「1000勝トレーナー」松山康調教師にサプライズの花束/トレセン発秘話
◆松山康調教師「競馬は人生の縮図であり、ゴールまで結果不明。その道中に全力を尽くす」
29日早朝の美浦トレセン。史上初のJRA父子1000勝トレーナーとなった松山康久調教師(70)にすてきなサプライズが届けられた。
第1陣の追い切りが終了した午前7時45分、南スタンド2階の調教師席での一幕。二ノ宮敬宇調教師(61)が周囲に声掛けを行い、記録達成を祝して花束を贈呈したのだ。後輩調教師から送られる万雷の拍手…その思いがけぬ祝福に「驚きました。感謝の気持ちでいっぱいです」と松山康師は瞳を潤ませた。
それはそうだろう。日々厳しい勝負でしのぎを削るトレセン内で、周囲が一丸になって個人の祝事を催すなど前代未聞。むろん記者歴20年の宴会野郎にとっても、初めて目にする心温まる光景であった。
「1000勝は1年30勝しても30年以上かかる途方もない数字。もうこれからは出ないでしょう。何より調教師会を役員として長く引っ張ってくれた先輩に、敬意と感謝の意味を込めて渡しました」
“仕掛け人”となった調教師会・関東本部長の二ノ宮師はサプライズの真意を簡潔明瞭に伝えてくれた。
「競馬は人生の縮図であり、ゴールまで結果不明。その道中に全力を尽くす」
これは昨年末に松山康師が主催した謝恩会のパンフレットに自ら記した言葉である。メモリアル達成の背景には、言わずもがな開業から全力で駆け抜けた38年の歴史がある。3冠馬ミスターシービーを手がけた輝かしき時代から西高東低の荒波にもまれた近年まで…。一貫して変わらぬ競馬へのひた向きさこそ、実は「1000」のメモリアル以上に敬意を表すべきものなのかもしれない。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)