中央のクラシックを初めて手中にした安藤勝己騎手の、胸中の感激を抑えたインタビューが印象に残りました。3000mという未知の領域を戦った菊花賞。ザッツザプレンティの手綱がめぐってきたのが皐月賞からで、弥生賞で騎乗した武豊騎手が後方から追い込む策を取って6着、落鉄があったとはいえ、それほど末脚が切れるイメージではありませんでした。父ダンスインザダークとは異なるタイプ、そういう評価だったと思います。
バトンタッチされた安藤騎手は、皐月賞8着、ダービー3着、そして神戸新聞杯5着と戦う中で、少しずつこの馬の雰囲気をつかんでいったことでしょう。
いずれのレースも勝ち切る力に欠けているという印象でしたが、3000mを戦う前、ゴールに向かうザッツザプレンティにひとつの確信は持てたようです。抱負を語るインタビューで、直線早目に動いても最後に脚があがったという思いはない。思い切ったレースをしても距離は持つのではないかと語っていました。
大一番を前に、自分の騎乗する馬をどれほどつかみ切っているかはとても大切なことで、レースでの迷いを招かずに済みます。
安藤騎手の菊花賞での積極的な騎乗は、そういうところから来ていました。
菊花賞馬の父の仔なら、3000mを戦い抜くスタミナはあるでしょう。あとはどう戦うかだけです。あの4角先頭という戦法は、悔いを残さないための、ザッツザプレンティの最善な方法でした。一点の迷いのない戦い方、それが、他の思惑を見事に断ち切ってくれました。この思い切りの良さと、最後までゴールを目指して追い続けるプレイ、普段から安藤騎手の、見るものを納得させるものです。
彼が中央競馬に与えたインパクトは、とてつもなく大きいことを、菊花賞制覇は物語っていました。それと、レースから何をつかんでいたかの大きさも思い知らされました。