◆出走馬たちのその後が示した朝日杯の価値
今週のGIIIきさらぎ賞(京都芝外1800メートル)にはデビュー2戦を圧勝したバンドワゴンがスタンバイ。2戦の合計着差は実に11馬身。希代の快速馬サイレンススズカ級の勝ちっぷりはすでに多くのファンを魅了しているが、実は美浦トレセンにもこの快進撃を注視する人物がいる。
「個人的にはしばらく勝ち進んでいってほしい。なぜって? あの馬がいるおかげで、俺だって気分的に随分と楽だもの」
先週水曜、宴会野郎との飲み会で率直に語ったのは、昨年の最優秀2歳牡馬アジアエクスプレスを管理する手塚貴久調教師(49)。ご存じのファンも多いだろうが、目下3戦3勝のこちらもバンドワゴンと同じ馬場幸夫氏の所有馬。ともにVロード“併走態勢”であれば、自身の管理馬を送り出す際のプレッシャーも軽減されるというわけだ。
一方で手塚師がひそかに注目する別路線も――。それは“朝日杯FS出走馬のその後”である。事あるごとに師が口にするのは「勝ち時計が前日の500万(ひいらぎ賞)より遅い昨年は、低レベルだとか言われたろ? でも実際はどうなんだろう」の言葉だったが…。
まず、その答えは同レース3着ウインフルブルームが次走のGIIIシンザン記念(1月12日)で導いた。結果は2着でも“幻の朝日杯馬”と言われたミッキーアイル(ひいらぎ賞V馬)と0秒1差の接戦(アジアとは朝日杯で0秒2差)。GIの面目を保った結果だったが、今やこれは序章にすぎなかったと言える。
朝日杯4着マイネルディアベルはクロッカスSを、7着プレイアンドリアルはGIII京成杯を堂々制覇。付け加えれば、8着サトノロブロイも福寿草特別(500万)を快勝している。GIII新潟2歳Sの覇者ハープスター同様、当時のライバルたちが身をもって戦いの価値を証明したのである。
「やはりGIにはGIの厳しさがあるってこと。春の路線は始動戦のGIIスプリングS(3月23日=中山芝内1800メートル)の内容次第になるけど、夢が広がれば今秋の米国遠征(ブリーダーズC)も視野に入ってくる。いずれにせよ上手に馬を成長させていきたいね」と語った手塚師。その復帰戦、いよいよもって楽しみである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)