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横山和生騎手(2)『“来てみないか”松永幹師の言葉で栗東へ』

  • 2014年01月13日(月) 12時00分
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和生騎手の活躍を支えたルナ

デビュー4年目を迎えた横山和生騎手。年間勝ち星は1年目4勝、2年目12勝から、3年目の昨年は39勝と大きく飛躍。特に夏の函館開催では14勝を挙げる活躍ぶりで、充実の夏を越えてからは、10月のエーデルワイス賞で重賞初制覇。暮れの愛知杯では14番人気のキャトルフィーユで2着にくるなど、存在感を増しています。今週は和生騎手覚醒の訳に迫ります。(1/6公開Part1の続き、聞き手:赤見千尋)


◆信用してもらった分の責任

赤見 :去年は大活躍でしたね。年間勝利数もぐっと増えましたし、秋には重賞初制覇(エーデルワイス賞)も果たしました。振り返っていかがですか?

和生 :結果だけ見たらね、一昨年に比べたら勝たせてもらいましたし、地方とは言え重賞も獲らせてもらって、それまでの僕からしたら考えられないことだとは思うんですけど。

やっぱり終わってみたら、成績を出せた分良い馬に乗せてもらっていて、それでも結果を出せない馬たちもいたので。皆さんがこれだけ応援してくれているのに、結果が出せずに申し訳なかったです。その辺がまだ、自分に足りないところかなと思いますね。

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和生「自分に足りないところが見えました」


赤見 :いやいや。でも本当に、去年の和生騎手は違うっていう、キタ―っていう感じでしたよ。1年目や2年目と比べて、何が違ったんですかね?

和生 :自分でも本当に、よく分からないんですよね。乗せてもらった馬とか先輩方から教えてもらったことが、自分の中で形になってきたとは思うんですけど。特に自分で意識的に「足をこうしよう」とか変えたことはなくて。逆に考えすぎると、裏目に出てダメになる方が多いですので。

赤見 :それまで積み上げてきたことが開花したんですね。特に目立ったのが夏の函館での活躍でした。夏を挟んで、環境など変わりましたか?

和生 :そうですね。騎乗依頼も増えました。でも、馬も増えた分、自分の体力不足であったり技術不足であったり、そういうことも分かってきたので。悩むことは尽きないですね。

赤見 :逆にそう言う部分が見えてきて。

和生 :はい。多少は信用してもらえたのかなと思うんですけど、信用してもらった分だけ馬の質も良くなったと同時に、乗り難しい馬も増えてきたので。今度はそこを自分でどう乗っていくかっていうのが、自分の中でいろいろ考えるところでした。

赤見 :20の質問でも感じたんですが、競馬に対して結構考えるタイプですよね。2場開催だと関東と関西の人が来ているので、流れの違いを感じるっていうお話(Q15)がすごく面白かったんですけど。やっぱり関東と関西では雰囲気が違いますか?

和生 :そうですね。そんなにこう“うわっ”て思うほどは変わらないですけど、競馬の流れだけを見たら違いますね。まだね、自分も手探りの状態なので分からないですけど、関西の方が結構強気で来るとは思います。

関東は自分が先手を主張するときにしっかり主張していれば、スーっとひいてくれて、2番手3番手に控えてくれたりするんですけど、関西だと「どっちが先につぶれるか」みたいな感じになるので、その辺も見極めないと。例えば自分がひくんだったら早くひかないと中途半端になってしまいますし、行くんだったら徹底的に弱気にならないで行かないといけないですし。まぁ、本質的には同じところなんでしょうけどね。

赤見 :関西が減量騎手をあれだけ乗せるのは、とにかく行ってほしいっていうのが強いところもあるのかもしれないですね。栗東に行かれていましたが、それは勉強したいなっていうのがあってですか?

和生 :そうですね。一昨年の暮れから年明けに行かせてもらったんですけど、松永幹夫先生に「来てみないか」って声をかけていただいて。僕もその頃はあんまり乗る馬もいなくて、どうにかしないといけないなと思っていたので、ちょうどいい機会だし行ってみようって、ご厚意に甘えさせてもらったんです。

関西の方は「いつでもおいでおいで」みたいなのは感じました。関東はどっちかって言うと職人気質な方が多いので、認めてもらえるって言ったら変ですけど、そこまでになるには時間がかかります。その分、一度そういう信頼関係を築くと長く続くんですけどね。

赤見 :栗東に行った経験が生きているなって感じますか?

