今月は、昨年3月の「あいうえおトーク!」以来となる、川須騎手の単独インタビューです。函館にフル参戦したこの夏には、初めての骨折に見舞われるアクシデントが。第1回は、そこで改めて感じた焦りや、夏競馬で学んだことなど、自身の今を赤裸々に語ります。
(取材・文/不破由妃子)
■小回りでスローの道悪…函館の競馬は難しかった──今回は、久々の単独インタビューですが、ひと夏を越して、精悍な顔立ちになられたような。少し痩せましたか?
川須 痩せてないんですけど、最近、そう言っていただけることが多いんですよね。焼けたからじゃないですか(笑)。でも、うれしいです。ありがとうございます!
──この夏は初めて北海道にフル参戦されて。約3カ月の間、みっちり函館で騎乗されたわけですが、川須騎手にとってどんなシーズンでしたか?
川須 この夏は、初めての骨折がありました。それがもう…。
──調教中のアクシデントでしたよね。胸椎圧迫骨折でしたっけ?
最初はまさか折れているとは思わなかったんですけど…
川須 そうです。調教中に、お尻からドーンと落ちて、骨が潰れてしまったんですよね。最初はまさか折れているとは思わなかったんですけど、なかなか痛みが取れなかったので、これは変だなと。
──でも、あっという間に復帰されましたよね? たしか、騎乗停止と合わせて、競馬は2週しかお休みしてないような。
川須 そうですね。平日も合わせると、5日間だけ休みました。体は動くし、要は痛いだけなので、我慢すれば乗れたと思うんですよ。でも、“これはちょっと迷惑をかけてしまうな”って思うほどの痛みだったので、仕方なく休んだというか。
──きちんと治さないと、長引くこともありますからね。
川須 はい。先輩や周りの方にも言われました。ただ、滞在競馬は、普段調教をつけている馬にそのまま競馬でも乗るケースが多いから、休んでいる間にほかのジョッキーが乗って、そのまま戻ってこなくなったり…。だから、早く乗りたい!っていう気持ちでいっぱいでしたね。
──そう考えると、2週間のブランクというのは大きいですよね。
川須 ホントにそうです。ほかのジョッキーが乗って権利を取ったりしたら、もう戻ってきませんからね。ましてや今年は、馬房が少ない特殊な感じだったので、余計2週間の休みが大きな出来事に感じましたね。やっぱりジョッキーは体が資本だということを実感したし、ジョッキーにとって一番怖いのはケガだなって。
──そうですよね。痛みはすっかり良くなったんですか?
川須 まだ治療には通ってますけど、もう大丈夫です。痛みもなくなりましたし。
──ところで、この夏、函館にフル参戦されたのは、なにか理由があったのですか?
川須 とくにコレといった理由はなかったんですけど、今年は上位の方たちが各地に散らばったじゃないですか(北海道組では、横山典騎手、池添騎手が新潟に参戦)。とはいえ今年は馬房も少ないし、どうかなぁとは思うところもあったんですが、半面、期待もあったので。
──函館には昨年も参戦されましたが、やはり、小倉とは競馬が全然違う?
川須 小倉はペースが速くて忙しいですからね。洋芝と野芝では、時計も全然違いますし。小倉は、少々速いペースで行っても前が止まりづらいのと、マクってくる馬がいたりなどレース中の動きも激しいんですが、函館は基本的にはスローだから、隊列が決まりやすい。単調に見えるという方もいるでしょうが、それはそれですごく難しいんですよ。
──北海道の競馬はタイトだっていいますものね。
“怖いなぁ”と思っていた時期もあったんですが
岩田さんてすごく優しいんですよね…
川須 今年は長かったこともあって、すごく勉強になりました。馬場がすごく悪くて、軽い走りをするような馬には厳しい年だったと思うんですが、岩田さんとかの競馬を見ていると、馬場状態が悪い小回りのスローでも、きっちり捌いてくる。やっぱり岩田さんは巧いなぁと思って、ずっと見ていました。
──いろいろアドバイスなども受けたり?
川須 はい。プライベートでも食事に連れて行ってくださったりして、丸山(元気)先輩の次に、一緒にいる時間が長かったかもしれません。そういうなかで、競馬についても自分からいろいろお聞きしたり、岩田さんのほうから教えていただいたり。ずっと間近でレースを見ていたから、とにかく岩田さんの騎乗がすごく気になったんですよ。
──岩田さんて、本当に面倒見のいい方ですよね。
川須 はい。正直、“怖いなぁ”と思っていた時期もあったんですが(笑)、お話しさせていただくと、すごく優しいんですよね。僕のような後輩にも、まったく裏表なく接してくださるし。栗東だと、みなさんご家族がいらっしゃるから、簡単に「ご飯に行きましょう!」なんて言えませんからね。ケガもあったし、成績も全然満足できなかったけど、本当に勉強になった夏でした。
【次回のキシュトーーク! は?】
以前、「僕は考えて乗ってもいい結果が出るタイプではない」と話していた川須騎手。しかし、ここにきて、ジワジワと探求心が芽生えてきたそう。次回は、そんな自身の変化についてと、浜中騎手をゲストに迎えた「ご指名対談」後の心境の変化を語ります。