逃げ馬にも色々なタイプがいるが、酒井とハクサンムーンが刻むラップは、決してハイペースではない。常に絶妙なペースを作り出すため、コンマ何秒での駆け引きが行われているのだ。
「周りからもよく『そりゃあのペースで行ければ残るやろ』って言われます。でも、あのペースも考えて作ってるんで。
スタートがそんなに速くないから、基本的には途中からハナ行く形になります。その前にハナ行ってる馬がいて、僕は外から行って。そのままキレイにスーッて抜きながら前に入っちゃうと、相手のペースに合わせてるので、抜いた後も楽に並ばれちゃうんですよね。そうしたら、2番手の馬が来る分行かなきゃならなくなる。だから、ギリギリのところで前に入ったんです。そうすることで、向うは一回クッと手綱を引かなきゃいけない。そこから僕の馬に並びかけようと思ったら、もう一度馬を促さなきゃいけなくなる。そのリスクを取って並びに来るのか、一回引いたところでジッと我慢するのか。それで、コンマ2秒ぐらいはペースを遅く出来てるんです」
逃げている馬がペースを作っているように見えるが、実際は2番手の出方が大きく影響しているのだ。
「いかに番手に付けた馬の勢いを削げるか、それが逃げる時のポイントですね。ホントに邪魔しちゃったら制裁になっちゃうし、ちょっとしたね、やられた方からしたら『やらしい入り方するな』っていう感じでしょうけど。でも競馬になったら、特にこのクラスになったらそういう一技二技使って行かないと。ハナ行く馬は常に追われる立場で競馬しなきゃならないわけだから。いかに自分が楽になれるかというのを考えながらレースしないといけないと思います」
スプリンターズステークスは、中山1200mで行われる。トリッキーな中山の中でも、難しいと言われるコースの一つだ。
理想は1枠1番。ハナは譲れないですね。
「理想は1枠1番。頭数多いので大外はちょっとイヤですね。あとは何枠っていうよりも、自分の枠の近くに前に行くようなテン速い馬がいて欲しくないです。出来ることなら、横2頭ずつくらいは後方から行く馬の方が、スタートしてからのポジション取りが楽になって来るかなと。前に行く馬は内目にいて欲しいです。
今回行きたい馬も何頭かいますけど、番手に控えるつもりはないです。ハナは譲れないですね。ペースが重要なんで、所々でやらしい乗り方しないといけないだろうし。
ただでも中山はホント難しいと思います。最初が下りなんで、どうしてもスタートしてからハイペースになりやすいんです。そこをいかにスピード付け過ぎずに、ジワ〜っと行けるか。でもあんまりジンワリ行って引き付けちゃうと、みんなペースが遅いと思って早めに来るから。その加減が難しいところです」
これまでの成績で、今回のGIは上位人気になることが確実。大舞台で注目馬に騎乗するプレッシャーはないのだろうか。
「去年ニホンピロアワーズでGI勝たせてもらいましたけど