◆マリーンカップ展望
(4月9日 船橋 サラ3歳以上牝馬 別定 JpnIII 1600m)
「マリーンカップ」は平成9年、交流G昇格。今年第17回目(23年・震災中止)を迎える。地方勢(南関東)5頭優勝は他交流Gと比較して確かに健闘。ただ生え抜き優勝となると15年ラヴァリーフリッグ以来途絶えており、16年ベルモントビーチ、19年トーセンジョウオーなど、JRA出身転入馬だから数字通りの評価は正直しづらい。実際、近年好勝負をしたといえるのは、一昨年クラーベセクレタ(ミラクルレジェンドに1.1/2差の2着)だけ。あきらめてはいけない、いけないのだが、今回メンバーを見渡すとやはり深いため息が出てしまう。
ともあれマリーンカップの歴史と傾向。実績より勢い、成長株の出世レースとなることだろう。例えば11年ファストフレンド、13〜14年プリエミネンス。とりわけ前者はこのレースで初タイトル。以後、帝王賞→東京大賞典、堂々たるGIウィナーに成長した。牝馬G戦線、改めて現状をおさらいする。ミラクルレジェンド、クラーベセクレタ、さらにメーデイア引退。新星誕生の期待が高まっている。そこでワイルドフラッパー筆頭に何とも厚いJRA勢、対して挑戦の意志さえおぼつかない地方勢。繰り返しで恐縮だが、実際これでは交流Gの意味がない。
(1)…小波乱。1人気[5-2-2-0]は信頼できるが、2人気[0-2-3-4]と期待に反し、3人気も[0-3-1-5]と勝ち切れない。1→2人気の決着は過去9年で2度。4〜6人気、予想紙でいう△級が穴になる。
(2)…JRA優位。JRA=7勝、2着7回、3着7回と大きくリード。ワンツースリーの決着が4度ある。船橋=1勝、川崎=1勝は、トーセンジョウオー、ベルモントビーチ、いずれもJRA転入馬。地方他地区馬は18年レイナワルツ(東海)4着が最高。
(3)…成長株。5歳=3勝、2着2回、6歳=3勝、2着1回と好成績。ただ、4歳=1勝、2着6回も特筆でき、総じて成長株が活躍する。20〜21年、メイショウバトラーが8〜9歳時に連覇したが、これはどうやらまれなケースか。
(4)…差し優勢。逃げ=1、先行=5、差し11、追込=1。例年マイル戦らしく厳しい流れで好位〜中団からの差しが主流になる。過去9年中、6度まで1600m=40秒台を切る速い決着。今年も開催前相当量の降雨があり、時計が必要。
※データ推奨馬
◎サウンドリアーナ…昨春「端午S」→「ユニコーンS」で、文字通りの鬼脚をみせた4歳馬。父ケイムホーム、血統的にもダート1600mベストははっきりしている。前走久々を叩き上積み必至。厳しい流れの時計勝負はうってつけだ。武豊騎手は20年メイショウバトラー優勝、16年レマーズガール2着。
☆ ☆
◎ワイルドフラッパー 57福永
○サウンドリアーナ 55武豊
▲アクティビューティ 56吉田隼
△サマリーズ 55藤岡佑
△カイカヨソウ 55今野
ワイルドフラッパーは今後順調なら、しばらく“絶対女王”の予感が浮かぶ。前走GII「エンプレス杯」を11馬身差の独走劇。2100m=2分12秒1、牡馬混合GI「川崎記念」を大きく凌ぐ快時計(ホッコータルマエ=13秒8)で駆け抜け、最後まだまだ伸びる勢いがあった。規格外の速さと強さ。レース直後、松田国英調教師「前へ行って速い脚を使う、底知れないエンジンを持っている」まさしくその言葉通りというべきだろう。父は米GI4勝(BCクラシックなど)のスーパーホース。フラッパー自身も過去1400m2勝など距離万能とイメージできる。どう勝つかが今回焦点。船橋初コースなどとるに足らない。
