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得体の知れない馬、ハープスター/吉田竜作マル秘週報

  • 2014年04月09日(水) 18時00分
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◆偉大なる先輩ブエナビスタとの感触の差は、追い切りで見せる動きによるところが大きい

 ハープスターに向けられる底知れない期待感の源とは何なのか? 末脚にフォーカスを当てればディープインパクト、オルフェーヴルなど、上はいくらでもいる。まして2歳女王決定戦・阪神JFで不覚にも敗れており、完璧な戦績を残しているわけでもない。

 牝馬が牡馬を打ち破るケースも珍しくなくなった今、牝馬の“怪物感”に重要な役割を担っているのは、情報を発信する側が受ける「かつてない感触」にあるのではないかと思う。

 ハープスターのデビュー戦は勝ちこそしたが、松田博資調教師は「あそこまで動けるとは思っていなかった」と振り返る。ちなみにブエナビスタのデビュー戦(3着)直前は、アンライバルド、リーチザクラウンといった強豪が出走を表明していたにもかかわらず「何がきても恥ずかしい競馬はしない」と強気に振る舞っていた。

 偉大なる先輩ブエナビスタとの感触の差は、追い切りで見せる動きによるところが大きいと思われる。ブエナビスタは「最初に追い切った時に“これは違う”と思った」というほど迫力ある動きを見せていたのに対し、ハープスターは時計や動きを見ても強調すべき点に乏しかった。トレーナーが評価したことといえば「上(全兄ピュアソウル・現古馬500万下)と違っておとなしいし、カイバ食いがいい」という走りとは別の面。名伯楽をもってしても、身体的な特徴をまだつかみきれずにいたのだ。

 デビュー戦から阪神JF時まで調教の手綱を取っていた中留助手もこう証言する。

「僕はデビュー前からずっとハープスターについては“普通”としか言ってません。もちろん悪くはないんです。ただいつも隙あらばやめようって感じで走ってますから。それで“走る”とは言えませんよ。この馬の本当にいいところを知っているのは、おそらく川田さんだけなんでしょう」

 管理している人間だけでなく、実際に稽古でまたがる人間にさえつかみきれない本性…この“得体の知れなさ”がハープスター最大の魅力と言っていい。間近で接している人間ほど、普段の「とぼけ具合」を知っている。ゆえにレースで普段からは想像もつかないパフォーマンスを発揮した時の驚きもそれだけ大きく、先への期待感が一層高まっていくわけだ。

 いわゆる「ギャップ萌えキャラ」と言うべきか。そのギャップに一番やられているのが松田博調教師でもある。

「あれだけ強かったチューリップ賞でもゴール前は真面目に走っていないもんな。いつもどこかとぼけているし、まだ本気で走っているわけではない。それでいていつも想像以上に走ってくれる。この馬が自分の使命に気付いた時にはどうなるんだろうなあ」

 数々の名牝を育て上げてきた名伯楽でさえ、いまだ器を測りきれずにいるハープスター。桜舞う舞台で今度はどんなギャップ、いやサプライズを見せてくれるのだろうか。

※本日は『トレセン発秘話』も更新されております。下部のバックナンバーからご覧ください。

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