◆金盃展望
(2月5日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東SII 2000m)
「金盃」は、今年第58回目を迎えるTCK伝統重賞。記者長く抱いてきたイメージは、立春を過ぎ水ぬるみ、いよいよ大物始動というGI級(南関東)で、実際その優勝馬ファイルには、ロッキータイガー、カウンテスアップ、チャンピオンスター、コンサートボーイ、ボンネビルレコード…錚々たる名前が並ぶ。またぞろ“競馬時代劇”のような話で申しわけない。ただ前述5頭、すべて今でいう統一GI馬であり、JRAアウェーにも確かな実績(ボンネビルはいったん移籍)を作ってきた。もう一つ、馬自身の高い能力はもちろん、各陣営さらに高みをめざそうというチャレンジ精神が存在したこと。昨今の南関東トップホース、交流Gを敬遠(ホームでさえ)する時代とは、まさしく“意気”が違った空気と改めて痛感する。
さておき、先週東京「根岸S」。ジョーメテオ(浦和・小久保智厩舎)は、結果6着ながら久々に南関東ファンへ“元気”と“活気”を届けてくれた。4コーナー15番手、そこから馬群を縫うように伸び、勝者と0.3秒差。上がり3F35秒3はメンバー中No.2で、直線進路がスムーズならあるいは馬券(3着以内)に絡んだ感触もある。同馬は生え抜きではないものの、南関東転入後[1-2-1-2]、前走重賞「ゴールドカップ」を勝っている。記者的にはすでに“同朋”。いずれにせよ、挑戦しなければ何も生まれないこと…それをジョーメテオが改めて示してくれた。実際今回「金盃」1~2着馬には、3月19日船橋「ダイオライト記念=JpnII・2400m」優先出走権が与えられる。笛吹けど躍らず(権利取得馬の回避)…が続けば地方競馬自体の意義が危しく、何より見つめているファン(とりわけライヴ)に対し説得力が出てこない。
(1)…波乱含み。1人気[4-1-1-4]、2人気[4-1-0-5]は合格点以上だが、1→2人気ワンツー決着は、16年コアレスハンター→ナイキゲルマン以来途絶えている。3人気[1-2-1-6]。◎→△あたりが狙いになるか。
(2)…船橋VS大井。船橋=6勝、2着5回、大井=4勝、2着5回。2場断然の数字といえ、1~2着はパーフェクト。唯一22年浦和クレイアートビュンだけが3着に食い込んだ。大井、船橋、ワンツースリーが、過去10年で3度ある。
(3)…リピーター。最もデータがいいのは、7歳=3勝、2着2回。次いで8歳=2勝、2着2回。高齢リピーターが強い傾向で、近年はトーセンルーチェ、ルースリンドが代表格になる。4歳馬は18年メイプルエイト優勝、他2頭が2着。
(4)…末脚勝負。逃げ=0、先行=1、差し=12、追込=7。19年ボンネビルレコード、昨年トーセンルーチェとも4コーナー5番手以降から見事な差し切りを決めている。仮にスローでも、逃げた馬=9、5、4、7、15、16、5、10、6、4着の現実。
※データ推奨馬
◎ツルオカオウジ…大井7歳馬。休み休みで確固とした結果が出ないが、それでもマークした6勝のうち4勝が中距離、3歳時「黒潮盃=大井1800m」快勝からは今回条件がそろっている。道中好位を進み、息の長い脚を使うタイプ。父メイセイオペラ(11年・帝王賞馬)だから、むろん晩成型と判断できる。
☆ ☆
◎アウトジェネラル 57御神本
○トラバージョ 57繁田
▲フォーティファイド 57戸崎
△パワーストラグル 57真島
△スターシップ 57石崎駿
△ツクバチャーム 54吉原
△ツルオカオウジ 56加藤
タマモクリエイト 56見沢
クラーベセクレタ 54的場文
