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スケールの大きなクラシック配合アヴニールマルシェ

  • 2014年05月21日(水) 12時00分
アヴニールマルシェ(牡 美浦・藤沢和雄 父ディープインパクト、母ヴィートマルシェ)
 サンブルエミューズ(フェアリーS-3着)の半弟で、母の半弟にはトライアンフマーチ(皐月賞-2着)、インペリアルマーチ(きさらぎ賞-4着)がいる。2代母キョウエイマーチは桜花賞馬。ディープインパクトの代表的なニックスであるリファールクロスを発展させる形で、本馬はAlzao≒ダンシングブレーヴ3×3という相似な血のクロスが施されている。このクロスを持つディープインパクト産駒は、ネガティヴニックスのコマンダーインチーフが入る馬を除くと、連対率63.6%(22戦14連対)と走っている。「ディープ×フレンチデピュティ+欧州血統」という成功パターンにも当てはまっており、兄姉を超えるハイレベルな競走馬になる可能性は高いだろう。スケールの大きなクラシック配合だ。

ティルナノーグ(牡 栗東・松永幹夫 父ディープインパクト、母バイコースタル)
 母バイコースタルはプレステージS(英G3・芝7f)2着馬。初子のノートゥング(父Giant's Causeway)、2番子のレディアント(父マンハッタンカフェ)はそれぞれ12戦1勝、2戦0勝という成績で、繁殖牝馬としてはまだ好結果を出していない。父ディープインパクトはStorm Catまたはクラフティワイフを経由したSecretariatとは好相性を示しているが、それ以外の形で入るSecretariatとは芳しい結果を残していない。本馬の母の父Gone Westも同様だ。母方にこの血が入るディープインパクト産駒は過去に18頭デビューし、勝ち上がったのは半数に満たない7頭。連対率15.4%はディープ産駒全体の25.9%を10%以上下回る。一方、母は「Mr.Prospector系×Nureyev系」という配合で、これは父のニックスのひとつである「Mr.Prospector+Special牝系のNorthern Dancer系」に該当する。ネガティヴニックスとニックスが併存する配合なので、どちらに転ぶ可能性もあるが、2代母にNorthern Dancer 3×4があり、この点は評価できるので、感触としてはまずまずといったところ。芝向きの中距離タイプ。

ドラゴンラヴ(牝 栗東・角田晃一 父ゼンノロブロイ、母マネーキャントバイミーラヴ)
 母マネーキャントバイミーラヴは現役時代、イギリスでナッソーS(G1・芝10f)3着という成績がある。2代母Sabreonは近い世代にNijinsky、Mr.Prospector、Rivermanを抱えている。これはトレイルブレイザー(11年アルゼンチン共和国杯-GII、12年京都記念-GII)の母リリオとよく似た構成で、とくにRivermanは父ゼンノロブロイの代表的なニックスでもある。母の父PivotalはNureyev系の快速血統で、日本に輸入された産駒は主に1400m以下の芝で実績を残した。本馬は全体の配合構成からマイル前後の芝でいいところがありそうだ。

トーセンジュリア(牝 美浦・小桧山悟 父ブライアンズタイム、母リエートフィーネ)
 2代母オリンピアデュカキスは現役時代、伊1000ギニー(G2)など3つの重賞を制し、伊オークス(G1)でも2着となった。この牝系とブライアンズタイムは相性がよく、オリンピアンナイト(07年エルムS-GIII・5着)とケイト(準OP)が出ている。ケイトは芝短距離重賞を3勝したマジンプロスパーの半妹。活力のあるファミリーだ。本馬は「ブライアンズタイム×ゼンノロブロイ」なのでパワー型の中距離馬だろう。

モルジアナ(牝 美浦・木村哲也 父Dubawi、母サマーハ)
 父Dubawiは、わずか1世代を残して急逝したDubai Millenniumの代表産駒で、現役時代に愛2000ギニー(G1)、ジャックルマロワ賞(仏G1)、ナショナルS(愛G1)を勝った。代表産駒のMakfi、Night of Thunderはいずれも英2000ギニー(G1)を勝っている。日本に輸入された4頭から芝短距離路線でOP入りを果たしたフレデフォートが出ている。母サマーハの4分の3兄Mamoolはバーデン大賞(独G1)、オイロパ賞(独G1)など5つの重賞を制した名馬。本馬はSeeking the Gold≒Woodman 3×3、Sir Ivor≒Drone≒Halo 6・6×4で日本向きのスピードと瞬発力を最大限に強化している。牝馬なので素軽いスピードに恵まれたタイプで、芝1200〜1600mを得意とするだろう。

レーヌドブリエ(牝 栗東・矢作芳人 父ゼンノロブロイ、母メジロドーベル)
 母メジロドーベルはオークス(GI)、エリザベス女王杯(GI)[2回]、秋華賞(GI)、阪神3歳牝馬S(GI)と5つのGIを制した名牝。繁殖牝馬としてはフェアリーS(GIII)4着のメジロオードリー(父スペシャルウィーク)を産んでいるものの、期待の大きさからするとやや物足りない成績。ただ、孫世代から青葉賞(GII)を勝ったショウナンラグーンが出ている。11年にメジロ牧場が解散したあと、ノーザンファームのノウハウを取り入れて生産部門を引き継ぎ、同じ地でマーケットブリーダーとして再出発したレイクヴィラファームの生産馬。育成その他を根本的に変えた効果で今後の飛躍が予想される牧場だけに、過去のドーベル産駒とは違った結果が出ても不思議はない。母には父ゼンノロブロイとフィットしそうなヨーロッパ血統が豊富に含まれている。芝向きのマイラーとして活躍を期待したい。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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