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石橋守調教師(4)『調教師になったからには禁止します!』

  • 2014年02月24日(月) 12時00分
おじゃ馬します!
1年間の技術調教師の経験を経て、3月1日、いよいよ「石橋守厩舎」が船出を迎えます。厩舎カラーはグレーとブルー。晴れやかにスタートを切る石橋厩舎に、はたしてどんな未来が待っているのか。最終回の今回は、入厩が決まっているメイショウサムソン産駒への思い、開業に向けて密かに心配していること、調教師としての目標を語ります。(2/17公開Part3の続き、聞き手:東奈緒美)


◆サムソン産駒入厩予定!

:サムソンってどんな性格だったんですか? レースでは引っかかったりしなくて、黙々と仕事をこなすイメージでした。

石橋 :比較的扱いやすかったと思うよ。大人しかったけど、暴れた時は結構力があったね。大人しいって言っても、馬はいつ暴れるか油断できないからね。暴れた時はすごいパワフルだった。あと、最初の頃はちょっとどんくさいっていうのはあったけどね。

:ええ!? 馬でもどんくさいってあるんですね(笑)。

石橋 :うん(笑)。手前の変え方とかでね。そういうのはあったけど、それは使うたびに力がついてきたら解消されていったね。

:今後やっぱり産駒を手掛けたいなっていうのはありますか?

石橋 :実際に預かるんだわ。今のところ2歳が3頭。まぁ、無事に走ってくれたらいいかなと思ってさ。あまり期待をかけても、馬に伝わるので可愛そうじゃない。もちろん期待はしているんだけど、無事に走って成長してくれればいいなって思う。

:サムソンに似ている仔が出てきたら愛着が沸きますね。石橋さん、調教師になられても調教には乗られますか?

石橋 :よく聞かれるんだけど、寒い時は乗りたくないな。寒がりだし(笑)。

:え〜(笑)。

石橋 :っていうのは、やっぱりこれまでは実際に乗って感じてきたのは多々あるけど、調教師になったら外から見る目を養わないといけないなと思って。

牧場に行っても乗れないし、外見から見て「この馬はいいな」って判断しないといけない。そこがまだまだ出来ていないところだから、そこを勉強しないといけないっていうのが現状だね。だから乗らない。

:なるほど。ご自身で禁止にしちゃう感じですね。

石橋 :もちろん、従業員が有給を取ったりした時は手伝うよ。でも、その時は大人しい馬しか乗らない (笑)。

おじゃ馬します!

◆従業員との信頼関係が大切

:調教師さんが怪我したら厩舎が回らないですもんね。そっちの方が大変。馬の見方とかを先輩調教師に教えてもらったりされるんですか?

石橋 :そういうこともあるけど、教えてくれへんで、やっぱり。ある程度のヒントは教えてくれるけど、1から10まで教えてくれるわけじゃないし。(所属の)河内先生は親身に教えてくれます。それでも100%ではないからね。

:開業したらライバルですもんね。

石橋 :そう。まぁ、開業したら自分も成績を残さないとダメだから、そこは必要な時は聞いていかないとね。これまでが騎手だったから、生産界のこととかも分からないし。まぁ、(別の先輩に)聞いたら「好みや」って言われたこともあったわ(笑)。たしかに、好みって出てくるんだけどね。大きい馬が好きな人は、大きい馬ばかり集まったり。

:石橋さんはどういう馬が好みですか?

石橋 :ん〜、どうなんだろな? まだはっきりは分からないかな。去年も牧場に10回くらい行って、いろいろ馬を見ているんだけど。

:調教師さんは結構頻繁に牧場に行かれますもんね。

石橋 :うん。やっぱり牧場には行かないとね。開業してからも行くつもりでいるし。そうなったら、さっきも言ったように調教に乗るっていうのは従業員に任せないといけないからね。そういう意味でも乗るのは任せないと。

:そういう信頼関係作りも大事ですね。

石橋 :これからですけど、それは一番大事なことだし、一番難しいことでもあって。僕は指示を出すとか、そういう経験がないんでね。騎手の時は逆に「お願いします」っていう立場だったから。

:年上の方もいたり、厳しいところも言っていかないといけないし。調教師さんは大変ですね。

石橋 :体力的には騎手の方が大変かもしれないけど、調教師は人との関係がかなりあるからね。生産者、オーナー、従業員、そういうつながりは大事にしないといけないよね。

◆騎手でも調教師でもダービー

:どんな厩舎にしたいというのはありますか?

石橋 :開業したらそういうこともインタビューで聞かれるのかもしれないけど、まだそんな沸かないんだわ。ヤル気がないんじゃないよ(笑)。なんて言うかな、実際になってみないとっていうタイプだから。厩舎ってしいて言えばひとつの会社ですし、その中ではチームワークが大事だと思うしね。そこは大事にしてほしいかな。

:騎手時代の同期の、須貝尚介調教師は意識されますか?

石橋 :それはよく言われるんだけどね。成績を見たらすごいしね。彼は彼なりに頑張っているっていうことですよね。でも、そこは左右されずに。「自分を持っていないとアカン」っていう気持ちがあるので。そこは気にしたらダメなところだし。それは彼だけじゃなくてね。

:ライバルは他にもたくさんですもんね。同じ騎手時代の同期では、柴田善臣さんもいらっしゃいますよね。

石橋 :この間、(福永)祐一の結婚式で久しぶりに会って、その後に飲んだんだけど、頑張っているよね。あれだけ乗れるっていうのはすごいと思う。今は若くして騎手を辞める人も多いじゃないですか。そういう中で年齢がいってもやれるっていうところを、若い子に見せてほしいしね。

:同じタイミングで厩舎を開業される飯田祐史調教師は、騎手時代の8年後輩。

石橋 :うん。騎手では後輩だったけど、今度は一緒だからね。彼はお父さんの(飯田明弘厩舎)厩舎を引き継ぐんだけど、プレッシャーもあるだろうし、それはそれで大変なところもあると思うのでね。一緒に受かって一緒に開業なので、お互いに良い成績を出したいね。

:石橋さん、営業とかはいかがですか? それがまた調教師さんの仕事になってきますよね。

石橋 :そうそう、それも仕事。よう知ってるな(笑)。営業はしないといけないよね。

:こういうインタビューを受ける機会も増えるでしょうし。

石橋 :そうだね。このインタビューは全然平気だけど、やっぱり馬主さんにもしっかりアピールしないとね。それに、オーナーが大事なお金を出して買った馬を預かるわけだから、そういう意味でも努力をしないといけない。そういうのは思っています。

おじゃ馬します!

:最後に、調教師としての目標レースもお聞きしたいです。騎手の時はダービーということでしたが。

石橋 :やっぱり、ダービーを獲りたいですね。騎手でダービーを獲って、調教師でもダービーを。それはひとつの夢。夢って言うか目標だね。最大目標。だけど、何より馬に愛情を持って仕事をしていきたいなって。それはあります。

:ファンの多い石橋さんですから、開業したらファンの方が喜びそうです。

石橋 :そうやな。あんまり派手に書かんといて。プレッシャーがかかるから(笑)。(了)


【石橋守】
1966年10月23日生まれ。厩務員である父のもと滋賀県で育ち、競馬学校第1期生として1985年に騎手デビュー。同期は柴田善臣、須貝尚介ら。初騎乗を初勝利で飾り、1992年にはミスタースペインで京阪杯・高松宮杯を制して重賞制覇。2006年、メイショウサムソンに騎乗し、皐月賞とダービーの二冠に輝く。2013年2月末で騎手を引退し、調教師に転身。JRA通算473勝、うち重賞15勝。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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