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幕引きの美学 オルフェーヴルのために(3)

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  • 2013年12月17日(火) 00時32分
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かくして、またしてもフランスは自国の面目を保ったわけだが、この凱旋門賞でオルフェーヴルと言う不世出の名馬の使命も終わった、とぼくは思う。有馬記念はすでに勝ち獲っているレースでもあるし、出走はファンサービスの顔見世以外の何ものでもない。ここで勝とうが負けようが彼の価値は何一つ変わらない。くわえて現実的なことを言えば、陣営は勝利にこだわって、ぎりぎりに仕上げてまで、僅かでもリスクを背負うようなことをするだろうか。それより、レース自体を(正式の引退セレモニー前の)「公開引退周回」に変えてしまうかもしれない。憶測だが、フォワ賞をスローペースに落として「公開調教」にしたのと同じように、有馬記念を単に顔見世ラストランにする可能性はなくはないだろう。それでも、オルフェーヴルは楽勝してしまうかもしれない。ありそうなことだが、ぼくにはここでの勝敗にはまったく興味がない。だから、今回はオルフェーヴルに絡む馬券は一枚も買わない。これもまた、もう一つの、ぼく自身の幕引きの美学なのである。
思えば、過去には後味の悪いレースもあったし、国を代表する名馬に対して「調教再審査」を課すような人間の側の愚行(あの侮辱を思い出すと今でもぼくは憤りを覚える)もあったが、それをも乗り越えてきみは、世界の頂点を目指した。それも二度も。何があろうと国内ではきみはずっと王者だった。今だってそうだ。敵などもとより一頭もいなかったのだ。世界を目指したきみが、今さら国内の有馬記念もないだろう。きみは悠然と周回し、静かにターフを去ってゆけばよい。究極の勝者は孤独なものだ。拍手一つ、涙一滴いらない。勝者には何もやるな、と言うではないか。歓声も聞こえてこない遥か遠くから、ぼくはきみの姿を見送ることにしよう。

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