◆フジノウェーブ記念展望
(2月26日 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1400m)
旧「東京スプリング盃=22〜25年」。同レース4連覇の偉業を達成したフジノウェーブ、その引退、死亡(去勢手術中・転倒骨折)を受け、今年から同馬冠レースにタイトルが改称された。同一重賞連覇は地方競馬の場合しばしばあるが(シバフィルドー=道営・クイーンカップ6連覇など)、それでも一応のレベルを備えオープン馬の新陳代謝が早い南関東では、4連覇となると現実に例がない。いずれにせよフジノウェーブは、まさしく“奇跡の馬”と呼べるだろう。2度あることは3度あるとよく言うが、3度あることは4度あるとはあまり言わない。それを当然のようにやってのけた。
同馬の凄さ。スプリング盃4連覇を8〜11歳で達成したこと、すべて極量59キロを背負ったこと。22年・8歳時こそ1番人気だったが、以後は3年とも3番人気と半信半疑の評価だった。しかしそのたび「もう(下り坂)は、まだ(健在)…」を実証している。改めて昨年スプリング盃、VTRを回してみた。道中内ラチ沿いで脚をタメ、直線あと1ハロン、GOサインと同時に弾けるように伸びている。鞍上・御神本J、いかにも人馬一体の信頼感がみてとれた。「(死亡の報が)急すぎて、心の整理がつかないです。長い競走馬生活が終わってゆっくりしてほしかったのに本当に悲しい」。“奇跡の馬”、その言葉を最も実感しているのが、やはり彼であったと思う。
名馬の称号。フジノウェーブの場合、白い稲妻、芦毛の刺客…ルックスにもレースぶりにもインパクトと個性があふれ、大井冠重賞になって不思議ない“品格”を持っている。「ウチの厩舎で9年間、活躍して盛り上げて、感謝としか言葉がない。どうか安らかに眠ってください…」(高橋三郎調教師)。もう一つ。今思えば、同馬は07年・5歳時、大井「JBCスプリント」を勝っており、それはJBCにおける地方馬初の快挙だった。顔ぶれ、展開、好騎乗(御神本J)、さまざま恵まれた面はあったにせよ、地方びいき(担当記者)としては、改めて元気とため息が同時に出る。
☆ ☆
◎ジョーメテオ 58坂井
○ガンマーバースト 58森
▲ソルテ 58和田
△ジェネラルグラント 58石崎駿
△エーシンジェイワン 57御神本
△コウギョウダグラス 55柏木
△ハードデイズナイト 56山崎誠
アイディンパワー 57的場文
ピエールタイガー 58真島
サイオン 57川島
ジョーメテオに期待する。前々走「ゴールドC=浦和1500m」圧勝し南関東重賞初制覇。しかしより以上に価値を感じるのが続く東京「根岸S」で、当時4コーナー15番手、そこから馬群を縫うように追い上げ、結果6着ながら最後勝ち馬と0.3秒差だった。強豪ぞろいのアウェーGIII、近年さっぱり精彩がない(遠征への意欲も含め)地方勢を思うと、これは“快挙”に近いだろう。1400m〜1600m、明確になった距離適性。大井コースも、昨夏「サンタアニタT」、セイントメモリーの1馬身差2着だから減点がない。
ガンマーバーストは転入後[4-0-1-1]。昨秋「埼玉栄冠賞」→「勝島王冠」、重賞連覇を飾っている。水が合う南関東で文字通り絶頂期。JRA時1400m2勝の実績からは今回さらに上積みもイメージできる。ソルテ、ジェネラルグラントは、ともにクラシック実績がある明け4歳。両頭再び勢いをつけての登場で、あとは今回1400m選択がどう出るか。切れ味で前者、総合力とセンスで後者。この比較は迷わされる。
以下、JRA5勝、前走「船橋記念」2着で能力と地方適性をみせたエーシンジェイワン、前走TR「ウインタースプリント」を豪快に差し切ったコウギョウダグラス、今回ノンプレッシャーで乗れるハードデイズナイトと序列をつけた。アイディンパワーは置かれるズブさ、ピエールタイガーは行き切れないとモロい単調さ、サイオンはジリ脚…にそれぞれ難点。ともあれ新生「フジノウェーブ記念」、キャリアと個性、にぎやか、さまざまな顔ぶれがそろったことは、幸先がよかったと考えたい。
◆ユングフラウ賞回顧
(2月19日 浦和 サラ3歳牝馬 別定 南関東SII 1400m稍重)
◎(1)ノットオーソリティ 1分29秒3
(2)シャークファング 2
○(3)ブルーセレブ 5
(4)マリアンズクック 2
(5)ペパーミントリボン 3/4
……………
△(6)コマンドゥールキイ
△(7)ラブミーブルー
△(8)イグレシアス
△(11)ストロベリーラン
▲ タントタント 競走除外
単160円 馬複17360円 馬単18240円 3連複12360円 3連単105340円
ノットオーソリティが能力とセンス、さらに上昇度を改めてアピールした。前走時(2歳優駿牝馬)とは一転の好スタート。先行争いをごく自然に捌いてマイペース。直線並んできたシャークファングを余裕十分に突き放した。「馬の気持ちに合わせてハナを切った。終始手応えがよかったし力通りの結果でしょう。まだまだ上積みが期待できる」(石崎駿騎手)。1400m=1分29秒3も近年の馬場とすると合格点(昨年カイカヨソウ=30秒4)。本番桜花賞(3月27日・浦和1600m)へ向け、左回りを克服した点も意味が大きい。
ノットオーソリティは、スウェプトオーヴァーボード×フレンドリーマナー(サンデーサイレンス)の血統背景。道営4戦3勝、GIIIエーデルワイス賞4着。南関初戦を致命的な出遅れで落としたものの、この日の内容はさすがであり完璧だった。「中間順調に稽古が積めてイメージ通りの勝ちっぷり。鞍上も手の内に入れてきた」(川島正行調教師)。同師はユングフラウ賞、23〜26年4連覇の偉業達成。記者の思うノットオーソリティ、現時点“絶対能力”は、クラーベセクレタ、カイカヨソウのちょうど中間あたりだろうか。ゆったり伸びやかな馬体と走法が大きな魅力。ただ川島師は勝利コメント「もう少し肉がついてほしい」とつけ加えた。
伏兵シャークファング2着。大井戦歴はコマンドゥールキイ(4人気)と差がないだけに、終わってみれば盲点だった。首が高くややぎこちないフォームだが、反面いったん行き脚がついてパワーがある。左回り適性、今年乗れている矢野騎手の好プレーもおそらく大きい。ブルーセレブ3着はひとまず想定内ということか。初コース1400mで追い通しの追走。それでも終いしっかり伸びて地力と個性は十分示した。4着マリアンズクック、5着ペパーミントリボンとも人気薄。道中先行馬ペースを思うと四角9番手、上がり38秒9(メンバー中No.2)のマリアンズが評価できる。オーソリティの相手格(人気上)が振るわなかった。中で本番巻き返しがあればコマンドゥールキイ、ストロベリーラン。ともに浦和初コースで試走含みのレースとみえた。