◆マイルグランプリ展望
(11月6日 大井 サラ3歳以上 別定 南関東SII 1600m)
「マイルグランプリ」は平成7年創設、今年第20回目を迎える南関東SII。かつて帝王賞トライアル(4~5月)として施行された当時と較べ、顔ぶれなど数段軽くなってしまったが(コンサートボーイ、アブクマポーロ、アジュディミツオーなどGI級優勝)、それでも例年フルゲート16頭。“にぎやかで目移りする重賞”が、一つ新しい伝統にはなりつつある。東京盃(1200m)組、東京記念(2400m)組、日本テレビ盃(1800m)組が一堂に会すること。そこに夏の上昇馬が加わり、さらに春のクラシックを経験した3歳馬も出走可能であること。見渡して今年も混戦、人気自体が読みにくいメンバーになった。JRA芝GI級スマイルジャックの転入、戸崎、岩田両Jの参戦なども、“目移り”“迷い”を、一段と増幅させる。
(1)…波乱含み。1人気[2-1-3-4]、2人気[2-2-2-4]、3人気[3-0-1-6]。どれをとっても信頼度ひと息で、過去10年、1→2番人気の決着が1度もない。昨年は10番人気ラインジュエル2着、馬複9770円。
(2)…大井VS船橋。大井=5勝、2着5、船橋=4勝、2着4とほぼ互角。ただ昨年、一昨年は大井ワンツースリーで、勢いは地元にあるか。浦和は22年・クレイアートビュン優勝、同年ヴァイタルシーズ2着。
(3)…性齢広範。5歳=4勝、2着2とリードだが、6歳=2勝、2着3、7歳=2勝、2着1、4歳=2勝もほとんど差がない。8歳以上は2~3着はあっても勝てない傾向。牝馬[0-3-0-5]はアベレージの点で特筆できる。
(3)…先行有利。逃げ=5、先行6、差し=8、追込=1。イメージほどペースが上がらず先行有利。4コーナー6番手以降からの優勝は、23年ボクの一例しかない(A・ムンロ騎手)。相性がいいのは真島騎手で、5度騎乗、2勝して2着1。
※データ推奨馬
▲デイジーギャル…ローレル賞、桃花賞、クリスタルナイトC(すべて1600m)を勝っている3歳牝馬。逃げ一手で頼りないイメージだが、ことスピードは牡馬オープンに入っても見劣りしない。軽量51キロなら迷いのない徹底先行。鞍上・有年淳騎手は昨年このレース、ラインジュエルで穴をあけた。
☆ ☆
◎ソルテ 55和田
○トーセンアドミラル 57川島
▲ジョーメテオ 57坂井
△ゴーディー 57赤嶺
△アイディンパワー 57的場文
△クリーン 57森
△ヤサカファイン 57戸崎
デイジーギャル 51有年
ピエールタイガー 58真島
スマイルジャック 59山崎誠
ナニハトモアレ 57岩田
3歳ソルテに狙いをつけた。今春クラシック三冠2、3、6着。確かに結果ジリ貧だが、いずれも好位を軽快に動く競馬で地力とセンスは十分示した。遡って「ハイセイコー記念」「ニューイヤーカップ」(1600m)は大楽勝。今回同じ1600mなら、思い切りよく脚を使って完全燃焼のイメージが沸いてくる。全体レベルは“中の上”と推測できる現3歳世代。フルゲートの中、“1番枠”を引き当てた強運も見逃せない。
トーセンアドミラルはJRA5勝、転入後重賞(スパーキングサマーカップ=川崎1600m)制覇を含む8戦3勝。ブリンカー着用以来、持ち前の先行力に粘りを増し、6歳馬ながら再び旬を迎えている。良血(キングカメハメハ×サンデーサイレンス)に加え、惚れ惚れする好馬体。大井コースも「金盃=2000m」4着からは十分こなせる。今回適条件でもうひと花ありそうだ。
ジョーメテオの場合、前走「埼玉栄冠賞=浦和1900m」で期待を裏切り(1人気・6着)、そこから中2週の強行軍がどう出るか。地力、大井適性は「サンタアニタT=1600m」2着で実証済みだが、気性面に少なからず難しさ(カカリ癖)も抱えている。それなら、今回TR「ムーンライトカップ」快勝、豪脚健在をアピールしたクリーン、同レース3着、長休明けながらさすがの快速をみせたゴーディーも互角の評価か。アイディンパワー、ヤサカファインも末脚は切れるが、ともに本来スプリンター。昨年覇者ピエールタイガーは近走気性難が目立っている。
◆平和賞回顧
(10月30日 サラ2歳 定量 地方競馬交流 南関東SIII 1600m)
△(1)ナイトバロン 1分42秒9
◎(2)ファイト 3
(3)リュウノワン 3/4
(4)ソードオブホロー 11/2
(5)エスティロックオン 7
……………
△(7)エスティドゥーラ
▲(8)ウィーゴー
△(9)フラッシュモブ
△(10)ライブリーソウル
○(14)シオサイ
単530円 馬複590円 馬単1490円 3連複4420円 3連単23730円
ナイトバロンが豪快な差し切りで能力と個性をアピールした。道中中団をスムーズに進み、直線大外から一気の伸び。マイペースの逃げ、いったん楽勝態勢かにみえたファイトを並ぶところなく抜き去った。上がり40秒7、数字はさしてほめられないが、ゴール際ほんの50mほどで3馬身差。勝ちっぷりのインパクトといえば十分強い。「調教試験、稽古の動きなど、凄い手応えを感じていた。だからプレッシャーがありました。今日は(自分の中で)負けられないレースだと…」(本田正重騎手)。同Jは、ここ数年めっきり腕を上げてきた中堅(25歳)で、しかし重賞は初勝利。淡々と物静かな口調ながら、その表情には嬉しさと達成感がにじみ出ていた。
ナイトバロンは、昨夏道営新馬(門別1000m)勝ち。以後2戦も1200m~1700mを2、2着と善戦し、今回船橋・出川克己厩舎から再スタート、いきなり百点満点の結果を出した。父ティズナウ(米ブリーダーズC・クラシック2連覇)、母の父ヨハネスブルグだから、世界的良血(持ち込み馬)といえるだろう。道営ハイレベルはもろん、元より自身ズバ抜けた素質があったということ。「2歳とは思えないほどしっかりした走りをする。伸びしろはまだまだあるし、距離が延びればもっといい」(出川師)。次走は、優先出走権を獲得した12月18日川崎「全日本2歳優駿・GI」と明言された。南関東2歳重賞も、これで3レース終了。ただ鎌倉記念=ニシノデンジャラス、ハイセイコー記念=ブラックヘブン、平和賞=ナイトバロン、どれが最強か甲乙つけがたい状況で(記者印象)、JRA勢も含め、本番・2歳優駿は混戦になりそうだ。
2着ファイト。道中一人旅の展開を思うと不満だが、直線ナイトバロンと内外が大きく離れ、気を抜いてしまったうらみもある。「まだ自分の形ができていない。次は差す競馬を考えている」(張田京騎手)。3着リュウノワンは、勝ち馬に次ぐ上がり3F40秒8。終始外々を回るロスの多い競馬で、このあたりはやはり道営レベル(オープン好走)というべきか。ソードオブホロウは地元に戻り本来の先行策。ひとまず収穫のある4着だった。ウィーゴーはスタートでゲートにぶつかり、その時点で万事休す。精神面に大きな課題を残して終わった。人気の一角シオサイは好位からジリ貧で、あろうことか殿り負け。一過性のポカかどうか、次走が正念場になってきた。