鎌倉記念展望&レディスプレリュード回顧&東京盃回顧
◆鎌倉記念展望
(10月9日 川崎 サラ2歳 定量 地方競馬交流 南関東SIII 1500m)
「鎌倉記念」は平成13年新設、今年第12回目を迎える2歳SIII。以前まちまちだった施行順も、15年から鎌倉記念(川崎)→平和賞(船橋)→ハイセイコー記念(大井)と確定し、同時に重賞としての格、ポジション、注目度…着実に上がってきた印象がある。ただこのレースの難しさは、第6回・19年から“地方競馬交流”に条件変更、出走メンバーがにぎやかになった反面、有力馬の比較がつきにくいこと。現実に交流後はおおむね波乱の決着で、北海道営実績上位、22年サントメジャー、23年ウィードパワーなど、よもやの大敗、代わりに21年ナンテカ、23年ニシノファイターなど、伏兵が優勝をさらっている。対する南関東側も、まだ勢力図が固まっておらず、文字通り玉石混交。さて今年はどうなるか。もっとも、昨年優勝インサイドザパークは、今春東京ダービー馬に輝いた(鎌倉記念・史上初)。流れ、風向きが変わってくる可能性ももちろんある。なお後述データは、18年休止(JBC開催)のため、過去9年間の数字をまとめた。
(1)…波乱含み。1人気[4-1-1-3]、勝つか大敗かのパターンが多く、一昨年ウィードパワー9着、昨年インサイドザパーク優勝。2人気[1-1-1-6]、3人気[1-2-1-5]も信頼度が低い。
(2)…各場脈あり。川崎=4勝、2着3と一歩リード。しかし船橋=2勝、2着4、北海道=2勝、2着2と肉薄し、浦和も22年キスミープリンスが勝っている。馬自身の川崎コース適性がポイント。
(3)…素質重視。優勝馬の平均キャリア=3・6戦、同2着=4・0戦。経験より素質重視がセオリーか。TR「若武者賞」好走馬(3着以内)からパレガルニエ、ヴァイタルシーズなど優勝4頭。
(4)…差し馬。逃げ=4、先行=3、差し=9、追込=2。2歳戦ながら“行ったまま”の決着は案外少ない。15年トキノコジローなど四角10番手から豪快な逆転劇。騎手では、左海J=3勝、今野J=2勝。
※データ推奨馬
◎ファーストキス…道営、5馬身差の新馬勝ち。前走から船橋・坂本昇厩舎に転入し、初戦「若武者賞」を好時計(千五=1分35秒1)2着と健闘した。道中前々を動き、終いもうひと脚使うレースぶり。父チマチカネキンノホシはシアトルスルー産駒でJRA重賞2勝。種牡馬として、18年船橋「平和賞」優勝=キンノライチョウ(2着フリオーソ)を送っていることが興味深い。
☆ ☆
◎ウィーゴー 55山崎誠
○ファーストキス 54張田京
▲ニシノデンジャラス 55今野
△フラッショモブ 54町田
△ウィンカイザー 55酒井
△バーンザワールド 55繁田
△エスティドゥーラ 55見沢
ソードオブホロウ 55左海
エスティロックオン 55的場文
パドドゥ 54佐藤友
キョウエイアドニス 55森
ウィーゴーの素質を買う。デビュー2連勝。新馬(九百)→特別(千六)を難なくこなしただけに価値があり、それも道中スムーズな先行から直線競り合いになってもうひと伸び。スピードとセンス、さらに勝負強さを強烈に印象付けた。東京ダービー馬プレティオラスの半弟。父がフィガロ→サウスヴィグラスと変わりマイラー色が強そうだが、柔らかみのある馬体、しなやかな走法など、単なる早熟な快速型とは明らかにひと味違う。中間ひと息入れ充電を図ったステップ。今回やや外めの10番枠(13頭立て)も、新境地(好位差し)を開くには、ある意味絶好の舞台といえるだろう。鞍上・山崎誠騎手は、今季川崎LJほぼ独走の54勝、南関東4場総合でも108勝(第6位)といよいよ腕を上げている。人馬とも今後へ向けて夢が大きい。
前述通り、南関東、道営、東海…“横の比較”が難しい組み合わせ。中でファーストキスは、道営ハイレベルの新馬圧勝、前走転入初戦「若武者賞」快時計2着、反応鋭いレースぶりを含め最も計算できると考えた。ニシノデンジャラスは試金石。新馬勝ち(千二=1分14秒6)の時計などファーストキスを大きく凌ぐが、以後3戦は道中折り合いに苦しみ期待を大きく裏切っている。地元エース・今野Jを配し、課題(左回りも初体験)をどうクリアするか。フラッシュモブは、道営→東海通算3勝のレース巧者。前2走も園田、JRA阪神でいい経験を積んでおり、今回人気薄(記者推定)なら馬券的な妙味がある。同様に「若武者賞」1人気で大敗ウィンカイザーもここは盲点。デビュー2連勝の末脚は強烈で、同馬の場合、ひとまず良馬場が条件になる。以下バーンザワールド、エスティドゥーラは、昇り目、混戦向きをイメージしてとりあげた。
◆レディスプレリュード回顧
(10月3日 大井 サラ3歳上牝馬 別定 JpnII 1800m重)
◎(1)メーデイア 1分53秒0
△(2)アクアビューティ 1
▲(3)レッドクラウディア 3/4
△(4)クラーベセクレタ 1/2
△(5)アムールポエジー 3/4
……………………
○(6)アスカリーブル
△(8)セイカフォルトゥナ
(13)メビュースラブ
単120円 馬複1070円 馬単1210円 3連複830円 3連単2930円
