桜花賞ハープに続く松田博厩舎自信の1頭/吉田竜作マル秘週報
◆松田博調教師が皐月賞に送り込む“伏兵”タガノグランパ
サンデーサイレンスが種牡馬として全盛を誇っていたころ、POGの世界では人間の本性が分かるくらいの激しい争奪戦が繰り広げられていた。現実のオーナー、牧場、調教師の間でも似たような状況だったように思う。種付け料から、頭数まで…その人気は尋常ではなかった。
サンデーサイレンスの“最高傑作”ディープインパクトも、当時のサンデー人気が思い出される雰囲気になってきた。とある調教師の“泣きの弁”を聞いてもらいたい。
「正直、2歳の話はしたくない。なぜって(入キュウ予定馬に)ディープ産駒がいないんだ。牧場サイドやオーナーがキュウ舎の成績を見て預託先を決めるんだろうけど、そんな中でディープ産駒がいないってことは、そういうふうに思われているってことだろうから…」
今やディープ産駒の管理状況がキュウ舎の“ステータス”に多大な影響を与えている。もちろんオーナーにとっても同様で、売却される産駒の値段は“ステータス”込みだからこそ高額になる。実際、種付け料は07年の1200万円スタートから、現在は2000万円にまで跳ね上がった。
そんな中、「ナムラ」の冠で知られる奈村信重氏が今までとは違った姿勢を見せている。「これまで馬を選んだりしてもらっていた育成所など、各方面との関係を見直し、自分の思った通りにやろうってなったみたい。ディープの種付け権、そのための繁殖馬も買ったようだからね」とはナムラクレセントなどの活躍から関係の深い福島調教師。
5頭に種付けし、生まれたのが3頭の牝馬。その中の一頭が福島調教師が預かる母パンカティリオだと言う。「生まれは遅いが、小柄で仕上がりは早そう。早い時期にこちらに連れてくるかもしれないね」。ちなみにトレーナーにとっては初めてのディープ産駒。ちょっと先の話にはなるが、「ナムラ冠のディープ産駒」に注目してほしい。
さて桜花賞が終わって今週は皐月賞。豪華絢爛だった牝馬の戦いに比べ、やや小粒感は否めないが、「士別れて三日なれば、即ち更に刮目して相待すべし」の言葉があるように、特にこの時期の牡馬はちょっと見ないうちにびっくりするほど成長するもの。毎週見続けている馬は逆に変化に気付かないものだが、記者が見てもタガノグランパは明らかに馬が変わってきた。
「デビュー前に脚をぶつけた時はどうなることかと思ったけどな。びっくりするよなあ。本当に馬が以前より良くなった」と松田博調教師もその成長ぶりに目を丸くする。
「勝ってきたレースや馬体を見ての判断でマイル路線という選択肢も当然あったが、控えるレースをするようになって明らかに内容が良くなってきたからな。あれなら距離は持つと思う。今年のメンバーならそうヒケは取らんと思うぞ」
桜花賞では大本命ハープスターできっちり人気に応えた松田博調教師が送り込む“伏兵”タガノグランパの走りを期待を持って見守りたい。
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