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走るべくして走ってきた馬ミエノワンダー/トレセン発秘話

  • 2014年04月10日(木) 18時00分


◆国枝師がセリで猛プッシュした逸材

 8日早朝のこと。人けのない美浦南スタンドで宴会野郎と雑談する国枝栄調教師のもとに、真剣な面持ちで某若手トレーナーが近づいてきた。気を使いその場を譲りつつも、遠巻きに聞き耳を立てていると「当歳を見に来てくれと牧場から声がかかったんですが、実際どの辺を見たらいいのか…。教えてくれませんか」と突然のレクチャー依頼。“もしやPOG必勝法が聞けるかも”とわが耳がダンボになったのは言うまでもない。

 で、しばし熟考の末、関東のトップトレーナーは威厳を持ってこう言い放った。

「ハッキリ言おう。俺だって初めて見る当歳馬は正直つかみ切れない」

 思わずその場でコケそうになったが、その言葉には続きがあった。

「何代もその血統を見てきた牧場の人のほうが、いちげんさんよりずっと個体の良しあしが分かっているはず。あまり深刻に捉えず、まずは牧場の声を聞くことだろう。一族の中でどんなタイプに出たのかを聞けば、イメージも湧くだろうから」

 若手トレーナーが礼を述べて去った後、再び国枝師に「あれで参考になるんですか」とぶしつけな質問を投げるとアッケラカンと師は答えた。

「庭先で馬がどんどん買われた昔とは時代が違うから焦ることはない。それに当歳で良くても、先に何があるか分からないのがサラブレッド。実際、米国の(有力)調教師なんて馬がデビューして走ると分かった途端、平気で自分の厩舎にトレードさせる。ローリスク&ハイリターン。できれば俺もそうしたい」と高笑い。まあ実際、どう転ぶか分からないからこそ競馬は面白いのだろう。

 とはいえ今週の日曜(13日)福島メーン・福島民報杯(芝2000メートル)に出走するミエノワンダーは、セレクトセールの1歳セリで国枝師が猛プッシュの末にオーナーに購入させた“走るべくして走ってきた”素材。オープン入り後のこれからが正念場だが「古馬になって馬がしっかりしてきたし、まだ伸びシロがある」のも確か。GII日経賞との両てんびんでこちらを選択した経緯からも注目して損はない。

(美浦の宴会野郎・山村隆司)

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