目覚め始めた国枝厩舎の良血2歳軍団/トレセン発秘話
◆母はいわずと知れたあの名牝
「朝日杯FSの本命は決まりだろう。何せGII(京王杯2歳S)より時計が1秒以上速かったんだから(笑い)」
週初めの美浦で“ご意見番”こと国枝栄調教師が、先週東京の2歳500万特別(からまつ賞)を上機嫌に振り返った。むろんジョーク。とはいえ勝利がもたらす高揚感が500万条件のそれではないことは、休日の酒が抜けない宴会野郎でもよく分かる。
からまつ賞の勝ち馬ショウナンアチーヴは04年の阪神JFを制したショウナンパントルの子。日ごろから「関西で残った馬をもらっているようじゃダメ。結果を求められる馬で結果を出す。それが美浦を活性化し、栗東にも対抗し得る唯一の方法」と語る師にとって、管理する良血馬が関西馬(2〜4着はすべて関西馬)をねじ伏せた意義は決して小さくない。
ともあれ眠っていた国枝2歳軍団にようやく2勝馬が誕生。関東記者にすればこれも“取材活性化”の一助だが、輝ける未来に翼を広げるのはショウナンアチーヴのみならず。実はこれを起爆剤に、国枝厩舎の良血勢がこぞって目覚めそうなムードが漂っている。
「歩様を見てごらんよ。実にリズミカルで弾むようだろ? 顔立ちが良くて雰囲気もある。まさにザ・良血馬だな」
ゾッコンの口ぶりで国枝師が目を細めるのは、日曜京都の白菊賞(2歳500万下(牝)、芝内1600メートル)を予定するダイワレジェンド。母は言わずと知れたGI4勝馬ダイワスカーレット。父をアパパネと同じくするのも看板馬への手応えを増す要因で「キングカメハメハ自体が利口で落ち着いた馬。産駒も総じて扱いやすく走りにムラがない。こういう馬こそ期待通りに走らせないと」と声が弾む。近年にアグネスワルツ、ドナウブルーを出した白菊賞は関西注目の出世ロード。未来を占う舞台をしっかり用意するところが心憎い。
さらに今週は07年のNHKマイルC優勝馬ピンクカメオの初子ブルーロータス(牝=父ディープインパクト)も急転デビュー(土曜東京芝1600メートル)の方向に。「先週から動きがグングン良くなってきて、オレもその気になってきた」(国枝師)。週末の美酒は師の秘蔵っ子に託す算段だ。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)