新星レディオブオペラが「白井伝説」に新たな1ページを付け加えるか/トレセン発秘話
◆「俺は血統論者」、松本オーナーを驚かせた白井師の手腕
6歳秋にしてダート路線に転向し、JBCスプリント2着→兵庫ゴールドT1着と結果を出したのが根岸Sに出走するドリームバレンチノ。正解を出した路線変更について、報道陣にその手腕を持ち上げられた加用調教師が頭を振ってこんなことを言った。
「そう言ってくれるのはありがたいけど、適性を見抜いていたわけじゃない。(昨秋の)スプリンターズSで掲示板を外した後に、それならダートを試してみようとなっただけ。見いだしていたら、もっと早くからダートを使っているよ」
芝、ダートのどちらにより適性があるかを見抜くことは案外難しい。やむを得ない事情で路線変更したことが結果的に吉と出るケースもあるのだ。ダート歴代最強馬の呼び声も高いあのクロフネも、天皇賞・秋に出走できていれば(当時のマル外2頭枠で除外)、衝撃的な武蔵野S→JCダート(01年)の走りは見られなかっただろう。
芝でもまだ走れる馬をダートに転戦させて成功させた人間もいる。白井調教師は明け4歳になったメイショウボーラーのオーナーに「大きいところを取るならダートです」と進言。それまで芝でそれなりに結果を残していた馬の砂転戦プランをぶち上げ、フェブラリーS(05年)を制した。
「あの時のオーナーのビックリした声は今でも覚えている。俺は血統論者。母系にストームキャットが入っていたし、あの馬はダートならもっと活躍できる自信があった」
それとは逆に武蔵野Sで2着したアグネスデジタルをマイルCSに転戦させて13番人気V(00年)という仰天GI勝利を決めたこともある白井師。その眼力はさすがというほかない。
数々の伝説をつくってきた名トレーナーも定年まで残り1年。最後?に出現した新星レディオブオペラがシルクロードSを勝って高松宮記念の有力候補となるようなら…。「白井伝説」に新たな1ページが付け加えられることになるかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)