サウンドリアーナは、前述通り昨春ダート王道といえる「端午S」「ユニコーンS」で驚異的な末脚をみせつけた。以後休養で一頓挫したが、今回完調が見込める叩き2戦目。フラッパーが前走同様自然流の先行(向正面捲り)なら、展開面の味方もつく。実績、安定感はアクティビューティだが、昨季メーデイア、今季フラッパー、女傑級とは能力自体にはっきりした壁があり、正直新鮮味を感じない。サマリーズの場合、直後を進むフラッパーがどこで動くか、その一点が明暗を分けるだろう。左回り1600mは「全日本2歳優駿」勝ちなど最もフィーリングが合っている。ポスト・クラーベセクレタをめざすカイカヨソウは、パワーと決め脚、もう一段進境が絶対条件。記者自身は3連単、2→9→11を買って観戦する。
◆東京スプリント回顧
(4月2日 大井 サラ4歳以上 別定 JpnIII 1200m良)
◎(1)ノーザンリバー 1分10秒7
○(2)セイクリムズン 3
(3)アルゴリズム 2.1/2
(4)アイディンパワー 1/2
△(5)ジェネラルグラント 鼻
……………
△(6)セレスハント
(7)ナイキマドリード
(8)コウギョウダグラス
▲(9)セイントメモリー
△(10)ティアップワイルド
△(15)パドトロワ
単150円 馬複190円 馬単280円 3連複7540円 3連単17130円
ノーザンリバーが圧勝した。好スタートから素早く中団前めをキープ。終始スムーズな折り合いでレースぶりに無駄とか隙がまったくなかった。4コーナー5番手、一瞬前が窮屈になったものの、鞍上はそこから外に持ち出す余裕の騎乗。ラスト1Fの切れは文字通り次元が違った。あっという間の3馬身差。接戦が大半の短距離Gではめったに見られないシーンでもあったと思う。「返し馬から手応えを感じていたし自信を持って乗りました。最後まで余裕があった」(蛯名騎手)。1200m=1分10秒7は過去6年中No.2。見た目のインパクトに加え、数字上もその強さを裏書きする。
ノーザンリバーはJRA6勝、昨暮れGIII「カペラS」を制した6歳牡馬。父アグネスタキオン、いかにもそれらしい瞬発力とセンスが特長で、デビューから一貫大事に使われてきたぶん、まだまだ伸びしろを残している。「馬に実が入って安定した競馬ができる。この結果が出れば選択肢が広がるでしょう」(浅見調教師)。さまざまな状況で常に落ち着き払っていること、それでいてGOサインからの反応が素晴らしいこと。以後ローテ未定とされたが、同馬自身、本質距離はオールマイティだろう。「性格がいい。いつも素直で、(自分の)手綱通り走ってくれる」(蛯名騎手)。この路線、JRA勢強力は論を待たない。それでも今回ノーザンリバーは、地方適性を含め出色の内容だった。
セイクリムズンは前2年通り自身の時計だけ走って連対確保。直線弾けるように伸びたレースぶりからも衰えはない。あとは成長株との力関係。今回のようにノーザンリバー級の逸材が出てくると、さすがに勢いで一歩譲る。アルゴリズム3着、アイディンパワー4着は、いずれも大勢が決したあと混戦に乗じた格好で、正直大きな価値は感じられない。ジェネラルグラントは好位から捲る正攻法で最後5着。短〜マイル〜中距離、ひとまずすべてを経験させ、今後どの部門で円熟するか。現時点、まだ試行錯誤が続いている。セイントメモリーは中団のまま不完全燃焼、結果的に試走で終わった。こちらは5月船橋「かしわ記念」が目標か。昨年NAR最優秀古馬。パドックでみた馬体、気合からはもうひと花がイメージできる。