怪物牝馬がいよいよ頂点を狙いにいく。阪神ジュベナイルFでのまさかの2着から3カ月、チューリップ賞では他馬が止まっているかの如く末脚を繰り出し、不動の一強を決定付けた。それでも、「まったく本気で走っていない」とは川田将雅。彼にとってもこの春は、桜花賞のハープスター、皐月賞のトゥザワールドと、最有力馬への騎乗が続く正念場である。パートナーたちとの軌跡とそれぞれの勝算、そして自身の“今”について、2週にわたって川田の激白をお届けする。(取材・文/不破由妃子)
◆“ブレない気持ち”が導いた境地 昨年3月、引退直後の安藤勝己がこんなことを言っていた。
「今、一番追ってくるジョッキーといえば川田。これからの彼に必要なのは、いい馬との出会いだろう。そういう出会いがひとつあれば、彼はグッと伸びてくると思う」
はたして安藤の言葉通り、今、川田将雅は飛躍のときを迎えようとしている。桜花賞のハープスター、皐月賞のトゥザワールドと、最有力馬への騎乗が続く2014年春。毎週GIで有力馬を任されるようなジョッキーになりたい──確固たる信念のもと、地道に一歩一歩階段を上ってきた川田にとって、待ちに待った春である。
「年が明けてからというもの、チューリップ賞と弥生賞の週が楽しみで楽しみで仕方がありませんでした。本当に待ち遠しかったんですよ。そこに向かうまでの過程も、すごく楽しくて。どちらも無事に終えることができて、本当に良かった」 そうトライアルまでの過程を振り返った川田は、桜花賞を10日後に控えたこの取材時も、緊張どころか、どこか余裕さえ感じさせた。もちろん、パートナーへの強い信頼があってこそだが、そもそも川田というジョッキーは、デビュー当時から一貫して“ブレない気持ち”を持ち続けているジョッキーであり、それこそが今の川田を作り上げたすべてといっていい。
「ジョッキーになったからには、一番にならなければ意味がない」 彼からそんな言葉を聞いたのは、確か3年目の春先だったように記憶している。それも、“野望”や“夢”といったどこかふわりとしたものではなく、そのために今、自分に必要なものは何か、その過程として、今は何を目標に乗るべきかということを、当時から頭の中にきちんと描けていたように思う。
今年で11年目を迎えた川田だが、その思いやヴィジョンにブレが生じたことは、少なくとも筆者が知る限り一度もない。全国リーディングのトップに立っていることも、GIで有力馬への騎乗が続くことも、川田にとっては決して降って湧いた状況ではなく、時間をかけて虎視眈々と狙っていた境地。だからこそ今、彼を支配するのは、緊張よりも静かな興奮なのだろうと推測する。
「暮れ(阪神ジュベナイルF2着)のこともありますから、今度こそ結果を出さなければいけない、結果を出して当たり前の立場だということは自分でもよくわかっています。だからこそ