鹿戸雄一調教師
王者ロードカナロアが去った後、混戦の様相を呈しているスプリント界に彗星のごとく登場したのがスマートオリオンだ。1600万下のアクアマリンS(芝1200m)を勝った翌週、名手・横山典弘騎手の導きにより、オーシャンS(GIII・芝1200m)を見事に制した新星が、初めての挑戦となるGIの大舞台に挑む。中山の1200m巧者のイメージが強い同馬だが、中京の左回りについての見解や、連闘から中2週で臨む高松宮記念に向けての調整過程、スマートオリオンのこれまでの軌跡等を、管理する鹿戸雄一調教師に聞いた。(取材・文:佐々木 祥恵)
◆素質開花につながたった3歳の夏休み デビューは2歳の8月と早かった。
「ゲート試験もすぐに受かりましたし、稽古でも良い動きをしていましたので、新潟の新馬戦に使いました。普段は大丈夫でしたが、レースで両前脚にソエが出てしまい、それで休ませました」(鹿戸雄一調教師)その後も、ソエ以外にも腰がフラついたりと弱さを見せて、思い通りにレースを使えない時期が続いた。
「皇成(三浦騎手)も苦労して稽古をつけていましたが、背中が良くて、良いモノは持っていると言ってくれました。でも、なかなか馬がしっかりしてきませんでしたね」 2歳時は新馬戦を含めて2戦したが、掲示板にも載れずに3歳を迎える。3歳初戦の3月の中山芝1800mで5着になり、続く4月の東京の芝1400m戦でも5着と、連続して掲示板に載った。
「4月の東京で良いレースをしてくれたんですよね。これを見て、馬さえ良くなれば未勝利は勝てるだろうと思いました。オーナーとも相談して、この後思いっきり休ませて、牧場で一からやり直してもらいました」 5着に入って優先出走権を得た場合は、続けて使いたくなっても不思議ではないが、馬の成長のために休ませるという決断を下したことが、スマートオリオンのその後を決定付けたと言っても過言ではない。そして照準を合わせたのは、北海道(函館)開催の後半の未勝利戦だった。
鋭気を養ったスマートオリオンが、函館の未勝利戦で狙い通りに初勝利を飾ったのは8月末のことだった。勢いに乗った同馬は