メーデイアが文字通り力の競馬で人気に応えた。好スタートから素早く2番手。3~4コーナー、逃げたメビュースラブの失速と同時に先頭、そのまま危なげなく押し切った。2着アクアビューティと1馬身差、以下5着まで数字上は0・5秒差だが、迫られた印象はまったくなく、むしろ馬自身が勝利を確信してセーブしたようなイメージさえ浮かんでくる。実際レース後、鞍上・浜中騎手のコメントも、自信と余裕にあふれていた。「彼女らしいレースができた」「もう何も変わらなくていい」「JBCは当然のように勝ちたい」。そのJBCは11月4日、金沢1500m。記者メーデイア評価(適性)は“中~長距離型”で動かないが、絶対能力、上昇度、鞍上との呼吸のよさ…。少々忙しい条件も無事クリアできそうなムードがある。
メーデイアは父キングヘイロー、社台F系の期待馬で、現在5歳秋、まさしく生涯最高のときを迎えた。今シーズン統一牝馬Gに参入して4戦4勝。勝負どころの捲りに圧倒的な凄みがある。「気性面で成長し、どっしり落ち着きが出てきた。大井コース、ナイターとも克服済みで安心できる。素晴らしい馬。次(金沢)はプレッシャーをどう克服するか」(笹田和秀調教師)。この日のパドック。周回直後はややチャカつき気味ともみえたが、返し馬、クールダウンで解消した。「実戦向きの馬。パドックから本馬場、そこでグッといい雰囲気を手綱を通じて伝えてくれる」(浜中J)。牝馬同士に絞るなら、おそらくしばらく敵がない。あとは“牝馬の域を超える牝馬”、そのレベルに迫れるかどうかが大きな注目点だろう。
2着アクアビューティ。道中ロスなく立ち回り、終いしぶとく伸びたレースぶりは「ТCK女王盃」と同様で、しかしメーデイアとは爆発力で大きな差を感じる。レッドクラウディアは内枠(1番)が災いした。メーデイアをマークした3番手。大事に乗った好判断は確かだが、結果的に直線前が詰まる不利があった。4着クラーベセクレタはひとまず闘志復活と納得できる。4コーナー手前、御神本Jのステッキに応え先団接近、一瞬あわやの伸びをみせた。本質早熟型にせよ、牡馬相手の南関クラシック2冠。当時牝馬G「クイーン賞」も完勝だけにまだまだ終わってほしくない。5着アムールポエジーも、自然流の先行でしぶとい二の脚。3歳、初コースを思えば悪くなかった。アスカリーブルは中団追走でレース終了。前2走、園田→水沢、1人気で2、2着。あるいはその疲労が出ているか。
◆東京盃回顧
(10月2日 大井 サラ3歳以上 別定 JpnII 1200m不良)
○(1)タイセイレジェンド 1分11秒0
▲(2)テスタマッタ 31/2
△(3)アドマイヤサガス 1/2
△(4)ティアップワイルド 鼻
△(5)アイディンパワー 頭
………………
△(6)セレスハント
(7)サイオン
◎(8)ハードデイズナイト
単220円 馬複500円 馬単900円 3連複540円 3連単2510円
タイセイレジェンドが圧勝した。大外枠ながら絶好のスタート。道中持ったまま3番手を進み、直線ほんのひと気合で見事に弾けた。短距離では決定的といえる31/2馬身差。実際過去10年、これ以上のワンサイドは平成15年ハタノアドニス(4馬身差)しか例がない。「前走の59キロ(オーバルスプリント)より1キロ軽いだけなのに行きっぷりが全然違う。力を信じて乗って正解でした」(内田博騎手)。千二=1分11秒0も、最後余裕の脚いろを思えば胸が張れる(昨年ラブミーチャン=11秒2)。あらゆる角度から完璧な勝利としか言葉がない。
タイセイレジェンドは父キングカメハメハ、6歳牡馬。通算32戦9勝、重賞(交流G)は、クラスターC、JBCスプリントに続く3勝目となった。同馬の特長(好走要因)は3つある。地方ダートに圧倒的に強いこと、夏~秋に体調がピークとなること、内田博Jと抜群に手が合うこと。「自分(父和人師も元大井トレーナー)もジョッキーも、大井育ちだからなおさら嬉しい。次は金沢JBC(11月4日)。いいレースをみせたいですね」(矢作芳人調教師)。記者はレース前、検討記事で「大井千二と金沢千四はまったく別物…」などと書いた。“別物”の見解は変わらないが、タイセイレジェンドの場合、川崎、大井、浦和、盛岡…、難なくこなしてきた事実がある。まして定量57キロ。GI連覇の可能性はかなり高い。
テスタマッタ2着。懸念された通り前半追走に苦労したが、ラスト1F、インを切り裂くように伸びた脚はさすがGI2勝の凄みがあった。距離万能を改めて証明。何より馬の気分と展開が優先する。アドマイヤサガス3着は地方G初挑戦、自身ベスト千四を思えば合格点以上がつく。フジキセキ産駒、柔らかみのある好馬体。今後へ向け視界が大きく広がった。期待したハードデイズナイトは1.3秒差6着。勝ち馬の内から強気に動く内容で、結果直線中ほど脚があがった。前走アフター5スター賞=11秒5だけ走れないところが、3歳牝馬、心身とも完成途上ということか。逆に入着ラインを確保したティアップワイルド、アイディンパワー、さらにセレスハントなど、常に“自分の仕事”は、展開不問でやり抜いている。ただこの3頭、次世代スプリンターが成長すると、今後のポジションは正直危うい。