◆エンプレス杯(3月5日 川崎 サラ4歳以上牝馬 別定 JpnII 2100m)
「エンプレス杯」は、平成9年統一GII昇格(旧名キヨフジ記念)。以後17年間、同条件(別定)、同距離(2000~2100m)で施行されてきた。毎年ファイルをめくり、そのたび改めて思うこと。エンプレス杯の歴史は、おおむね名牝の歴史と一致する。黎明期7~8年をホクトベガが圧勝(大差・8馬身)、9~10年シルクフェニックス、11~12年ファストフレンドが、それぞれ鮮やかな連覇をとげた。ジーナフォンテン、プルザトリガー、ローレルアンジュ、地方勢が勝ったときは確かに番狂わせだが(配当面で)、レースぶり、時計など、ごく客観的に比較すれば、フロックの見方も当たらない。元よりダート2100mは牝馬とすると過酷な舞台。道中スムーズに折り合える賢さ、最後もうひと脚使う持久力、勝負根性が同時に問われる。
ともあれ女傑メーデイアが、1月22日大井「TCK女王盃」、見事なフィナーレを飾って引退(北海道・追分Fで繁殖入り)する。当然ここは仕切り直し、新ヒロインを模索するレースとなった。メーデイアは交流牝馬G=6戦6勝。しかし「エンプレス杯」だけは出走機会がなく、このあたり何やら皮肉な巡り合わせだったともいえるだろう。もう一つ、一昨年「エンプレス杯」は大雪による開催中止。当時絶頂期にあった、ミラクルレジェンドVSクラーベセクレタ…の好カードが流れている。ご存知の通りクラーべは、以後不可思議なスランプに陥りそのまま今回ラストラン。牝馬とはやはり、ある意味あやうくせつない、そんな存在でもあるとは改めて思う。
(1)…上位拮抗。1人気[3-2-2-2]、2人気[0-1-3-5]、3人気[3-4-1-1]。総じて堅めだが、3人気が、勝率、連対率とも1人気を凌ぐ点は特筆できる。馬単なら▲→◎、△→◎あたりが妙味になるか。
(2)…JRA優勢。JRA=6勝、2着7回、3着5回。絶対優位は動かないが、船橋=3勝、2着2回、3着1回も健闘の数字といえる。JRA1~3着独占は23年1度だけ。東海所属馬(名古屋・笠松)も3着が2度ある。
(3)…4歳馬注意。最もアベレージがいいのは、6歳=3勝、2着3回、3着5回だが、7歳は3勝、5歳が2勝をあげている。16年以降勝ち星がない4歳も、2着5回、3着2回。馬券的には案外盲点になるケースが多い。
(4)…先行型。逃げ=6、先行=5、差し=6、追込=1。道中スローは川崎2100mの定番で、4コーナー5番手以降からの連対は23年ラヴェリータ以降例がない。昨年もマイペースで逃げたエミーズパラダイス2着。
※データ推奨馬
◎アムールポエジー…昨春「関東オークス」を圧勝(3コーナー先頭)した4歳馬。関東オークス=エンプレス杯の結びつきは深く、過去レマーズガール、トーセンジョウオー、ラヴェリータがこの2重賞を制している。当時5馬身差をつけたオメガインベガスが、今季船橋トレード、いきなり「報知グランプリC」を勝った比較からも潜在能力はかなり高い。岩田騎手はエンプレス杯、20年サヨウナラ、25年ミラクルレジェンドと2勝。
☆ ☆
◎アクティビューティ 55吉田隼
○サンビスタ 55バルジュー
▲ワイルドフラッパー 55Cデムーロ
△ビタースウィート 55佐藤博
△エミーズパラダイス 55石崎駿
△アムールポエジー 56岩田
△クラーベセクレタ 55御神本
