるナイキゲルマンを渾身の力で振り切っている。丸一日降り続けた雨が味方したこと。鞍上の思い切った作戦が成功したこと。それでも1790m1分53秒2(羽田盃ゲルマンと同タイム)ならフロックとはいえず、結局人気馬と伏兵、イメージほど能力差がなかったという結果だろう。納谷和久騎手はデビュー12年目で重賞初制覇。ひとまず今日は人馬一体、気迫と闘志が大きな勝利をもたらした。

黒潮盃(サラ3歳 別定 東日本地区選定馬 1790m不良)

 (1)ジョイフルハヤテ   (55・納谷) 1分53秒2
◎(2)ナイキゲルマン    (55・的場文) 鼻
△(3)ティーケーツヨシ   (55・酒井)  3
▲(4)ステルステクニック  (55・石崎隆) 頭
△(5)ネイルアート     (53・山田信) 1/2
……………………………………………………
△(6)イシノファミリー   (56・森下)
△(11)スパルタニアン    (55・今野)

単6130円 馬複6880円 馬単25770円
3連複32340円 3連単267780円

 ジョイフルハヤテは、父シャンハイ、母ヒカリスキー。かつて女傑で鳴らしたヒカリカツオーヒの半弟。そのカツオーヒはロジータ記念、エンプレス盃など、大井、川崎、船橋で重賞5勝。平成3~5年の活躍馬だからやや話は古くなるが、距離オールマイティーの快速型で、主戦が佐々木竹見騎手だった。「いったん(ナイキゲルマンに)交わされたのに、ステッキを入れたらもう一度伸びてくれた」と納谷騎手。これが一介の逃げ馬から脱皮、いい転機になるのかどうか。手中にしたダービーグランプリの出走権は「もう少し様子を見てから…」(高橋三調教師)。まだ昇りめはありそうで、今後は気性面の成長が課題だろう。

 ナイキゲルマンは道悪を意識して早め早めの競馬をした。ジョイフルと叩き合って鼻差2着は、期待通りか期待外れか評価に迷う。当日マイナス2キロ。気配は悪くないものの、どこか小さくまとまってしまったイメージも否めない。あるいはこのあたりでひと息入れ、充電を図ってベターか。道中反応よく動いても、いざ追い出して迫力不足。今日の結果ではアディライトの背中がむしろ遠くなった感がある。

 若潮盃ワンツーのステルステクニック、イシノファミリーは、大井中距離、それも直線の長い外コースでは現状詰めが甘くなる。牝馬ながら終いしぶとく差を詰めたネイルアートの方に、むしろ今日は見せ場があった。スパルタニアンはスタートひと息で先行できず、それでも3~4コーナーの行き脚など、次走への期待は残っている。北関東から兆戦したエイセンスター、クリミナルゼットは、8、13着。ただし両馬とも当地一線級ではなく、直前回避ドラゴンフライヤーも含め不運な結果か。2番手からあっけなくバテたアヅマディフィートは気性面のスランプ。東北?1カガリボーイも、まだ復調気配がみえてこない。

     ☆       ☆       ☆

 大井競馬場。7月後半の開催から「ふるさとコーナー」が新設された。正門を入ってすぐ右手の2階、前売り発売所の一角。統一Gなど広域発売の1レースだけではなく、提携競馬場のレースを丸一日分売ってしまおうという試み。その日(8月13日)は、宇都宮競馬の後半レースと、旭川競馬の全レースが対象。午後3時過ぎ、宇都宮、旭川、両競馬場のファンファーレが交互に鳴り響き、加えて大井本場のトゥィンクルも開始されるから、けっこう忙しい。ファンの入りはまずまず。少頭数だった大井前半のレースをやり過ごし、こちらでまず“運試し”をするファンも少なくないようだ。

 ちょっとややこしい話になるが、これはあくまで「広域全国発売」ではなく、宇都宮、旭川の窓口を大井に持ってきたようなものだから、筆者の日刊競馬など南関東の専門紙はテリトリー外。スポーツ紙にもおおむね出馬表が載っていない。で、検討資料をどうするか。大井競馬場が現地(北関東・北海道)から仕入れた予想紙を無料配布している。むろん数に限りがあるが、品切れの場合は、喫茶店によくあるようなホルダー付きの新聞を“閲覧”、もしくは“掲示板”で確認するシステムになっている。何とものんびりしたギャンブルだが、妙に熱くならないぶん、これはこれでいいかもしれない。

 パドック、返し馬、そしてオッズはビジョンで逐次放映される。旭川などは解説もついてきわめて親切。筆者は結局、旭川の1~4レースを購入し、馬複11倍が1つ的中、わずかなマイナスという成績だった。予備知識がほとんどなく、検討資料も少ないから、パドックの映像をながめながら「よく見えた馬を買う」というやつ。ファンそれぞれ感じ方は違うだろうが、筆者など、情報過多の時代、競馬の原点に返ったようで、むしろ新鮮な楽しさに浸ってしまった。いきあたりばったりの楽しさ、運を天にまかせる楽しさ。もともと競馬とは、ギャンブルとは、そんなものだったか…という思いがあった。

 何も予定のない休日など、ぶらりとお出かけになってはいかがだろうか。ギャンブルの原点を素朴に味わおうという方にはそれなりにオススメできる。今日8月19日から21日まで3日間は旭川競馬(川崎スパーキングナイター併売)、来週24~25日は岩見沢ばんえい競馬(大井本場開催)という発売日程になっている。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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