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おかえりごっちゃん!みんな待ってた復活の日

  • 2013年10月08日(火) 18時00分
2度の落馬により、1年以上の戦列離脱を余儀なくされた後藤浩輝騎手。長い長いリハビリ期間を乗り越えて、先週待望の復帰を果たしました!

まずは、復帰第一日目を終えて。

復帰初戦、パドックにて

復帰初戦、パドックにて

赤見:お疲れ様でした! 一日終えて、今どんなお気持ちですか?

後藤:やっぱり、ホッとしたなというのが一番かな。なんかこう胸にあった重たいものが、スッと抜けたような感じ。もっと一日すごく緊張し続けるのかなと思ったら、2レース目3レース目と、緊張が抜けて行きました。

赤見:最初のレースの時、パドックでは『おかえり』という声があちこちから聞こえましたね。

パドックには横断幕がたくさん

パドックには横断幕がたくさん

後藤:ただいまー! ってデッカイ声で言いたかったんだけど(笑)。そこは叫びたい気持ちがありましたね。自分がしゃべれない分、声を掛けてくれる方の声を全部聞こうって思いました。横断幕も18本出てたみたいで。『おかえり』って書いてある、新しいのもあって。こみ上げるものがありましたね。こういうのは一生のうちに一回だけのことと思いたいし、本当に幸せな気持ちになりました。辛いことがあったからこそ、こういう素晴らしい出迎え方してもらえて、みんなが待っててくれたので。ケガして悪いことばっかりだったけど、唯一良かったなって思える瞬間でした。

赤見:レースはいかがでしたか?

後藤:『最初は冷静になれないかもしれません』って謝っていたんですけど。ただレースに行ったらちゃんと慌てずに乗れました。楽しかったですね。復帰したレースで2着だったんですけど、そこで勝てないのが、まぁ持ってない証拠(笑)。あれで勝ってたらねぇ〜持ってるってなるんだけど。でもゴール間際まで夢を見させてもらったし、馬に感謝です。もちろん、乗せてくれた関係者の方々にも。やっぱり競馬は楽しいなって思えました。

「やっぱり競馬は楽しいな」

「やっぱり競馬は楽しいな」

赤見:馬上での感覚はどうでしたか?

後藤:自分でイメージしているものと、実際の乗り方はまだまだ。ビデオ見た時のギャップはありますね。もっともっと上手くなっていかないといけないなと思います。ただ、今日はそれなりに自分の意思を馬に伝えられたかなとは思うので、馬たちが頑張ってくれたなと感じますね。馬を走らせる技術というのは、そこまで落ちてはいなかったかなと。今日勝てなかったレースもそうだけど、やっぱり甘くないなというのは感じました。みんな必死だなって。これが競馬なんだって。

赤見:休む前と何か変わったことはありますか?

後藤:レース終わった後に娘が出迎えてくれたこと。今6か月なんですけど。初めてのことだから、なんか慣れないですね(照)。子供も初めて競馬場に来たし。初めて競馬場に来た時に、自分が乗ってる姿を見せられてよかったなって思います。でもなんかビックリした顔してたね(笑)。普段はこんなパパじゃないから。もっとほんわかパパだから。去年の秋の復帰の時に、ちょうど安定期に入ったところだったんです。奥さんにとっては一番大変な時期に僕がいなかったんでね、その分、復帰したからには頑張らなきゃという気持ちは強いです。家族の支えってよく聞かれるんだけどね、俺が家族を支えてたんだなって実感したんです。こんな時に自分が折れちゃったら家族がダメになるって思ったから、辛くてもなんとか支えようって。そういう風に思って生活してました。もちろん、家族に助けられた部分はすごく大きいけど、自分も家族を支えなきゃっていう気持ちでやって来ましたね。支え合ってという感じです

家族と支え合って

家族と支え合って

赤見:一度復帰して、すぐに2回目のケガというのはショックだったんじゃないですか?

後藤:ショックという意味では、一回目の時の方がショックだったかな。痛みを我慢してでもなんとか乗りたいって思いました。でも2回目の時は、もう諦めというか開き直りというか。もうしょうがないかって。競馬に乗りたいっていう気持ちにもなれなかったし、もうこれは無理だって自分でブレーキを掛ける気持ちもあって。そこからはあんまり競馬のことは深く考えないようになりました

赤見:騎手を辞めようと思ったことはありますか?

後藤:辞めようと思ったことはないな。例え、腕一本足一本動かなくなったとしても、まだ負けないって思ってる。多少ハンデを背負ったとしても、他のジョッキーには負けられないっていうプライドがあるから。体が全部動かなくなった時に、辞めようって思うのかもしれないけど。動く以上は、馬に乗れるっていう自信はあります

赤見:一年以上の戦線離脱でしたけど、振り返ってみると長かったですか?

後藤:長くはないかな。この期間の重さっていうのはすごく感じるけど。短くもないし、長くもないし。今この場に立ってて、先週もいた気がするしね。復帰が決まった時から、今日のことは強くイメージしてて。そこからはすごく加速していったんで、時間が過ぎるのが早かったかな。特に馬に乗りだしてからは、早くしないといけないから。自分の体を馬に追いつかせていかないといけないでしょ。地上でやってるリハビリは自分のペースで、自分の動きに合わせてやれるけど、馬の上に乗ったら馬に合わせていかなきゃいけないから。多少無理してでも。でもその無理がいいリハビリになりました

赤見:師匠の伊藤正徳調教師も、かなり心配していたんじゃないですか?

後藤:先生からは、『気を付けろよ、危ない馬には乗るなよ』って言われてますね。親心っていうか、心配な気持ちはかなり持ってくれてるみたいで。今日も1レースの時からずっと検量室にいて、早くから心配してたみたい。やっぱり師匠ですね。僕も師匠のこと心配してるし(笑)。それぞれ補いながら、支え合ってるっていう感じですね

赤見:では、待っててくれたファンへメッセージをお願いします。

後藤:ただいま! だね。早くウィナーズサークルで、『ただいま』と『ありがとう』が言いたい。それが一番ファンの方々が求めてることだし、それを期待してるんだから。ただ乗ってる姿が見たいんじゃなくて、勝って一緒に喜びを分かち合うことが、一番の恩返しだと。だって、パドックで聞く歓声のために戻って来たんじゃないから。勝って、『おめでとう』って言ってもらうために戻って来たから。だけど、これから頑張るためのエネルギーっていうのは、すごく今日もらえましたね。本当に頑張らないと!
復帰2日目、1番人気馬に騎乗して見事初勝利!
ウィナーズサークルへ向かう途中の地下馬道にて。

赤見:おめでとうございます!

後藤:ありがとうございます。もうホントにね、この瞬間のために頑張って来たから。ゴールした時の、ファンの方々の拍手も全部聞こえてました。やっぱり、勝ったからこそ、あの拍手がもらえるわけだから。復帰しただけじゃ、あの大きな拍手はもらえないわけだから。ホントに嬉しいです!

赤見:一つ勝つというのは、相当大きいんじゃないですか?

後藤:大きいねぇ。すごく大きい。ホッとしたかな。みんなに、『ただいま』と『ありがとう』を言って来ます。ああ、この瞬間が一番ドキドキする…
ファンへの『ただいま』と『ありがとう』

ファンへの『ただいま』と『ありがとう』


そう言って、ウィナーズサークルに登場した後藤騎手。大声援で迎えてくれたファンの方々に、ご自分で用意した小さな拡声器を使って、溢れる感謝の気持ちを伝えていました! 完全復活を果たした今、これからの活躍を楽しみにしています。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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