2歳500万を勝った2頭に大物の予感/トレセン発秘話
◆手塚厩舎の“鉄板馬名”
ビッグレースを勝つ馬には、決まって後の大仕事を予感させるプロローグが存在する。そんなシーンに立ち会うのは、取材記者としては至上の喜びで、先週の東京開催でも興味深い場面に遭遇した。ひとつは日曜ベゴニア賞(500万下、芝1600メートル)だ。
「時計はいくつだった? 1分35秒5なんだ。へぇ〜、そうかそうか」
勝ち馬ショウナンワダチの大竹正博調教師は表彰式から戻るなり、実にうれしそうな顔で勝ち時計を確認。表情をニヤつかせたのは、もちろんその速さではない。4角15番手から33秒6の最速上がりを駆使して差し切りV。レコード決着だった昨年に比べて1秒9も遅い数字=緩ペースが、逆に同馬の決め手を浮き彫りにしたからである。
「直線で進路が開いた時の反応が抜群に速かったね。次の舞台のGI朝日杯FS(12月15日=中山芝外1600メートル)でも、このギアチェンジの速さは武器になるんじゃないの?」と師のニヤつきは止まらない。ベゴニア賞といえば、3年前のナカヤマナイトからサトノギャラント→ロゴタイプと、大物を輩出する近年の関東出世レース。加えて東京6日目のからまつ賞(500万下=ショウナンアチーヴ)に続く勝利は、馬主サイドの勢いも感じさせる。今年の2歳王者決定戦もこの路線は要警戒と覚えておこう。
もうひと鞍はアジアエクスプレスが7馬身差の圧勝を飾った土曜のオキザリス賞(500万下、ダ1600メートル)。同馬のデビュー前、宴会野郎があるキーワードを手塚貴久調教師に告げると「確かに! ならばコイツも大物かも」と何ともうれしそうな表情を見せたことがあったのだ。
実は手塚厩舎には出世が約束された“鉄板馬名”が存在する。アイルラヴァゲイン、アルフレード、アユサン…。ここまで言えばお分かりか。そう、これまで厩舎の屋台骨を支えたのは、驚くことにすべて「ア」から始まる名前の馬ばかりなのだ。この法則に「そっか、今年はアジアエクスプレス!」と言って当時は目を丸くした同師だが、これだけのパフォーマンスを見せればもう本物。次走に予定する交流GI全日本2歳優駿(12月18日=川崎ダ1600メートル)は、師も自信満々で送り出すはずである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)