午年の2014年が明けた。馬好き、競馬好きにとっては、余計に福を願いたくなるのも午年なのではないだろうか。山梨県北杜市の清里高原にある小須田牧場では、午年の年明けにふさわしい馬名を持つ、マチカネフクキタル(セン20)が元気一杯に暮らしている。マチカネフクキタルといえば、1997年の菊花賞馬。最後の直線で上がり33.9の末脚を繰り出して淀のターフを駆け抜けていった姿を記憶しているファンも多いだろう。
2010年4月、マチカネフクキタルは、昨年12月に24歳で亡くなったマチカネタンホイザとともに、北海道から山梨の小須田牧場に移動してきた。当初は耳を触らせず、無口を一度外すと着けられないという気性のきつさを見せていたが、同牧場にやってきた翌日には去勢された後、耳を触れるように慣らしていった。今ではすっかり大人しくなり、耳まわりも触れるようになっている。馬体は健康そのもの。のんびりと放牧地で毎日を過ごしており、同牧場の小須田稔氏によると、年間200人以上のファンが訪ねてくるという。
マチカネフクキタルは昨年亡くなったマチカネタンホイザとともに小須田牧場やってきた
また、地方競馬最多となる55勝を挙げたアラブのモナクカバキチ(セン15)も、引退後の2012年8月から同牧場で第二の馬生を過ごしている。
「福山競馬場はもうないですけど、カバキチが走った競馬場でお披露目ができれば良いですね」と小須田氏。
モナクカバキチ
右目が見えないために、接する時には少し注意する必要はあるようだが、女性スタッフが付きっきりで行っている乗馬の調教も順調に進められている。
「ウチでは夕方に追い運動をやるのですが、音声での指示をすぐに覚えて、しっかりと聞き分けています。13歳まで走って55勝挙げただけあって、さすがに頭が良いですね」と小須田氏も、乗馬としてのカバキチに期待を寄せている。
取材の最後に、小須田氏はこう語った。
「フクキタルは今の季節も、寒い中で放牧されています。会いに来て下さる方には、自然の中であるがままの状態で生きているフクキタルの姿を見て、何かを感じ取ってほしいですね。そしてご自分の生き様と照らし合わせて頂ければと思います。人にも馬にも、生まれてきた意味があると思うのです。フクキタルも、このような名前をもらって、菊花賞という大きなレースに優勝して、現在はここで静かに過ごしている。そう考えると、この馬にとっての現在の役割は、自然の中であるがままに生きている姿を皆さんにお見せして、何かを感じてもらう、あるいは何かをもたらすということではないかなとも思いますね」
小須田氏は「フクキタルの姿を見て何かを感じ取ってほしい」と語った
午年の今年、自然に身をゆだねて生きるマチカネフクキタルに会いに行き、その姿から何かを感じ取ることができれば、人間が求める本当の福がもたらされるかもしれない。(取材・写真:佐々木祥恵)
小須田牧場
山梨県北杜市高根町清里3545
直接訪問可能ですが、詳細は「競走馬のふるさと案内所」
http://uma-furusato.com/にお問い合わせください。