4歳アウトジェネラルに期待する。前走川崎「報知オールスターC=2100m」2着。最後惜しい鼻差だが、相手は全国レベルの実力派オオエライジン。アウト自身、向正面から捲り気味に追い上げ地力とパワーは十分みせた。昨春羽田盃を4馬身差圧勝劇。当時上がり36秒2、G?古馬並みの豪脚で突き抜け、終いまだまだ余裕残し。以後足踏みを心身両面の若さと納得すれば、今後の中~長距離界、一挙に頂点をきわめるイメージがわく。父アドマイヤドンは、JBCクラシックを3~5歳時3連覇。奥行きと成長力は文句なしだ。
相手も同じく4歳トラバージョをとった。昨夏「黒潮盃」「戸塚記念」と重賞連覇。エンジンかかって息の長い末脚があり、大井の中距離は最もフィーリングが合っている。今回放牧明け5か月ぶりだが、快調な追い切りからは九分通り仕上がった。昨年金盃2着、再び調子を上げてきたフォーティファイドは今回戸崎J鞍上で当然有力。かつてJpnIII「白山大賞典」勝ちがあるパワーストラグルも、転入3戦目で好走条件は整っている。以下、勢いのあるツクバチャーム、この路線で安定度が高いスターシップ。データ推奨ツルオカオウジも、すんなり先行馬ペースに乗れれば脈が出る。
◆川崎記念回顧
(1月29日 川崎 サラ4歳以上 定量 JpnI 2100m良)
◎(1)ホッコータルマエ 2分13秒8
△(2)ムスカテール 1/2
○(3)トウショウフリーク 5
▲(4)ランフォルセ 3
(5)サイオン 4
……………
△(6)フリートストリート
△(7)カキツバタロイヤル
単110円 馬複540円 馬単580円 3連複280円 3連単880円
ホッコータルマエが力の競馬でダート最強をダメ押しした。大逃げ(1000m通過61秒6)のトウショウフリークを自ら捕まえにいったこと、岩田康誠・ムスカテールが直後で一分の隙もないレースをしたこと。1/2馬身差は数字上きわどいが、内容自体というならやはり王者にふさわしい。「抜け出して1頭になると、そこで気を抜いてしまう面がある。(詰め寄られたのは)そのせいでしょう。でも馬は文句なく強い。最後振り切ってくれてホッとしてます」(幸英明騎手)。2100m=2分13秒8(昨年ハタノヴァンクール=15秒4)だから時計的にも合格点以上。元よりホッコータルマエ自身、派手なパフォーマンスで後続をちぎるタイプでもない。この日5キロ増。パドックでもハチきれるような馬体をみせ、ジョッキー騎乗とともにグッとみなぎる気合も、最強馬の証しとみえた。
ホッコータルマエはこれで重賞8勝目、GIタイトル5つ目。佐賀、名古屋、阪神、船橋、大井、金沢…に続き、今回川崎コースも完璧な勝ちっぷりでクリアした。あらゆる舞台(1600~2100m)で常に100%燃焼する、心身両面のタフさ、逞しさが何とも凄い。「力通り走れば勝って当然。出し抜けを食う形だけが嫌だったが、いったん(相手を)受け止めてしまえば大丈夫。次への展望も開けてたと思っています」(西浦勝一調教師)。次への展望とはもちろん「ドバイ・ワールドカップ・3月29日=2000m」。ただ陣営はその前、「フェブラリーS・2月23日=東京1600m」も視野に入れるとコメントした。“基礎体力”に優れ、芯の強い同馬だからこそ描けるプラン。日本GI→国際GI連覇などが達成されれば、それこそ不世出の名馬に昇り詰める。
ムスカテール2着。久々(およそ3年ぶり)のダート、それでいて道中スムーズに折り合い、追っての反応も素晴らしかった。芝GII「目黒記念」を制した絶対能力。父マヤノトップガン、奥手の血筋からも新境地といえるだろう。トウショウフリークは前走「名古屋GP」同様、リキみかえった逃げになった。血統(父キングカメハメハ)、パワフルな馬格、走法からも中~長距離自体はこなせるはず。今後この経験がどう生きるか。ランフォルセは終始いいリズムで4~5番手を進み、そこからさっぱり伸びなかった、黒光りのする好馬体は依然目立つものの、現実に今季8歳。昇り目、上積みとなると期待しづらい。サイオンは5着という数字だけの善戦で、今回2100m、特に新味もみられなかった。好位からジリ貧のフリートストリートは、能力、距離適性以前に状態がどうか。