◆ローレル賞展望
(11月12日 川崎 サラ2歳牝馬 定量54キロ 地方競馬交流 南関東SIII 1600m)
「ローレル賞」は平成14年新設。当初2年間は3歳春(2~3月)桜花賞TRとして施行され、15年から現在の2歳秋(11~12月)に時季変更となった。おおむねスピードと完成度が勝負を分け、翌年クラシックに結びつかない傾向だが、反面大晦日の名物レース、大井「東京2歳優駿牝馬」とは関連が深く、15年ビービーバーニング、17年ダガーズアラベスク、19年マダムルコント、コースが違うにもかかわらず(左回り→右回り)、3頭がこの2レース連破。昨年もローレル賞2着ケンブリッジナイスが、続く優駿牝馬でもカイカヨソウと一騎打ち(1/2馬身差2着)を演じている。
さて今年の顔ぶれ。例によって“玉石混交”の言葉が当たるが、先月「鎌倉記念」2着ファーストキス出走、当時の勝ち馬ニシノデンジャラスが続く「北海道2歳優駿=GIII」4着だから、レベル自体は合格点とイメージできる。今回これに、道営実績でファーストキスより一枚上の評価があるクライリング(フローラルC・3着)が激突。さらに南関東の成長株トキノセレブ、エドノミリアン、ハイエストパワーらが挑む格好。あくまで中間点だが、一つ勢力図がみえる戦いとはいえるだろう。今の川崎1600mなら、1分42秒台前半が各馬クリアすべき数字になるか。接戦、激戦の予感はある。
(1)…波乱含み。1人気[4-1-0-5]はまずまずだが、2人気[0-5-1-4]、3人気[0-1-0-9]と頼りなく、1=2人気の決着は過去10年1度しかない。昨年は12→7人気で、馬単11万円台が飛び出した。
(2)…3場互角。地元川崎=5勝、2着5回とリードするが、大井=3勝、2着1回、船橋=2勝、2着4回と差がなく続く。他地区出走馬(一昨年から交流)は案外不振で、6頭出走、昨年メロディアス(道営)3着が最高。
(3)…素質重視。優勝馬平均キャリア=3.8戦、同2着馬=3.5戦。使い込んだ馬より、素質馬に分がいい傾向。過去10年、1勝馬が4勝して2着4回。昨年1→2着馬はともにキャリア4戦だった。
(4)…先行型。逃げ=4、先行=5、差し=10、追込み=1。例年ハイペースになりがちだが、それでも2歳牝馬同士、直線だけでは届きにくい。ジョッキーでは5頭騎乗して1勝、2着2回の町田騎手。
※データ推奨馬
▲タントタント…近年活躍が目立つ大井(小林分場)所属馬。道営(1勝)から前走転入、いきなり1200m=1分13秒8の好時計で圧勝した。シニスターミニスター×マンハッタンカフェの背景からは距離も多様にこなせるはず。鞍上・坂井騎手は22年オリークックで優勝。
☆ ☆
◎トキノセレブ 見沢
○ファーストキス 張田京
▲クライリング 御神本
△エドノミリアン 今野
△ハイエストパワー 内田利
△ペパーミントリボン 石崎駿
△タントタント 坂井
マリアンズクック 町田
ヴァカンス 山崎誠
ネバーシーストップ 川島
生え抜きトキノセレブに期待した。新馬→特別2連勝、いずれも自然流の先行からもうひと脚使ったもの。単に速いというより、瞬発力と競馬センスが印象的で、高い完成度とスケールの大きさを同時に感じる。現実に前走1500m=1分35秒8は、同開催「鎌倉記念・ニシノデンジャラス=35秒9」を凌ぐ時計。ワイルドラッシュ×ダンスインザダークの血統背景からもまだまだ上積みがあるだろう。470キロ台、ガッシリ骨太の馬体にも、実戦向き、したたかなイメージが浮かぶ。
