“危険な魅力”バンドワゴンの逃げに注目/トレセン発秘話
◆久保助手「他の馬とはスピードが違う。たぶん今回もハナに行ってしまうやろうね」
距離体系が整備され、「団子のスロー→上がり勝負」が全盛となった現代の日本競馬。そんな中にあって、予定調和をぶち壊すような脚質を持つ馬が現れると妙に心ひかれてしまう。圧倒的なスピードで逃げまくったサイレンススズカ、名刀の切れ味でどんな流れでも追い込んできたデュランダル…。これで大丈夫なのかとハラハラさせるような競馬ぶりは、やはり見る者をひきつけてやまないのだ。
きさらぎ賞に出走するバンドワゴンもそんな個性派の一頭。
これまでの2戦はともに逃げて圧勝。他馬とは一線を画すほどの大きな跳びと力任せに押し切ってしまう圧倒的な競馬ぶりは、魅力的かつデンジャラスだ。
「他の馬とはスピードが違う。たぶん今回もハナに行ってしまうやろうね」とは久保助手。これまでフジヤマケンザン、アグネスワールド、ヴァーミリアンなど数々の名馬の背中を知る腕利きに、「今まで乗ってきて身体能力が一番高かったのはアグネスワールドだけど、バンドワゴンもそれに匹敵するものがあるかもしれない」と言わしめるほどだ。何でも調教では「跳びが大きいから普通の馬が15完歩でいくところをこの馬は10完歩ほどで行ってしまう」(同助手)のだとか。
厩舎に長くいるとテンションが上がって馬房の中で絶えず船ゆすり(体を左右に揺らすこと)をするなどして体を減らしてしまう。だからレースが終わったらすぐに放牧でリセットする。そんな危うさも持っているから余計に魅力的なのかもしれない。
5年前(09年)、このレースを逃げて3馬身半差で圧勝したリーチザクラウンも、このころはテンションが高くて馬体が減りがちになり、抑えが利かずスピード任せに押し切ってしまう競馬を展開していた。それと同じように、バンドワゴンも強烈なスピードで他を圧倒するのか、それとも…。今から日曜が楽しみでならない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
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