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馬の福祉9

  • 2014年02月20日(木) 01時29分
  • 8

ここまで述べてきた「ドナドナ」に対して、私本人はどう思っているのかと聞きたい方は多いのではないか、と勝手ながら思う。

これについて答えると「ほとんど何も感じない」というのが正直な回答である。
確かに最初は今まで乗っていた馬がクラブを(というか現世を)去る事に関しては、自分の精神面で特別な葛藤はあった。しかしそれも何度か経験している内にそういう感覚は機能しなくなってくる。というよりもここまで述べてきたような事を悟ってしまい、乗馬クラブの存在を維持する上でどうしようもない事だという事が分かってしまうのが大きかった。

放出を決める張本人である経営者にしたって、そうである。事業の存続上やむを得ない判断で馬を放出しているので、放出する馬に対していちいち感情を抱いていられないと言っていた。
私が「ドナドナ」に対して感情的にドライになってきたのを感じたのか、ある時期から経営者は私にその手の話を聞かせてくれるようになった。アマチュアとはいえ、ホースマンである以上、知らなければならない事だと思った。

もっと大きな尺度の問題もある。仮に、馬房が満杯の乗馬クラブがあったとしよう。そしてそのクラブではすべての馬に調教が行き届いており、「ドナドナ」になるような悪癖を持つ馬がいなかったとしよう。

…これで全てが解決だろうか?答えは断然NOである。

日本で飼養できる馬の頭数は、日本に存在する馬房の数にほぼ等しい。馬房がないと馬は飼養できない。例外的に野ざらしにされている馬もいるにはいるが、極少数である。そして残念ながら日本の馬房数は、馬の全頭数によりも極端に少ない。
つまり、あるクラブでドナドナを免れた馬Aがいるとする。そうすると馬Aの命は救われる。しかし、馬Aが乗馬として現役を続行する事により、馬房の空きが発生せず、競走馬を引退した馬Bは再就職先が見つけられずにドナドナとなってしまう―。

結局のところ、これが本質であり、全てだと思う。

アラシ
アラシ
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元馬術の選手です。ネットケイバでは主に競走馬掲示板にて活動しています。2016.11.11記諸般の事情により、当面はブログで活動いたします。追い切り所見・レース回顧を中心に、内容そ...

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