ファーストキスは道営新馬を勝って東上。以後川崎1500mを2戦、先行差し、自在に構えて2、2着と健闘した。前走は道営時よりひと回りパワーアップした511キロ。もちろんさらに良化が見込め、父マチカネキンノホシ(シアトルスルー×アリダー・AJC杯勝ち)の血筋も、ユニークかつ興味深い。クライリングは前述通り、道営時これより一枚上の評価があった馬。前々走「フローラルC」小差3着。まだ粗削りながら父ハーツクライらしい強靭な末脚が特徴で、昨今の地区レベル比較(鎌倉記念、平和賞とも道営馬圧勝)からも、あっさり勝たれて不思議ない。
以下、デビューから3戦2勝、パワフルな先行力があるメイショウボーラー産駒エドノミリアン、同じく3戦2勝、前走トキノセレブに食い下がったハイエストパワーに一角崩しの可能性。混戦向きの末脚はペパーミントリボンだが、こちらはイレ込み癖があり出張戦に課題を残す。データ推奨タントタントは初コース1600mで折り合いがつくかどうか。もっと大穴ならマリアンズクック。母エイコークックは18年このレース勝ち馬で、鞍上・町田騎手にも魅力がある。
◆マイルグランプリ回顧
(11月6日 大井 サラ3歳以上 別定 南関東SII 1600m重)
○(1)トーセンアドミラル 1分39秒6
(2)ピエールタイガー 頭
◎(3)ソルテ 11/2
▲(4)ジョーメテオ 鼻
△(5)アイディンパワー 首
……………
(6)マズルブラスト
△(7)ゴーディー
(10)スマイルジャック
△(11)クリーン
(14)デイジーギャル
単260円 馬複4150円 馬単6070円 3連複7050円 3連単35860円
トーセンアドミラルが接戦をしぶとい二の脚で競り勝った。軽量(51キロ)デイジーギャルが快調に飛ばす展開。しかしそれを深追いせず、3コーナー、相手の脚いろが鈍ったところで自然流にスッと先頭。外から一緒にスパートしたピエールタイガーを、ゴール際もうひと伸びで退けた。「スタッフが完璧に仕上げてくれた。2番手から抜け出す作戦はイメージ通りだけったけど、これで負けたら自分の責任。とにかく今はホッとしてます」(川島正太郎騎手)。乗り役の胸中、葛藤とはそういうものか。デキがよく、しかも道中絶好の展開なら、最後の瞬間、より以上にプレッシャーがのしかかる。もっとも正太郎騎手・23歳。勝利インタヴューの表情は生き生きとして快活にみえた。
トーセンアドミラルはJRA5勝、南関東転入後8戦4勝、重賞は今回2勝目の制覇となった。キングカメハメハ×サンデーサイレンスの超良血。パドックで見る馬体などはっきりGI級の迫力があり、いかにも再生名人・川島正行厩舎が預かっただけの能力、可能性が感じとれる。「性格が素直だから順調に調教を積めるし、今日の勝ちっぷりも期待通り。まだまだよくなる馬と思っています」。同馬の場合一つ突破口といえば、今夏からブリンカー着用、以後快進撃が続くこと。JRA実績(1800~2000mで4勝)以上にパワー、持久力の裏付けを持っている。次走未定とコメントされたが、アドミラル自身の適性、進路といえば12月29日「東京大賞典=2000m」。記者個人的にはそこで再チャレンジを期待したい。
2着ピエールタイガー。真島騎手、終始気合をつけながら馬に隙を与えない好騎乗で、現状勝ち馬との能力比較からは大健闘(頭差)の評価だろう。元より気分優先。大井1600mはベストとしてもスタートと位置取りしだいで落差が大きい。期待したソルテ3着。道中中団より少し前、流れ、手応えなど絶好とみえたが、いざ追い出してから伸びが止まった。久々が響いたか、あるいは成長力に壁があるか。次走を「勝島王冠=大井1800m」とすると、文字通り正念場になりそうだ。ジョーメテオは前走1900m(浦和)を使った影響か、懸念のカカリ癖が出なかった反面、道中反応が鈍く大きく置かれた。逆にアイディンパワーはいつもより早めに仕掛けて伸びひと息。この2頭、不器用さでなかなかすっきりした結果が出ない。