
騎馬による年賀状配達
◆馬産地・浦河では元旦早々より馬関連の行事が二つ組まれた
12年に一度巡ってくる午年の今年、馬産地・浦河では元旦早々より馬関連の行事が二つ組まれた。ひとつは「騎馬による年賀状配達」、もうひとつは恒例の「騎馬参拝」である。
元旦の午前9時半。浦河にある「優駿ビレッジ・アエル」にて、騎馬隊が隊列を組み、敷地内にある乗馬厩舎をスタートし、約1キロ離れたアエルの中庭まで常歩で移動して、待ち受けている年男年女の方々に年賀状を手渡すという儀式である。
この日、あいにく朝から湿り気を含んだ重い雪が降り続き、途中からそれがみぞれになった。べたべたの雪質で、視界も悪く、15分ほどかかってアエル中庭に到着した騎馬隊は全員がずぶ濡れであった。
隊列に参加したのは、浦河ポニー乗馬スポーツ少年団や浦河乗馬クラブの面々の他、池田拓・浦河町長など9騎。乗馬経験のない人は引き手が横について手綱を持つ。一行の中には今週末に京都競馬場で行われるシンザン記念にプレゼンダーとして出張することになっているミスシンザンの小野寺真悠さんの姿もあった。

ミスシンザンの小野寺真悠さん
珍しい馬産地の行事とあって、元旦からアエルには報道陣がつめかけ、隊列の到着を待った。ほぼ予定通りの午前9時45分にアエル中庭に到着した一行は、そこで馬を下り、一例になって待機する12歳から84歳までの11人の年男年女たちに、浦河郵便局長から年賀状が手渡された。
この時期にしては気温が高く、建物の屋根に降り積もった雪が時々バシャッという音を立てて落下してくる。帽子を被っていないと頭部に積もった雪が顔に滴り落ちるような中を、次々に年賀状が手渡されて行く。集まった人々にはその後、甘酒などが振る舞われ、早々に行事が終了した。

浦河郵便局長から年賀状が手渡された
その翌2日。恒例の「騎馬参拝」が浦河の西舎神社を会場に行われた。乗用馬からポニーまで大小合わせて21騎が、BTC~JRA日高育成牧場を経由して約1時間かけて騎馬で隊列を組み、午前10時40分に無事到着。それぞれ騎馬のまま鳥居をくぐり、社殿前で下馬すると、次々に賽銭を投げ入れ、今年の馬事振興と無病息災を祈願した。

恒例の「騎馬参拝」
この伝統行事は今年で105回目を数える。100回目までは海沿いの浦河市街地にある浦河神社にて行われていたが、神社側と騎馬参拝実行委員会の調整が難航し、現在は、ここ西舎神社でのみ行われている。騎馬による101段の石段駆け上がりが“売り物”となっていた浦河神社の騎馬参拝には、現在もなお復活待望論が一部に根強く残っているが、実現させるにはまだまだハードルが高く、問題山積といったところだ。
なお、今年は、午年ということもあり、西舎神社では騎馬参拝の後、餅まきが大々的に行われた。新年早々、幸運を掴もうとばかりに、境内には多くの参拝客が集まり、社殿回廊から勢いよく撒かれる紅白のお餅を熱心に拾う姿が見られた。幸い、天候にも恵まれ、晴天のうちに恒例行事が無事に終わった。

大々的に行われた餅まき
午年の今年こそ、良い年になって欲しいと生産界の人々は強く願っている。ただ、一部には景気回復の兆しがあるものの、全体としてはまだまだ厳しさの方が先に立つ。比較的業績の良かった牧場とそうでない牧場との落差が拡大しているのも気になる。個人的には、昨年1年間に、知人が3人も自ら死を選び亡くなった事実が何とも重く心に残る。いずれも日高の中小生産牧場の当主である。家族経営主体の生産牧場では、一家の大黒柱の死はほぼ廃業を意味することになり、それぞれの牧場の今後が気がかりだ。
5日に始まった今年の中央競馬は、さっそく東西とも、社台ファーム生産馬がそれぞれ外国人騎手を背に優勝した。何やら昨今の競馬の流れを象徴するような年初めとなったが、非社台の、とりわけ日高の生産馬たちの活躍を期待せずにはいられない。それが競馬を盛り上げる最も大きな要素だと信じるからである。