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いよいよ凱旋門賞が近づいてきました

  • 2013年10月05日(土) 12時00分
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 さぁ、その時が近づいてきました。いよいよ凱旋門賞…。
 今週の合田直弘さんのコラム(『世界の競馬』)、もうお読みになりましたか?あの冒頭の3段落、そっくりそのまま引用したい気分です。私も、合田さんが書いたような人生を送ってきましたからね。はやる気持ちと一抹の不安をともに押さえ込み、心を落ち着かせてレースを見るには、日本馬が勝つよう、ひたすら祈るしかないのでしょうか…。

 一番にならなきゃダメ。負けたら2着も最下位も一緒。それが勝負の世界です。とはいえ、これまでの凱旋門賞で日本馬が残してきた2着3回という成績は、意味のあるものだったと思います。そして今年の前哨戦。キズナもオルフェーヴルも素晴らしい走りを見せてくれました。これまでに日本馬が残してきた実績と、2頭のあのレース内容。それらが相まっているからこそ、イギリスのブックメーカーの前売りオッズで、オルフェーヴルが1番人気、キズナが4番人気に支持されているわけです。

 そして、このレースに懸ける思い。国対国の勝負として考えると、おそらく日本は、他のどの国より強い思いで臨んでいるはず。凱旋門賞というレースにこれほど入れ込んでいる国は、日本をおいて他にないと言ってもいいくらいです。

 ではここで質問。「誰から見ても勝てるだけの力が十分に備わっていて、準備も万端整えてきた、さらに勝つことへの思いが他の誰より断然強い、という者は必ず勝てる」、これはYESかNOか?

 答えは、YESでもあり、NOでもあるような気がします。勝負は、そうでなければ勝てないでしょうし、そうであっても勝てないことがあるし…。

「勝つと思うな、思えば負けよ」。美空ひばりさんの名曲「柔」の唄い出しです。「勝てると思ったときに心の隙が生まれる。だから勝負が決まるまで気持ちを緩めてはいけない」というのが一般的な解釈。今回のレースで言えば、「オルフェーヴルもキズナも強い。でも、ノヴェリストやトレヴ、ルーラーオブザワールドなど、他にも勝っておかしくない馬が揃っている。勝負は下駄を履くまでわからない。油断禁物」ということでしょう。

 そしてもう1つ、「柔」の歌の文句には、「勝とうと思いすぎて力んでしまっては勝てない」という意味も込められていると思うのです。そのへんの心のバランスをいかに整えるか?これは、オルフェーヴルとキズナに関わる人たち(レースを見守るしかないわれわれも含む)すべてに問われていることかもしれません。
 不世出の名横綱・双葉山は、連勝を69で止められたとき、「未だ木鶏たりえず」という言葉を残しました。木鶏の境地に達するのは至難の業。やっぱり私は、ドキドキしながら祈るしかなさそうです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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