砂の猛者たちが集結したジャパンカップダートを制して、一気にダート界の頂点に立ったベルシャザール。ダービー3着の実績から舞台を砂に移し、新たな輝きを放ち始めた。伝説の名馬クロフネが歩んだ道を突き進む新ダート王について、松田国英調教師に語ってもらった。(取材・文:赤見千尋)
◆ダービー3着馬がダートへ、選択肢は一つだった 出走馬16頭中9頭がGI馬という驚異的なメンバーが集結した、昨年のジャパンカップダート。この頂上決戦を制し、新ダート王に輝いたのが、芝路線で活躍して来たベルシャザールだ。
■ジャパンカップダート映像
「クロフネという芝でもすごく走った馬が、ダートに出走させたらすごく強かったというのを踏まえてますから、たくさんのGI馬がいる中でも自信がありました。ただ、手足が長い分、阪神の1800mはどうかと思っていたのですが、結果的に2コーナーから3コーナーにかけてポジションを上げて行ったことが勝因でしたね。前の馬を捕まえられたし、後ろから来る馬も封じ込められた。接戦だっただけに、ルメール騎手の絶妙の手腕が物を言いました」▲ホッコータルマエ(左)ワンダーアキュート(右)を抑えてJCダート制覇
手足の長い体、そしてダービー3着という芝での実績。ダートへの転向は、一見突飛なようにも感じる。しかし、この馬を種牡馬にするためには、他に選択肢はなかったという。
「ダービー3着だけでは、種馬にはなれません。大きい所を勝たないと、なかなか難しい。長期休養があり、故障があって、ノドの手術もしました。その中で壊さないように大きい所を勝つとなると、ダートに転換することを受け入れざるを得なかったんです」◆“勝つ”ということと“壊さない”ということ 松田国英調教師は、これまで何頭もの名馬を育てて来た。クロフネ、タニノギムレット、キングカメハメハ、ダイワスカーレット。名前を挙げれば、歴史に残る名馬がズラリと並ぶ。しかし、数々の栄光と同時に、走る馬に対する故障の恐怖を抱えることになった。