アクティビューティの巻き返しを狙った。前走TCK女王盃4着、築きあげてきた牝馬No.2から転落の屈辱。しかし1800m1分51秒台の決着はいかにも速く、馬場と展開、大きく響いた敗戦と納得したい。昨暮れ船橋「クイーン賞」は2番手から楽々抜け出す横綱相撲。絶対女王メーデイアに3度迫った実績からも、2100mのパワー勝負なら一転完全燃焼がイメージできる。父バゴは仏・凱旋門賞ウィナー。アクティ自身500キロ超の大型馬で、まだ上積みもありそうだ。
ワイルドフラッパーが今回おそらく1番人気。確かに前走TCK女王盃、渾身の逃げでメーデイアをひやりとさせたスピードは牝馬Gで群を抜く。通算[5-4-0-5]、5歳の若さ。ただ記者的には、やや気難しいタイプ(パドックの仕草など)という印象が拭えず、経験、実績のない左回りであえて一つ評価を下げた。もっともサンビスタも同様の背景で、JRAダート5勝、ここまで戦歴からはスピード型。父スズカマンボ(京都競馬場での天皇賞・春勝ち)のスタミナと成長力が、今回再び問われてくる。南関勢、ビタースウィート、エミーズパラダイスは、前者混戦、後者一人旅…の際に、わずかながら脈が出る。
◆フジノウェーブ記念
(2月26日 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1400m良)
△(1)ジェネラルグラント 1分25秒1
▲(2)ソルテ 3/4
(3)サイオン 4
◎(4)ジョーメテオ 1.1/2
○(5)ガンマーバースト 1/2
……………………
(6)コアレスピューマ
(7)アイディンパワー
△(8)コウギョウダグラス
△(10)ハードデイズナイト
△ エーシンジェイワン 競走除外
単670円 馬複1470円 馬単2820円 3連複9390円 3連単38240円
ジェネラルグラントが2番手キープから直線先頭。横綱相撲で押し切った。小細工なし、文字通り正攻法のレースぶり。1コーナーポケット発走、少なからずロスのある外枠(13番)も含め、今回胸が張れる勝利といえる。「本来スピード型だけに1400mは合うと思っていた。もともと能力自体が高い馬。視界の広がる一戦です」(石崎駿騎手)。1400m1分25秒1も文句なく水準以上(昨年フジノウェーブ=26秒8)。何よりタイトル改称の第1回、気鋭の4歳馬が勝ったことは意味が大きい。
ジェネラルグラントは、ロージズインメイ×スペシャルウィークの血統背景。昨春京浜盃(1700m)を制し、羽田盃(1800m)→東京ダービー(2000m)を4、2着。どこかジリ貧、詰めが甘くみえたのは、今思えば距離が微妙に長かったためとと納得できる。「レース前(古馬相手は)少しハードルが高い気もしていたが、思った以上によく走った。馬体が充実してきたし精神的にも成長している(出川克己調教師)。慎重でなる同師のこと、次走未定とされたが、記者自身は最終目標GI「かしわ記念=船橋1600m」とイメージしたい。
4歳ワンツー。2着ソルテ3/4馬身差は確かに惜しいが、道中スムーズに折り合いGOサインから確かな伸び。こちらも1400m~マイル、適条件を確定させた点で収穫が大きい。3着サイオンは先行馬ペースに乗って100%のレースとみえた。ジリ脚の印象は払拭できず、今後昇り目となると期待しづらい。◎ジョーメテオ4着。終始大外を回って上がり36秒6は地力だが(メンバー中No.2)、4コーナー12番手、いかにも位置取りが悪すぎた。不器用さに加えカカる気性。評価(予想)が難しいタイプではやはりある。ガンマーバーストは好位から直線失速。3か月ぶり、パドックの馬体、気配もひと息冴えず、今回は結果的に試走だったか。上昇馬コウギョウライトは依然重賞の壁が破れない。ハードデイズナイトは牝馬ゆえ、ひとまず“夏型”と判断しておく。