◆埼玉新聞栄冠賞展望
(10月23日 浦和 サラ3歳以上 別定 南関東SIII 1900m)
「埼玉新聞栄冠賞」は平成3年新設、今年第23回目。平成8年「浦和記念」が交流JpnIIに昇格し、以後そのトライアルとして重要な役割を担ってきた。A1=58キロ、A2=56キロ(牝馬2キロ減)…というシンプルな別定戦。いきおいメンバーの質もかなり高く、例年SIII(1着賞金・1000万円)という以上にハイレベルのレースが展開される。現状は1着馬に優先出走権(今年は11月20日)。ただ記者個人的には“3着権利”でも、十分説得力があるように思っている。
その理由。改めてファイルをめくると少し驚く。平成12年マキバスナイパー、16年モエレトレジャー、21年ブルーラッド、23年ボランタス、4頭まで栄冠賞→浦和記念を見事な連覇。実際これだけ本番と連動するトライアルは珍しく、例えば勝島王冠→東京大賞典(大井)、報知オールスターC→川崎記念(川崎)、報知グランプリC→ダイオライト記念(船橋)など、結果的に“有名無実”のTRとは、重みが大きく違っている。昨年優勝トーセンアレスも、続く浦和記念小差4着。力が入る、見逃せない“前哨戦”とは、まさしくそんな歴史があってこそだ。
(1)…波乱含み。1人気[5-3-1-1]と優秀だが、2人気[1-0-2-7]、3人気[0-2-0-8]。頭は固いがヒモが狂う…典型的なレースといえる。ただ今年は1人気自体が予測しづらい。
(2)…4場脈あり。船橋=4勝、2着5回とリードするが、川崎=3勝、2着5回とほぼ互角。浦和、大井も、それぞれ2勝、1勝と優勝馬を出している。昨年は浦和→船橋のワンツー。
(3)…6歳馬。6歳=3勝、2着3回と最も優勢。次いで7歳=2勝、2着1回、同じく5歳=2勝、2着1回。8歳馬は2着2回ながら勝てない傾向。過去10年、JRAからの転入馬が5頭優勝。
(4)…好位差し。逃げ=2、先行=8、差し=9、追込=1。純然たる逃げ切りは16年モエレトレジャー1頭だけ。反面器用さ、機動力も要求され、4コーナー“3番手以内”が勝利パターン。
※データ推奨馬
◎ガンマーバースト…船橋所属、6歳牡馬。今年2月、JRA(5勝)から転入し、以後4戦2勝、前々走SIII「スパーキングサマーカップ」も1馬身差3着と健闘した。流れなりに走れる自在型で、距離実績も1400~1800mと幅がある。
☆ ☆
◎ジョーメテオ 58坂井
○スターシップ 58石崎駿
▲ガンマーバースト 58森
△カキツバタロイヤル 58石崎隆
△アドマイヤシャトル 58的場文
△フォーティファイド 58御神本
△サイオン 58川島
マグニフィカ 58山崎誠
タマモスクワート 58見沢
ジョーメテオに絶好の舞台が巡った。今夏JRA→浦和転入。以後重賞3戦、2、2、3着。それも前走「オーバルスプリント」は交流GIII。セイントメモリー、タイセイレジェンドの引っ張る厳しい流れを外から捲り、一瞬あわやの場面があった。JRA時4勝はすべて中距離(1700~1800m)。ネオユニヴァース×トニービンの血統、大跳びの走法からも、今回1900は大きなプラスと判断できる。何より転入後の充実、パワーアップが印象的。追って達者な坂井Jともぴたり呼吸が合うのだろう。ここを首尾よく勝ち抜ければ本番(浦和記念)でも十分なチャンスが浮かぶ。
