◆船橋記念展望
(1月8日 船橋 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1000m)
「船橋記念」は、平成18年、1800m→1000mに、リニューアルされた若い重賞(さらに古くは昭和31年~平成8年までアラブ系で施行)。しかしその優勝馬、けっしてレベルは低くなく、例えば19年プライドキムは以後「クラスターカップ」を勝ち、21年スパロービートは「北海道スプリントカップ」3着、23年ジーエスライカーは「さきたま杯」2着、それぞれ統一Gで十分な実績を作っている。
先週「東京大賞典・回顧」の際も少しふれたこと。地方馬が統一Gで好勝負を演じる、そう考えたとき、短距離と中~長距離、どちらに可能性が大きいか。記者は以前中~長距離とイメージしていたが(パワー優先)、昨今の流れをみるとどうやら違う。実際、昨年統一G地方馬優勝は「オーバルスプリント=浦和1400m」、ケイアイメモリーただ1頭。対して中~長距離では「ダイオライト記念」「日本テレビ盃」、GII級でもまったく競馬にならなかった。
スピードと瞬発力を磨くこと。ひとまずそれが統一G通用への近道…になるのだろう。少々うがった見方だが、地方競馬場で施行される短距離レースの場合、砂の状態、小回りなどで紛れが生じ、その結果、地元勢に思わぬチャンスが巡る可能性もある。さて今回船橋記念。3連覇をめざすナイキマドリード(23年・さきたま杯優勝)注目は当然だが、記者自身は、そろそろ“若い力”に期待したい気分がある。ハードデイズナイト筆頭に、リコーシルエット、フォリッド、3頭の明け4歳馬。そしてこのレース、現実に1~2着馬には、2月26日大井「スプリング盃=SIII」優先出走件が与えられ、さらにいい結果が出れば、4月「東京スプリント=統一GIII」まで夢が及ぶ番組になっている。
(1)…波乱含み。1人気[3-1-0-4]。ここ2年ナイキマドリードが断然の1人気で制したが、負ければ着外のケースも多く、総体的には波乱含み。2人気[2-2-1-3]、3人気[0-2-2-4]。一昨年9人気バトルファイターが2着で、馬単7130円。
(2)…船橋VS大井。地元船橋=4勝、2着4、3着6とリードだが、大井=3勝、2着4、3着2もほとんど差がない。他は川崎=1勝(21年スパロービート)だけ。船橋同士、大井同士のワンツースリーが3度あり、勢いが偏る傾向。
(3)…年齢広範。6歳=2勝、2着4、3着4と最もいいが、4歳=2勝、7歳=2勝、さらに5歳、8歳もそれぞれ1勝ずつをあげている。出走頭数も含めたアベレージは熟年(6~7歳)層ややリードか。牝馬は[0-0-3-13]とふるわない。
(4)…差しタイプ。逃げ=3、先行=5、差し=5、追込=3。船橋1000mは基本的に逃げ(先手をとりきった馬)有利だが、重賞級となるとそうでもない。18年コアレスタイム、20年ディープサマー、24年ナイキマドリードは四角5番手以降から直線一気。
※データ推奨馬
◎エーシンジェイワン…大井所属6歳馬。JRA5勝をすべて1400m以下であげており(左回り2勝)、オープン特別でも小差5着が2度ある。逃げベストだが、仮に好位からの競馬になってもスピードの絶対値が違う可能性。父スパイツタウンはBCスプリントなど米10勝、05年最優秀スプリンター。
☆ ☆
◎ハードデイズナイト 55山崎誠
○ナイキマドリード 57川島
▲ディープハント 55町田
△エーシンジェイワン 55桑村
△リコーシルエット 51増田
△ヤサカファイン 57石崎駿
△エンドスター 53笹川
フォリッド 53和田
ジョーモカ 53左海
スマイルジャック 57的場文
明け4歳ハードデイズナイトに期待した。昨夏「優駿スプリント」「アフター5スター賞」と重賞(1200m)連破。いずれも絶好のスタートをいったん下げ、直線GОサインと同時に弾けたもので、当時3歳の若さも含め、その瞬発力と競馬センスに驚かされた。以後2戦、「東京盃」「JBCスプリント」こそJRA勢の壁にはね返されたが、経験を積んで進化するのがサウスヴィグラス産駒、一つ大きな特徴(ラブミーチャンなど)でもある。今回南関東同士、気楽に乗れる立場もプラスだろう。中間意欲的な追い切りを3本こなした。
3連覇をめざすナイキマドリードは、再び57キロが他馬との実績差(GIIIさきたま杯筆頭に重賞6勝)を思うときわめて有利。ただ問題は8歳の衰えがないかどうかで、前2年とも直前「ゴールドカップ」を勝っていた(今年は5着)から不安はある。もう一つ、同馬は本質的にスタートが上手でなく、仮に出遅れてしまうと今回最内1番枠が大きな死角だ。
