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ビッグマッチの予感

  • 2003年10月20日(月) 18時01分
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 10月13日、盛岡「南部杯」をアドマイヤドンが圧勝。これで「ロード・トゥ・JBC」、一連の指定レースがすべて終わった。個人的には南関東馬の健闘が嬉しいが、それでもごく客観的にみて、前2年と較べ比較にならないほど濃密なトライアルになったと思う。人気馬、注目馬がおおむね期待通りのレースをしたこと。そしてその大半が本番JBCに出てくること。11月3日は盛り上がりそうだ。馬券の売り上げはともかく、ファンにとって面白い、わくわくする顔ぶれが揃うのは間違いない。

日本テレビ杯(船橋・1800m)
(1)スターキングマン 武豊
(2)アグネスデジタル 四位

ダービーグランプリ(盛岡・2000m)
(1)ユートピア 安藤勝
(2)ビッグウルフ 武豊

東京盃(大井・1190m)
(1)ハタノアドニス 内田博
(2)サウスヴィグラス 柴田善

南部杯(盛岡・1600m)
(1)アドマイヤドン 安藤勝
(2)コアレスハンター 内田博

 春の総決算「帝王賞」で、ゴールドアリュールがよもやの大敗。ぜん鳴症(ノド鳴り)発症で一挙に引退という事態になったが、競馬とはやはり、よくも悪くも一寸先すら見えないものだ。嬉しい誤算。新スターが次から次へと登場し、むしろ春よりずっと興味をそそる勢力地図が新しく構築された。個々の年齢を含め、世代交代、新旧交代では必ずしもないだろう。今現在、「旬」を迎えた馬が、頂点に昇るという現象。ダート統一グレード、ある意味、ひとつ成熟期に達したといえるのかもしれない。

 ただし、トライアル4レースの結果を改めて並べると、本番JBCにまだ足りない、貧弱な部分もみえてくる。「マイル」部門がないこと。1190m(1200m)と2000m、どちらを選ぶかというだけでは選択基準がいかにも狭い。例えばコアレスハンターは、100%燃焼した南部杯2着。せっかく全国区にメドをつけても、次走を迷うことになる。ユートピアあたりも短距離か、選手権距離か決断が難しい。南関東ならエスプリシーズもそうだろう。日本ダート界も、さまざまな変遷を経てかなり層が厚くなった。そこに「JBC・マイル」があれば、メンバーはおそらくさらに充実する。

 ☆ ☆ ☆

 その翌日行われた「白山大賞典」は、イングランディーレがズバ抜けた強さで勝った。道中3番手、持ったままレースを進め、直線軽く気合をつけるとあとは独走になった。最後後続に6馬身差。前走ブリーダーズGCでディーエスサンダーに競り勝ち、芝ダート問わずステイヤー新王者誕生の予感はあったが、この日はそのダメ押しだった。金沢2100m、折り合いの点でもパワーの点でも完璧というしかない。昨今珍しくなった長距離走者だけに、今後の進路が興味津々。その気ならJBCクラシックも出走可能で、さて陣営が次への舵をどうとるか。さらに欲をいえば「JBC・ステイヤー」の部門があれば面白かった。

 ゴール前、尾を苦しげに振りながら2着を死守したハギノハイグレイドは、7か月ぶり9キロ増でひとまず底力とみるべきだろう。3、4着マッキーローレル、カシノオオサマは、長距離適性を確認し、同時に全国レベルへも自信が出たか。スナークレイアースはスタートひと息で、終始流れに乗れなかった。前年の覇者。しかし正直決定打のないタイプで、今年は絶対能力そのものが、勝ち馬の水準に届かなかった気もする。カイジンクンは好枠から思い切りよく先手をとり、しかし勝負どころでハギノハイグレイドにインをすくわれ終了した。それでも存在感を示したレースとはいえるだろう。何より経験が収穫。統一Gでも次はもう少し善戦が期待できる。

 少し前、某競馬関係のメールマガジンで、なるほどというご意見を読んだ。「統一G3はハンデ戦に…」という提言。確かに現実問題としては説得力がある。G1本体、それに付随するトライアルは従来の定量戦でいくべきだが、いわば地方巡業のようなG3についてはその限りでもない。

 たとえば9月30日、上山「さくらんぼ記念」。ビワシンセイキ57キロ、カガヤキローマン58キロは、理屈としては正当でも、馬券を買うファンにとっては興趣がわかない。「マルカセンリョウが51キロなら、誰でももしや…とか思うでしょう」、そうコラム氏は書いていた。ごもっとも。

 この場合、ビワシンセイキのハンデを重くする必要はまったくない。そうであればスターホースの参入を阻むことになってしまう。代わりに、実績のない、近況が冴えない馬に対し軽量の恩典を与えること。正当なハンデを、誰がどういう基準でどうつけるか。むろん難しい問題だが、それはひとつ“決めごと”というしかない。

 地方=JRAの交流戦。ホクトベガがオラが町の競馬場に現われ、それだけで地元ファンが満足した時代はどうやら終わりつつある。競馬とはやはり、馬券を買う、それを推理する時点で周囲をみなワクワクさせ、それで初めて成功だろう。今後に柔軟な対応を期待したい。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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