◆ロジータ記念展望
(11月13日 川崎 サラ3歳牝馬 定量54キロ 地方競馬交流 南関東SI 2100m)
「ロジータ記念」は平成2年新設。ロジータ引退の翌年、間髪を入れず23年の歴史がスタートした。3歳牝馬同士、それも南関東限定の“SI格付け”は、ある意味公平さを欠く特別扱いだが、裏を返せばそのあたり、彼女の偉業、貢献度、名牝伝説…すべてを象徴した“はからい”ともいえるだろう。地力がモノをいう距離2100m、実績、収得賞金に関係なく全馬定量54キロ。基本的に強い馬が勝つ、堅いレースだ。
さておき、ロジータの名牝たる理由をおさらいする。平成元年、南関東クラシック(牡馬混合)三冠はもちろん、当時GI級を総ナメしたこと。明けて翌春、あっけないほど潔く、それこそ風のように競馬場を去ったこと。もう一つ、以後母となっての活躍が素晴らしく、その仔から孫、堂々たる“ロジータ一族”を築いたこと。直仔にカネツフルーヴ(帝王賞)、イブキガバメント(朝日チャレンジC)、アクイレジア(関東オークス2着・ジャパンダートダービー2着)、孫にレギュラーメンバー(JBCクラシック)、など錚々たる名前が並び、さらに「川崎記念」、三代制覇という快挙がある。ロジータ→カネツフルーヴ→レギュラーメンバー。ロジータはやはり、川崎競馬にとって(関係者もファンも)、不世出の馬と納得する。つけ加えればレギュラーメンバー、カネツフルーヴは、以後種牡馬としても地味ながらそれらしい(ダート中~長距離向き)産駒を送った。
今回こんな話にしたのは“一族”が出ているからだ。ローズベビークリスは、母ヤマノボンディール、祖母ロジータ。のびやかな走法、追って味があるレースぶりがロジータを連想させ、精神面、競馬センスなどまだ未完成としても、デビュー2連勝(新馬1200m→特別1400m)、豪快な差し切りを見る限り潜在能力は相当高い。夏場4か月の充電、前走TR2000m「サルビアC=5着」から臨む理想のステップ。手前勝手ながら、ここで絵に描いたようなロマンがあれば記者自身は改めて元気が出る。母ヤマノボンディール(父ダンスインザダーク)はJRA7戦2勝(ダート1700m~1800m)、底をみせないまま現役引退、2年後に故郷の浦河・高瀬牧場でローズベビークリスを生んでいる。
(1)…上位拮抗。1人気[2-4-0-4]、2人気[4-0-5-1]、3人気[1-2-1-6]。前述通り人気サイドが強いが、2→1人気などの逆転現象もしばしばみられる。昨年はエミーズパラダイス→アスカリーブルで馬単550円。
(2)…船橋優勢。船橋=5勝、2着5とリードする。近年その傾向が顕著にみえ、昨年は1~3着ワンツースリーで決着した。川崎=2勝、2着4、大井=2勝、2着1。浦和も18年マキノナチーフが優勝している。
(3)…実績必要。過去10年、連対20頭中9頭が、牝馬クラシック三冠1~3着の実績があった。純粋な昇り馬は案外苦しく、重賞初挑戦での好走は19年トキノミスオース(JRA転入)など特殊ケースに限られる。
(4)…先行有利。逃げ=4、先行=5、差し=9、追込=1。ペースの上がらない川崎2100mで、器用さ、機動力がないと厳しくなる。ジョッキーでは的場文、今野、町田、繁田騎手らが好成績をあげている。
※データ推奨馬 ◎イチリュウ…対カイカヨソウ、1勝2敗だが、内1つが桜花賞の金星。脚質的にも、アスカリーブル相手に逃げ切った昨年エミーズパラダイスのイメージが沸く。父はメーディア輩出、勢いのある万能型キングへイロー。的場文Jはこのレース、16年アイチャンルックなど2勝している。
☆ ☆
◎カイカヨソウ 今野
○イチリュウ 的場文
▲ローズベビークリス 繁田
△オキナワレッド 見沢
△マヒナズヒル 本橋
△ケンブリッジナイス 森
△エイシンルンディー 尾島
ハクシュウベリー 拝原
リアハッピー 御神本
ごく普通、客観的にはカイカヨソウがどう勝つか、相手探しというレースになった。道営時含め重賞5勝、牡馬相手の東京ダービーも3~4コーナー、自ら動く正攻法で小差4着。牝馬同世代では一枚別格の能力がある。断然人気の浦和桜花賞を完敗(大差3着)、一点悔いは残したものの、前走「戸塚記念」3着など一貫スムーズなレースぶりで左回り不安も一掃。加えて父ティンバーカントリーなら、まだまだ上積みもあるだろう。コンビ4戦、呼吸が合ってきた今野騎手。スロー2100mなら好機に捲れる。
イチリュウは同世代、カイカヨソウの好敵手の位置にある。桜花賞は相手が動かなかったにせよ、最後二の脚を繰り出す立派な勝利。血統的に(母の父アサティス)長距離もむしろプラスとイメージでき、あとは展開とペースがどうなるか。おそらく直後でマークするカイカヨソウ。今野忠成、的場文男、流れのゆるむ(逆にどこからでも動ける)2100mだけに、一つかけひきの勝負にもなりそうだ。
冒頭推したローズベビークリスは、前走を叩いて上積みがどこまであるか。素質、中~長距離適性は文句なく、今回左回り2度目というプラスも見込める。TR「サルビアC」好走組ハクシュウベリー(1着)、ヒットザトレイルは、いかにも時計がもの足りず、それなら別路線の長距離型マヒナズヒル(大井2000m2着)に食指が動く。重賞実績があるケンブリッジエース、オキナワレッドは本質短~マイラーの印象で折り合いに不安。通算[4131]の上昇馬リアハッピーも父サウスヴィグラス、2100mでは計算しづらい。