スターシップ本線。こちらは転入後一貫中~長距離路線に狙いを定め抜群の安定感を誇っている。すでに重賞2勝、前走充電明けの「東京記念」も自ら動く競馬で価値ある2着。父クロフネ、9歳馬ながら典型的な晩成型だ。ガンマーバーストは前述通りデータ面で条件がよく、加えて転入2勝のレースぶりからは、強いときはめっぽう強い…そんなイメージが浮かんでくる。以下、前2年2、2着、再び照準を絞って臨むカキツバタロイヤル、ステイヤーとして相応のレベルを持つアドマイヤシャトル、フォーティファイド。もう1頭、伏兵、盲点といえばサイオンか。転入後短距離路線を歩んできた(重賞5、3、7着)が、現実にJRA時1700~1800mで3勝している。
◆ハイセイコー記念回顧
(10月16日 大井 サラ2歳 定量 南関東SII 1600m不良)
△(1)ブラックヘブン 1分42秒2
△(2)ドラゴンエアル 1
○(3)ジュリエットレター 21/2
△(4)ポッドルージュ 2
(5)ファイヤープリンス 11/2
………………
(6)ストーミングソウル
△(9)グライス
▲(11)ビックボーイ
◎ モデールノ 競走除外(事故)
単490円 馬複1830円 馬単3780円 3連複1360円 3連単11130円
ブラックヘブンが完勝した。道中スムーズな外め4番手。直線中ほど、一歩前を行くジュリエットレターに手応えよく並びかけると、それこそ一瞬のうちに突き抜けた。キャリア3戦目の2歳馬とは思えない切れ味と競馬センス。「理想的すぎるくらいのポジションでレースが運べた。初めてのコーナー4つもまったく問題なかったし、追ってからの反応もイメージ通り。改めて素晴らしい馬と実感しました」(有年淳騎手)。同Jは重賞2勝目。平成16年トウケイファイヤーでこのレースを勝っている。喜びひとしお、同時に嬉しい巡り合わせといえるだろう。ともあれ1600m=1分42秒2は、昨年ソルテ=43秒2だから数字上もきわめて優秀。ごく冷静、客観的に“新星登場”の見方ができる。
ブラックヘブンは、バイロ×トロピカルシルキー(アルワウーシュ)、460キロ台の黒鹿毛牡馬。バイロは米GIフォアゴーS(ダート7F)勝ち、テスタマッタと同系だから南関東適性も納得がいくだろう。さらに半兄ディープハント(船橋記念・習志野きらっとSP=2、2着)。今後距離延長は課題としても、ことスピード、瞬発力には確かな裏付けを持っている。「淳(有年騎手)が、うまく流れに乗せてくれた。素質とデキのよさは感じていたが、今日はそれ以上の結果が出た」(鷹見浩調教師)。優先出走権を得た12月18日川崎「全日本2歳優駿=GI」は、ひとまず未定とコメントされたが、今回この勝ちっぷりなら十分脈ありと判断したい。あとは馬自身の体調維持、左回り適性にかかってくる。
2着ドラゴンエアルは中団から直線一気。メンバー中最速上がり38秒7で勝ち馬に肉薄した。スタート、折り合いなど、まだ課題は残すものの大器を感じさせるレースぶり。父タイムパラドックスからも来春クラシック候補が確定した。ジュリエットレターは、道中横綱相撲と思えた2番手から意外な失速。転入初戦、初コースのエクスキューズはあるものの、パドックの馬体などほぼ完璧な仕上がりとみえ、そうなると、道営ニシノデンジャラス(鎌倉記念圧勝)の創りかけた“勢力地図”も、一転あやふやに思えてくる。牝馬ポッドルージュが確かな末脚で健闘。自己条件(牝馬同士)に戻れば、今回厳しい経験が生きてきそうだ。
モデールノは、台風の影響(厩舎地区冠水・輸送不能)で競走除外。正直、不運、試練としか言葉がない。ただ翌々週10月30日、地元船橋「平和賞」が控えており、そこで仕切り直しという手も十分浮かぶ。その平和賞は地方交流。新たな挑戦馬(主に道営)も予測され、モデールノ出走ならビッグカードとなってくる。