◆芝馬をダートで走れるようにするには 日本の競馬の長い歴史の中でも、芝とダートの両方で頂上決戦に挑める馬は少ない。ではなぜ、クロフネとベルシャザールはそのどちらでも力を発揮することが出来るのだろうか。
「芝とダートでは、肉体的にも精神的にも求められるものが違います。まず肉体ですが、ダートに適しているのは前脚を高く上げる走法、芝では体を低くして走る走法の馬がいい。でも、芝向きの走り方をする馬でもしっかりと筋肉を鍛錬すれば、ダートでも走れるようになりますし、ダート向きの走りをする馬よりもすごいパフォーマンスを発揮できるんです。ダートを使って来ると、筋肉が岩のように盛り上がって来ますよね。芝の場合あれだけ筋肉を付けたら邪魔になるかもしれないくらい、ダートを使ってくると筋肉が太くなって、盛り上がって来るんです。そうすると、歩幅は芝の歩幅で走る、なおかつそれを動かす筋肉は鍛錬されているので、馬体の上の方の関節の可動域が非常に大きく動かせるのです」 芝での走りをベースに、その上にダートの筋肉を付けて行く。今の日本の施設を使えば、ある程度の鍛錬は可能だという。しかし、クロフネとベルシャザールが特別なのは、肉体だけでなく、心の部分が大きいのだ。
「勇気のない馬って言ったら、馬に対して失礼かもしれないけれど、ダートを走る馬は自分が強いと言うことを自負しつつ、勇気がないと。有言実行じゃないとダメなんです。『俺は強い!』って言って、砂を被ったら怯んでるようじゃダメですよね。それは鍛錬ではどうすることも出来ないので。もともと持っている資質が大事なんです」