スマートフォン版へ

ダービー馬ディープブリランテの全弟ゼウスバローズ

  • 2013年10月16日(水) 12時00分
●インテグラード(牡 栗東・矢作芳人 父シンボリクリスエス、母ブリオーサ)
 母ブリオーサは1勝馬ながら、タッチザピーク(06年紅梅S-OP)の全妹、タッチミーノット(13年中山金杯-GIII)の4分の3姉にあたる良血。「シンボリクリスエス×スペシャルウィーク」の組み合わせはエピファネイア(13年神戸新聞杯-GII、13年ラジオNIKKEI杯2歳S-GIII)、ユールシンギング(13年セントライト記念-GII)と同じで、母方にMr.Prospectorを持つシンボリクリスエス産駒はストロングリターン、サンカルロ、ランフォルセなどコンスタントに走っている。芝向きの中距離タイプとして大成しそうだ。

●エイシンジャドゥー(牡 栗東・松元茂樹 父Tiznow、母Memories of Silver)
 母Memories of Silverはアメリカの芝路線で活躍し、ビヴァリーD.S(米G1)、クイーンエリザベス二世チャレンジC招待S(米G1)を含めて7つの重賞を制した名牝。繁殖成績も優秀で、同じく芝路線で活躍したWinter Memories(父El Prado/11年ガーデンシティS-米G1、12年ダイアナS-米G1)、La Cloche(父Ghostzapper/12年アセニアS-米G3)を産んでいる。本馬はその半弟。父Tiznowは現役時代に米年度代表馬に輝いた名馬で、種牡馬としても成功。ドバイワールドC(首G1)を勝ったWell Armedをはじめ多くの一流馬を出している。日本ではほぼダート専用といえる成績だが、本馬は母が芝適性を伝えており、芝とダート、どちらでも走る可能性がある。質の高い血統なので先々まで楽しみな馬だ。

●コスモキングダム(牡 美浦・手塚貴久 父Empire Maker、母Lu Ravi)
 母Lu Raviは現役時代、G1こそ獲れなかったものの、コティリオンH(米G2)、モリーピッチャーH(米G2)など6つの重賞を制した。繁殖牝馬としても重賞で入着を繰り返したRavi's Song(父Unbridled's Song/11年カーディナルH-G3・2着)を産んでいる。本馬はその半弟。父エンパイアメーカーは現在日本で繋養されているが、アメリカ時代はSeattle Slew、Secretariat、Mr.Prospector といった主流血統と優れた相性を示していた。本馬の配合にはこれら3つの血脈がすべて含まれている。母方にA.P.Indyを持つエンパイアメーカー産駒には、G1を6勝した名牝Royal Delta(米3歳牝馬チャンピオン、米古牝馬チャンピオン)、アシュランドS(G1)を9馬身差で圧勝するなどG1を3勝したEmollient、アーカンソーダービー(米G1)を勝ったBodemeisterなどがいる。日本にマル外として入った産駒ではオールドパサデナ(準OP)と配合が似ており(エンパイアメーカー×A.P.Indy+Mr.Prospector)、おそらく同じようなダート向きのマイラーとなるだろう。

●サトノルパン(牡 栗東・村山明 父ディープインパクト、母エリモピクシー)
 母エリモピクシーはエリモシック(97年エリザベス女王杯-GI)の全妹にあたる良血で、現役時代、重賞こそ勝てなかったものの京都牝馬S(GIII)3着、エリザベス女王杯(GI)4着など重賞で入着を繰り返した。繁殖牝馬としては姉を上回る成功を収め、これまでにリディル(父アグネスタキオン/11年スワンS-GII、09年デイリー杯2歳S-GII)、クラレント(父ダンスインザダーク/11年デイリー杯2歳Sなど重賞4勝)、レッドアリオン(父アグネスタキオン/13年ニュージーランドT-GII・2着)を産んでいる。本馬はこれらの4分の3弟。父ディープインパクトの最もポピュラーな成功パターンであるLyphardクロスを持つが、母の父ダンシングブレーヴはディープインパクトの母の父Alzaoと相似な血なので、Alzao≒ダンシングブレーヴ3×2という構成だ。先週の秋華賞(GI)で2着となったスマートレイアー(父ディープインパクト)はこれとよく似た構成でAlzao≒ダンシングブレーヴ3×3。すでに結果を出しているパターンなので信頼性が高い。本馬はそれに加えてVaguely Nobleを持っている。これも父の代表的な成功パターンのひとつ。芝1600〜2000mで本領を発揮するだろう。

●ゼウスバローズ(牡 栗東・角居勝彦 父ディープインパクト、母ラヴアンドバブルズ)
 ダービー馬ディープブリランテの全弟。セレクトセール2012に出場予定だったが直前で欠場し、猪熊広次氏に購買された。全兄は一生懸命走りすぎるところがあり、そうした気性面の弱点を抱えながら日本ダービーを制覇したのだから能力の絶対値はかなり高いと見ていいだろう。弟の気性は分からないが、もし仮に兄と違って精神面に余裕があり、苦も無く折り合えるようなら相当な活躍が見込める。底力あふれる血で構成され、LyphardとBustedのクロスなど父の配合で実績を残している好パターンが詰め込まれている。とくに「Mr.Prospector、Lyphard、Northern Dancer+Special血脈から成る血」という3本柱は重要で、このトライアングルを持つ馬は、本馬の全きょうだいディープブリランテとハブルバブル(11年フラワーC-GIII・2着)、トーセンラー(13年京都記念-GII、11年きさらぎ賞-GIII)とスピルバーグ(12年毎日杯-GIII・3着、12年共同通信杯-GIII・3着)の兄弟、パッションダンス(13年新潟大賞典-GIII)、アトム(13年デイリー杯2歳S-GII・2着)と、過去に出走した6頭がすべて重賞級に育っている。本馬も同様の活躍が期待できる。

●ワイドショー(牝 栗東・大久保龍志 父ディープスカイ、母セルリアンブルー)
 母セルリアンブルーは現役時代に4戦して未勝利に終わったが、繁殖牝馬としては見どころがあり、JRAで走った産駒4頭のうち3頭が勝ち上がっている。父ディープスカイはアグネスタキオンの代表産駒の1頭で、現役時代に日本ダービー(GI)、NHKマイルC(GI)など4つの重賞を制した。今年の2歳世代が初年度産駒。その父アグネスタキオンはダンシングブレーヴと相性がよく、この組み合わせからリトルアマポーラ(08年エリザベス女王杯-GI)を筆頭にリディル、レッドアリオン、レッドクラウディア、エミーズスマイルなどの活躍馬が出ている。バンブーアトラスとの組み合わせでもホッコータキオン(08年デイリー杯2歳S-GII・2着)が出ている。母セルリアンブルーはダンシングブレーヴとバンブーアトラスを併せ持つので、アグネスタキオン系のディープスカイとは合うのではないかと思われる。本馬は「ディープスカイ(その父アグネスタキオン)×コマンダーインチーフ」なので、「アグネスタキオン×コマンダーインチーフ」のリトルアマポーラと配合構成が近い。芝・ダート兼用の中距離タイプだろう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング