11月3日大井「JBCデー」。地方競馬応援隊としては正直厳しい結果だった。ハタノアドニス、ネームヴァリュー、そろって“4着”というところがやるせない。100%ではないにしても、ほぼ力を出し切ってメダルに手が届かなかった。むろん勝ち馬は堂々たる強さで、層の厚さも含めたJRA勢には脱帽するしかないだろう。しかしそれでも…。自分の庭、かなりアドバンテージがあると思っていただけにショックがある。不満ではないし、落胆とも少し違う。ため息というやつだ。
JBCスプリント(サラ3歳上 定量 統一G1 1190m良)
△(1)サウスヴィグラス (57・柴田善) 1分09秒7
△(2)マイネルセレクト (57・大西) 鼻
△(3)スターリングローズ (57・福永) 1.1/2
◎(4)ハタノアドニス (57・内田博) 頭
○(5)エスプリシーズ (57・森下) 2.1/2
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△(6)ノボトゥルー (57・武豊)
▲(7)ナイキアディライト (55・石崎隆)
単490円 馬複780円 馬単1780円
3連複1940円 3連単11880円
レース前のハタノアドニス・高橋三郎調教師。「デキは万全。差して勝った東京盃からは安心して送り出せる。あとはこの馬より速く走る馬が出てくるかどうか…」。まさにしかりというしかない。言い換えればアドニスには、今回敗因と呼べるものはなかった。道中3番手、直線もそれなりに伸び、1分10秒0。自身持ちタイムをコンマ4秒詰め、しかし、さらに速く走る馬が現われてしまった。やるせないとはそういうこと。傍観者の記者がそうだから、三郎調教師はもっとやるせないかもしれない。やるだけやった…いっそ清々しい気分に転化させるには少なからず時間が要る。
サウスヴィグラスは、インから飛ばすナイキアディライトの2番手でスムーズに折り合った。行きっぷりそのものは東京盃の方が軽快にみえたが、やはり久々を叩いたぶん、中身が格段に違うのだろう。直線中ほどで先頭。柴田善騎手、渾身のステッキで後続を一杯に振り切った。重賞8勝目で初のG1、引退の花道。根岸S2勝、北海道スプリントC2勝、実績はG3だけで、戦前“底力”を疑問視する向きもあったが、元より馬自身にレースの軽重がみえているはずもない。体調さえ伴えば正真正銘、日本一のスプリンターということ。大井コース3度目、鬼門をクリアした意味も大きい。
マイネルセレクトも記者のイメージをはるかに超えて強かった。終始もまれ通しながら、ゴール際サウスヴィグラスに猛然と襲いかかり最後鼻差。勝負のアヤという負けでしかないだろう。新潟→阪神、オープン3連勝はダテでなかった。初コースを問題にしない精神力も素晴らしく、今後ダート短距離界の盟主となる可能性が高い。地力をみせたスターリングローズ、持ちタイムだけ走ったエスプリシーズもひとまず完全燃焼。ただエスプリの場合、欲をいえばあと1Fほしかったか。JRA遠征も含めさらに可能性を探りたい。ナイキアディライトは、試走と割り切れば合格点の走り。目標の大賞典までどう良化してくるか。気性面の成長もテーマになる。
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JBCクラシック(サラ3歳上 定量 統一G1 2000m良)
○(1)アドマイヤドン (57・安藤勝) 2分04秒3
△(2)スターキングマン (57・ペリエ) 3
△(3)コアレスハンター (57・内田博) 1.1/2
◎(4)ネームヴァリュー (55・石崎隆) 2
(5)ミツアキタービン (55・東川) 1
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▲(6)イングランディーレ (57・デムーロ)
(7)カネツフルーヴ (57・松永幹)
△(10)ユートピア (55・武豊)