和生 :いろんな方と関われたのが、すごく大きかったなっていうのはありますね。去年の夏に函館に行った時に、栗東でお世話になった関西の厩舎に顔を出して、乗せてもらったりもしたので。そうやって顔を覚えてもらえたというところは、大きかったと思います。

赤見 :それもあって、函館でのあの活躍につながったんですね。函館から戻ってきた翌週には、京成杯AHでルナに騎乗しました。重賞騎乗2回目で1番人気を任されたのはすごいですね。ルナとはコンビで7戦4勝と好相性。ルナは去年の活躍のきっかけになった馬ですか?

和生 :僕の去年の成績のきっかけになってくれたと思うんですけど、自分がルナに何をしたわけでもないですからね。馬の具合が良くてちょうど成長してきた時にたまたま僕が乗せてもらって、たまたまルナがすごい走りをしてくれただけであって。「俺がルナを変えた」とは思わないですしね。でも逆にね、ルナから教わったことは本当にたくさんあると思います。

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愛知杯では惜しい2着(キャトルフィーユ 桃帽・左)


◆大舞台での騎乗が増えて

赤見 :ルナとの京成杯AH以降、去年は下半期だけで5回も重賞の騎乗機会がありました。暮れの愛知杯は良いレースでしたね。惜しかったですけどね。

和生 :ねぇ…。あそこで勝ち切れないのが僕らしいっていうか(苦笑)。

■愛知杯レース映像

愛知杯レース映像 映像

赤見 :でも14番人気で2着ですから。

和生 :まぁ、僕としてはキャトルフィーユのそれまでのレースを全部見て、「この馬で51キロだったら全然はチャンスはあるな」と思っていたので。あとはいかに自分が平常心で、気負わないで乗れるかだと思っていたので。レースの形としてはね、そんなに悪くはなかったと思うんですけど、結果が出せなかったのでね、角居先生や馬主さんやファンの方には申し訳なかったなと思います。

赤見 :結果出していますよ。

和生 :いや、この世界はやっぱり、勝たなきゃいけないと思いますので。だから、2着は悔しかったですね。終わった後はそうでもなかったんですけど、レースを見直したり、他の方から「惜しかったね」って言ってもらうと、「勝ちたかったな」と思います。

赤見 :そう考えると、エーデルワイス賞で初めて重賞を勝ったことは、自信につながったんじゃないですか?

和生 :あれはもう、本当にホッとしました。負けちゃいけないと思っていたので。うれしいというよりも、ホッとしましたね。

赤見 :特にフクノドリームとは、デビューから一緒に積み重ねてきての重賞ですもんね。

和生 :そうですね。新馬戦は負けてしまったんですけど、馬主さんや杉浦先生が続けて乗せてくださって。チャンスをもらっていたので、結果を出せてよかったなっていうのが素直な気持ちですね。

赤見 :ちなみに、重賞を勝ったのにその後のファンタジーSでノリさんに乗り替わったのは、ショックでしたか?

和生 :ショックと言われたらショックなのかもしれないですけど、やっぱりね、相手が“横山典弘”ですから。それは仕方ないと思いますね。それにルナの時もそうでしたけど、どういう風に乗るのかなっていうのが楽しみでしたね。(Part3へ続く)


■次回予告
祖父も父もジョッキーという和生騎手。小さい頃から競馬関係者に囲まれて育ってきただけに、ジョッキーの道へ進むのは自然な流れ。と思いきや、はじめて打ち明けた時、父・横山典弘騎手は予想外の反応を見せたと言います。次回は、横山親子の知られざる物語をご紹介します。



【横山和生】
1993年3月23日生まれ、茨城県出身。父はJRA騎手の横山典弘、祖父は元JRA騎手の横山富雄、元JRA騎手の横山賀一とJRA調教師の菊沢隆徳が伯父という競馬一族。2011年に競馬学校第27期生として、美浦・勢司和浩厩舎からデビュー。JRA史上初、親子3代での騎手デビューとなった。同期は嶋田純次や杉原誠人ら。同年4月30日、新潟7Rで初勝利。2013年、エーデルワイス賞をフクノドリームで制し、交流重賞初勝利を挙げた。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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