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待ったなし・快速アドニス

  • 2003年08月25日(月) 16時54分
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 8月27日、大井「アフター5スター賞」。今年から距離1190m(暫定)に変更され、10月9日「東京盃」→11月3日「JBCスプリント」と続く短距離ロードの一環に位置づけられた。とはいえ、優先出走権など実質的なリンクは設定されず、従来通り南関東だけのローカル重賞。言わずもがな、新鮮味に乏しいお決まりの顔ぶれ。南関東オープン馬、層の薄さはいまさらテコ入れのしようもないが、それならこのクラスのG3重賞、そろそろ抜本的に出走資格を見直す必要があるだろう。少なくとも3~5頭程度のJRA枠、他地区枠を設けること。統一Gで毎回除外されるJRA馬補欠など、もったいないとしか言葉がない。1着賞金2000万円。全国レベルで開放されれば各陣営とも十分魅力があるはずだ。

アフター5スター賞出走予定馬(サラ3歳上 別定 南関東G3 1190m)

◎ハタノアドニス   (57・内田博)
○ラヴァリーフリッグ (55・石崎隆)
▲オーミヤボレロ   (55・張田)
△フジノテンビー   (57・佐藤隆)
△スピーディドゥ   (57・納谷)
△ハセノガルチ    (57・桑島)
△カイジンクン    (57・森下)

 ともあれ、馬券的にはハタノアドニスに逆らう手はないだろう。春の短距離ロード3戦2勝。最終戦マイルGPでベルモントアクターに惜しくも首だけ差されたが、昨年のフレアリングマズル同様、この路線をまず完全制圧という走りだった。素晴らしいダッシュと加速力。追走した相手が逆に“つけバテ”してしまう。前走あえて岩手遠征、水沢「栗駒賞」(水沢1200m・東日本交流)を勝ってきたあたりにも、高橋三郎厩舎らしいフロンティア精神がうかがえる。この相手で別定57キロはきわめて有利だ。

 まともならラヴァリーフリッグと一騎打ちだが、こちらは前走スパーキングレディーCで3歳レマーズカールに完敗。デビューからおよそ丸2年力走を続け、さすがに翳りが出てきた印象もある。前走サンタアニタT4着でオープンにメドをつけたオーミヤボレロ、スピード健在フジノテンビー、カイジンクン。馬単、3連単なら、ひとひねりして中穴が狙えそうだ。

     ☆       ☆       ☆

 8月17日、盛岡競馬「みちのく大賞典」を、マキバスナイパー(船橋・岡林光浩厩舎)が勝った。父ペキンリュウエン、牡8歳。昨暮れ「浦和記念」以来9か月ぶり。陣営、ファン、誰しも半信半疑の中、しかし結果は4コーナー持ったまま先頭、シンコウシーザーを7馬身ちぎっている。鞍上・左海誠二騎手は、勝った嬉しさより驚きの方がむしろ大きかったらしい。「状態はまだまだと思っていた。逆にいうと次はもっとよくなるってことですね…」。少なくとも今回は狙いすましたレースではなかった。復帰戦には長めの中距離、左回りが走りやすい、そういう配慮を含む盛岡遠征。底力といってしまえば話は早いが、最近のオープン馬、正直これだけ“意外性”に富んだ馬も珍しい。

 マキバスナイパーの不思議な強さ。すでに重賞11勝、帝王賞を含め統一G3勝だからむろん堂々たる一流馬だが、とにかくその道のりは一進一退、たとえばそこに物語、ドラマを紡ぎ出そうとすれば、凡庸な予想者である筆者などには手に余る。勝っては負け、負けては勝ちを繰り返し、“長めの中距離ベスト”ということ以外、キャラクターが確定しない。じれったい馬、不可解な馬だと思う。しかし、そのじれったさ、不可解さが、逆に息の長い活躍ができた、その一因ともいえるだろうか。状態がよくないとき、条件が悪いときは、テンから「走れませんよ…」のサインを出す。本格化以降、ふがいない殿り負けが2度あった。1つは中山「オールカマー」、1つは一昨年暮れレイズスズランが勝った「浦和記念」。前者はフィーリングが合わない芝コース、後者は力走続きの体調不良。ただそこで妙にリキんだレースをしたなら、あるいは今のスナイパーはなかったかもしれない。敗戦を恥とせず、そのたびあっけらかんと“リセット”してしまうしたたかさ。思えば地方の名馬とは元来そんなタイプが多かった。スズユウ、テツノカチドキなどは、晩年不振で衰えを指摘されながら、最後の最後、東京大賞典を制し競走生活を締めている。

 順調なら次走は9月18日、地元船橋「日本テレビ盃」。自身連覇を狙うが、JRAアグネスデジタルが出走し、地方側からはヒミツヘイキ、ベルモントアクター、エスプリシーズ。低くないハードルに、百戦錬磨のキャリアとしぶとさでどう立ち向かうか。これは2003年初秋、見逃せない一番と期待する。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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