予想上▲としたディープハントだが、あるいは同馬が最も計算できるかもしれない。昨年2着(3/4馬身差)はゴール際の勢いなどNマドリードをむしろ凌ぎ、以後も短距離戦に限ると一貫強烈な末脚をみせてきた。父ブライアンズタイム、快速血統のイメージはないものの、反面晩成型らしい底力と逞しさを感じる。エーシンジェイワンは前述通り、JRAの高いレベルでもまれてきたスピード馬。スタートを決めて流れに乗れるかどうかだろう。以下、格下ながらテンのダッシュは自信があるリコーシルエット、昨年4着、1000mなら自在に動けるエンドスター、かつてGII東京盃、サマーウインドの鼻差2着があるヤサカファイン。フォリッド、ジョーモカは軽量でも重賞となると力不足。スマイルジャックはJRAビッグネームながらダートが合わない。
◆報知オールスターカップ回顧
(1月3日 川崎 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 2100m 良)
○(1)オオエライジン 2分16秒9
▲(2)アウトジェネラル 鼻
△(3)スターシップ 2
(4)タマモクリエイト 首
△(5)パワーストラグル 首
…………………
△(6)ジャングルスマイル
△(7)ヴォルテックス
◎(8)エミーズパラダイス
単330円 馬複880円 馬単1610円 3連複3460円 3連単12330円
オオエライジンが激戦を制し“全国区”の力をみせた。逃げるエミーズパラダイスの2番手を好気合で進み、向正面過ぎ外から追い上げてきたアウトジェネラルに合わせてスパート。直線一騎打ちの末、しぶとい二の脚で競り勝った。最後鼻差ながら、終わってみれば6歳=4歳、実績と経験、さらに貫録が違った印象。「テン乗りになったけど、パドックで跨った瞬間これは走ると実感した。(直線)遊ぶようなところもみせたが逆にいえば余裕残し。自分としてはラッキーだった」(張田京騎手)。ラッキーとは、同Jは急きょの代役。騎乗予定・下原(園田)騎手が東海道新幹線遅れ(有楽町付近、火事の影響)で間に合わず、レース寸前に乗り替わりが決定された。新年から悲喜こもごも。もっとも下原騎手からは「勝ってくれて本当によかった。心底ホッとしています」のコメントが出た。裏返せばこれはオオエライジンの今回の期待値、いかに高かったかいうことでもある。
オオエライジンはキングヘイロー×フシミアイドル(リンドシェーバー)の6歳牡馬。通算22戦15勝、3歳時「兵庫ダービー」「黒潮盃」など地方主幹レースを多数制し、交流Gでも「兵庫ゴールドトロフィー」3着、「佐賀記念」5着などソコソコ実績を作っていた。500キロ台の大型馬で、パワフルな先行力、並んで強い勝負根性が特徴。「思わぬアクシデント(乗り替わり)はあったけれど、もともと馬場や展開には左右されない利口な馬。鞍上は南関東の名手だし、力通りの結果が出せた」(寺嶋正調教師)。馬自身、いい意味で枯れてきた近況といってよく、寺島師のコメント通り、コース、距離、展開、すべてにオールマイティのイメージが浮かぶ。次走は同舞台のGI「川崎記念=1月28日」が有力。ホッコータルマエ、ワンダーアキュートらにどう食い下がるか。正攻法の競馬ができるタイプで、その点に善戦の期待はつながる。
2着アウトジェネラル。こちらも外々を捲り気味に動いて接戦なら、夢と視界が広がった。昨春「羽田盃」は4馬身差圧勝劇。以後気性難、体質のひ弱さで足踏みしたが、この結果が出れば昨夏~秋の休養(放牧充電)も無駄ではなかった。父アドマイヤドン、中~長距離の本格派。一気に軌道に乗ってほしい。3着スターシップは同路線安定株。上積み疑問の10歳馬だが、息の長い末脚で地力と個性は十分示した。4着タマモクリエイト、5着パワーストラグルも、JRA長距離実績のある馬で、ともに直線確かな末脚をみせている。他力本願、混戦待ちのイメージだが、南関東適性を示した以上、展開ひとつで脈は出る。上昇馬ヴォルテックス(父タヤスツヨシ・14勝)は中団のまま動けず終了。重賞初挑戦、多々あるケースだが、正直どう回顧すべきか言葉に迷う。机上(時計など)では通用しても、いざ現実となると意外なほど壁が高い。エミーズパラダイスは、ひとまず注文通りの逃げを打ったが、1~2着馬に早めに来られ万事休す。牡馬相手の重賞は今後も計算が立たなくなった。