◆わざと“やんちゃ”して乗り手を困らせるように「最近は、追い切りでもますます動かなくなりました」と、苦笑いを浮かべる川田。とはいえ、レース同様、時計的には十分動いている数字で、これも乗り手にしかわからない感覚である。
「新馬戦の前の追い切りでは、まだ馬が競馬というものをわかっていなかったぶん、いい動きを見せてくれたんです。仕掛けてからの加速がやはりすごくて、新馬戦は“何があっても負けない”くらいの自信がありました。でも、一度競馬を使ってからは、調教も動かなくなりました(笑)。頭がいいんですよ。賢いからこそ、自ら力をセーブするわけですし、そこに意思があるから動かないんですよね」負けない自信のあった新馬戦
動かないこと以外にも、最近は普段の調教から乗り手を相当困らせているというハープスター。昨秋、川田に話を聞いたときは、「おとなしくて可愛い子です」と言っていたような…。
「それがですねぇ、今年に入ってすっかりわがままをするようになりまして。僕が乗ると時計が出てしまうので、今年は一度も速いところは乗っていないんですが、チューリップ賞の本追い切りのあと、先生が『明日だったら乗っていいぞ』とおっしゃったので、山(坂路)で普通のところを1本乗ったんです。そのときに、僕はもう(調教には)乗れないなと思いました。なんていうんでしょう……、もともとバネがすごいのもあって、“あ、このままでは落とされる”という背中をするんですよ。放馬してケガでもしようものなら、大変ですからね。助手さんも怖いとは思いますが、そこはもうお任せして」 調教で動かなかろうと、わがままな振る舞いを見せようと、レースに行けばあの強さ。そのわがままにしても、決してパニックになっているわけではなく、レース同様、そこには彼女の意思があるのだ。
「苦しくて、とか、痛いところがあって暴れているのではなく、今はそうやってわがままをするのが楽しいんでしょうね。わかってやっているぶん、余計にタチが悪いんですが(笑)。調教で動かないことに関しても、厩務員さんは『競馬に行けば走ることがわかっているから、もうええわ』って」◆“追い切りより動いていなかった”チューリップ賞
川田も含め、日頃から接しているスタッフにとっては、心配の種が尽きない“女王様”であるが、その調教よりも楽な走りで勝ってしまったというのがチューリップ賞だ。
「道中に関しては、これまでで一番リズムよく動いてくれました。成長もあるでしょうし、レースにも慣れたんだと思います。ただ、直線でいえば、追い切りより動いていませんね。追い切ったときのほうが、よっぽど息が上がっていますから。だから