松田博師の「3本の矢」や、今週末の「伝説の新馬戦」(吉田竜作)
5日の京都芝1600メートルの牝馬限定の新馬戦でレーヴデトワールがデビューVを飾った。伏兵相手にハナ差の勝利とあってその能力に疑問を持つ人は多いことだろう。ところが、松田博調教師に電話をかけると思いのほか上機嫌。「掛かるところもなかったし、ゲートも思った以上に出た。よかったじゃないか、上等よ」とカラッとした口調で言い切った。POGをたしなむ人ならばご存知だろうが、この血統について回る「血の呪い」は生半可なものではない。それだけに、トレーナーもこの馬については逐一成長過程を見守ってきた。まずは第一関門を突破というところだろう。
ただ、トレーナーが戦前に唯一不安視していたのが、追い切りでも見せていた「抜け出して頭を上げてブレーキをかけていた」ところ。基本的に騎手には注文を出す人ではないのだが、「これはレースの前に川田によく言っておかないと」と気にかけていたのだ。ただ、川田も調教にまたがっていてクセを把握していたのだろう。追い出しを極端に遅らせていた。その結果のハナ差…となれば、着差だけで能力を測るのはナンセンスと言うほかない。調教量やその過程を見ても、まだまだ上積みがあるのは間違いないところ。次走でどこまで成長した姿を見せてくれるのか。今から楽しみでならない。気になる今後の目標だが、これまでの話を聞く限り、この馬もハープスター同様に阪神JFとなりそう。両者の鞍上を務める川田の選択にも注目が集まりそうだ。
そして、「二本の矢」が出揃ったところで、気になるのが最後の1本・サングレアルの動向だろう。「10月の半ば過ぎには入れる。もうサイズ的なものは気にしなくていいさ。パッと見てもレーヴデトワールと変わらないくらいあるから」と師。こちらは「慌てずゆっくりやっていくさ。もともと年内に1走できれば、くらいに思っていたんだしな」というから、阪神JFというよりは、来春のクラシックを直接狙うようなローテが組まれそうだ。
ロードカナロアの勢いに引っ張られて、2歳馬も順調に勝ちだした安田厩舎。これからデビューを迎える組もなかなかの粒揃いのようだ。オメガヴェンデッタは1発でゲート試験を合格。「パワーがありますね。ゲートの出もいいし、これは走ると思います」と安田調教師。1度放牧を挟んだゲットアテープもここにきて良化の気配を見せている。「帰厩当初は体を持て余していましたが、だいぶ動けるようになってきました。坂路でも持ったまま上がれるようになってきたし、上向いているのは間違いない」というから、デビューもいよいよ、というところだろう。
この2歳世代はすでに2頭が勝ち上がっている昆厩舎だが、ここにきてこれらに続く駒が揃ってきた。注目はウオッカの半弟ラテラルアークだろうが、こちらは「まだ子供っぽい。今のところ阪神あたりのデビューを考えているが、そういう面が抜けてくれないとね。ただ、能力はあるので先々は走ってくると思う」と昆調教師は慎重な言い回しをする。他のディープスカイ産駒も気性面の成長が遅い感じがあり、トレーナーの言う通り「使いつつ」となるのかもしれない。これに対して、早くから動けそうなのがハタノデバット。「馬がしっかりしているし、稽古の動きにも余裕がある。能力は高いよ」とのこと。今週の追い切り次第では12日の京都芝1600メートルの新馬戦で姿を見せてくれそうだ。
最後に今週の注目の1鞍。りんどう賞も捨てがたいが、是非見てほしいのは13日の京都芝2000メートルの新馬戦。「ビッグレッドでも1番と言われていた。少しパワータイプかなという気はするが、これは走るわ」と宮調教師の推すコスモグラフィティと、「坂路でもいい動きだったが、コースに入れた時の動きが更によかったからね。走るのは間違いない」と藤岡健調教師がゾッコンのサウンズオブアースがここで激突。他にも素質馬が出走を予定しており、「伝説」の予感のただようレースとなりそうだ。