◆結果を大きく左右する、朝日杯FSの枠順
藤原英調教師はかつてGIに管理馬が出走するとやたらと外枠ばかりが当たっていた時期があり、当時こんな言葉を吐き捨てたものだった。
「せっかくGIに向けて目一杯仕上げても枠の抽選ひとつで全てぶち壊されてしまう。希望の枠を厩舎に選ばせてそこから抽選したほうがスッキリしてええんちゃうか」
確かに、前哨戦から長期的展望を立てて極限まで絞り上げたとしても、枠の内外ひとつで全てが崩壊してしまうやるせなさがGIの枠順決定シーンには存在する。そんな運も実力の一部であり、だからこそ面白いという意見もあるのだが…。
現存するGIのうち、最も枠順によって結果が左右されやすいのは、今週の中山・朝日杯FSだろう。
1角横のポケットからスタートしてすぐコーナーを迎えるこの芝1マイルコースは、外枠を引くとずっと外を回らされるロスが生じるため、圧倒的に内枠有利。だからこそ見直しが行われ、来年から枠の有利不利がなく、能力通りの結果が出やすい阪神外回りマイルに舞台を移すわけだ。
「内と外とではぜ〜んぜん違う。1馬身以上の差が出てくるんちゃうか」
こんなことを言うのは佐々木調教師だ。
これまで朝日杯の枠順ではその身を持って泣き笑いを経験してきた。03年はコスモサンビームが絶好枠1番を味方に先行押し切りV。逆に11年のダローネガは大外16番を引いてしまい、5着に敗れている。
「サンビームの時は、枠が違っていたらメイショウボーラー(2着)にあっさり負けていた。あっちは外枠(15番)を引いたことで前半だいぶ脚を使っていたもの。結局、中山マイルで外枠から競馬をしようとすればボーラーみたいにハナに行くか、ダローネガの年のノリちゃん(横山典)みたいに後ろで死んだふりをするしかない(レオアクティブ=15番3着)。力の接近したメンバーならより枠に左右される。今年もそこが一番重要になるんじゃないの」
デキ、能力…多少の個体差をひっくり返すだけの“魔力”を持つ朝日杯FSの枠。13日(金曜)午前9時の枠順決定は、各陣営にとって最も緊張する瞬間になる。
(栗東の坂路野郎・高岡功)