単170円 馬複1360円 馬単1650円
3連複12630円 3連単31210円
アドマイヤドンの強さは、何をいまさら…ということになるだろう。もまれない外枠を引き終始リラックスしたレースぶり。4コーナー、カネツフルーヴに並びかけたところで勝負あった。あとはほぼ持ったままの独走で、エルムS、南部杯、そのVTRにきわめて近い。安藤勝己騎手とコンビを組み3連勝。はつらつとしてメリハリがよく、何より勝負どころを馬自身が覚えてきた。ただ、強いて一つ不安といえば当日マイナス9キロ。肉眼でみるパドックの馬体など、迫力、凄みは並みのオープン馬で、少なくとも前走以上には写らなかった。杞憂、いや単に僻目(ひがめ)であるのかどうか。陣営はJCダート→有馬記念のローテーションで年度代表馬を狙うと明言した。舞台は記者のテリトリー外に移るが、以後の評価が難しいぶん、正直少しホッとした気分もないではない。
ネームヴァリュー。スタートひと息で好位がとれず、中団インで終始気合を入れつつの競馬になった。追い上げた3~4コーナー、後退したユートピアを捌けず、いったん下げて直線外に持ち出したのも誤算だった。「行き脚がつかず、今日はもうどうしようもない。最後伸びたのだから力はある」と石崎隆騎手。もともと気分優先の面はあった馬。次走JCダートはM.デムーロ騎手で臨むらしい。そこでどんな変身をみせるか。休み明け3戦目、一転して気楽な立場。いずれにせよ、個人的には馬券でもう一度プッシュする。
コアレスハンターは鞍上の好プレー。勝ちに行かなかったのは内田博騎手、冷静に力関係がみえていたということだろう。さりとて3着は十分な収穫。折り合い自在、キャリアを重ねいい意味で枯れてきた。東海ミツアキタービンが健闘。道中素晴らしい行きっぷりで、結果論ながらもう少しじっくり乗れば3、4着があったかもしれない。父ライブリマウント。血統通り大井ダートには適性が高い。イングランディーレは中団キープのまま動けず、鞍上も含め、今回は不完全燃焼に終わった。本質的に少しズブさがある馬。次への評価は下がらない。
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平和賞(11月11日 船橋 サラ2歳 別定 東日本地区交流 G3 1600m)
◎ピーエムドヌール (54・佐藤祐)
○カネマサデューク (54・石崎隆)
▲ランノホシ (54・斉藤正)
△ゼレンカ (54・デムーロ)
△シャトルフォンテン (54・張田)
△ニンジャ (54・田中力)
△キタノウルフ (54・秋田)
ミルキーパンダ (53・桜井拓)
南関東2歳戦線。現段階では、デビュー3連勝、前走鎌倉記念を制したトキノコジロー、デビュー4戦3勝、ゴールドJ2着エーピーライデンが、実績で一歩リードする。ともに強靭な末脚が武器。その意味では来春を含め頼もしいが、しかし時計の裏付けがないのも事実で、主役確定にはまだまだ時間を要するだろう。平和賞は今年、東日本地区交流。勝ち馬には、12月17日川崎「全日本2歳優駿=G1」の優先出走権が与えられる。レベルを計るに絶好の一戦となった。
ピーエムドヌールは2戦2勝。いずれも3~4コーナーごく自然流のまくりで直線独走、余裕十分に後続を9、6馬身ちぎっている。スピード、瞬発力、さらに競馬センスが印象的。父トーヨーリファールは芝ダート、オールラウンドにこなした名マイラーで、地方競馬成功も自明の理といえるだろう。中間2か月のブランクで仕上がり優先だが、気性は文句なく実戦向き。いきなり全国区を証明できる器とみたい。
北海道実績ではランノホシ、ミルキーパンダだが、転入2連勝カネマサデュークに上昇度、コース経験の利がありそうだ。今のところ話題先行というゼレンカも、地元2連勝の内容からは能力互角で、気性面も含めた成長がここで問われる。今季千?1時計で新馬を勝ったシャトルフォンテン、その名の通り切れ味と勝負強さを秘めるニンジャ。一見小粒でも、見どころは満載されたレースだろう。