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北海道のふところ

  • 2003年11月17日(月) 11時18分
 11月11日、船橋「平和賞」。北海道から遠征・ランノホシが力強いレースぶりで快勝した。道中中団、馬群でもまれるような展開だったが、鞍上・斉藤正騎手の判断が素晴らしく、3〜4コーナー外目に進路をとって一気のまくり。直線中ほど、前を行くシャトルフォンテンを早々と捕え、そのまま危なげなく押し切った。着差こそ2馬身だが、内容は圧勝に近い。「指示通り早目のスパート。強いですね。北海道で骨っぽい相手と戦ってきた経験が生きました」。ランノホシは、6月札幌のJRA認定新馬を勝ち、以後3戦、2、3、7着だが、前走は交流G3、前々走は500万芝の善戦で、終わってみれば地力が違うという結果だった。シャンハイ×ジェイドロバリーの配合。むろんダート1600mが最も性に合っている。

平和賞(サラ2歳 定量 東日本地区交流G3 1600m不良)

(1)ランノホシ     (54・斉藤正) 1分41秒3
(2)シャトルフォンテン (54・張田)  2
(3)カネマサデューク  (54・石崎隆) 1.1/2
(4)エスプリゼット   (54・内田博) 3
(5)ミルキーパンダ   (53・桜井)  1.1/2
…………………………………………………
(6)ニンジャ      (54・田中)
(9)ゼレンカ      (54・デムーロ)
(12)ピーエムドヌール  (54・佐藤祐)

単260円 馬複4340円 馬単7760円
3連複3300円 3連単24720円

 改めて「北海道のふところ」…道営競馬の底辺の広さ、底力のようなものを痛感させられる一戦だった。JRA認定新馬スタート後、道営競馬の存在意義、価値が、年々見直される結果が出ていると思う。理屈ではなく、そこでデビューした馬が、その能力を外へ強烈にアピールしている。とりわけ今年は凄い。「札幌2歳S」を勝ったモエレエスポワール、先週東京500万「百日草特別」をレコードで制したコスモバルク。確かに早くから鍛え上げられ、経験を積んでいる利はあるかもしれない。それでも北海道とはやはり、サラブレッド生産の豊潤な大地であり、素晴らしい原石が数多くころがっているということ。ランノホシは、北海道大学農学部の生産。今後の活躍しだいでさまざまな注目を集めることになるだろう。次走は12月17日川崎「全日本2歳優駿」が有力。ただし今日の勝ち時計1分41秒3はC1レベルで、南関東馬、いかにもふがいなかったうらみはある。

 シャトルフォンテンは新馬を1000m1分0秒8、今季一番時計で勝った馬。続く特別を3着と敗れ評価が揺れたが、素質からは当然の好走でもあるだろう。3戦目で折り合いに進境。父はミツアキサイレンスを出したエイシンサンディ。うまく育てばクラシックにも夢が出る。カネマサデュークは最外枠、1コーナーで振られる不利があり、結局そのロスが最後に響いた。こちらも道営出身、抜けた能力は疑問でも完成度がきわめて高い。横殴りの雨、泥田と化した馬場で、末脚勝負のニンジャ、気性面で若いゼレンカあたりには厳しかったか。ただゼレンカ騎乗のデムーロ騎手は、レース後「芝向きの馬」とコメントした。JRA認定取得済みだけに川島正行厩舎、おそらく新たな戦略を練ってくるだろう。期待したピーエムドヌールは、スタート直後から首が上がり、まったく競馬をせずに終わった。17キロ増、筋肉質のマイラー体型で潜在能力は十分。ひとまず気性面の成長がテーマとみたい。

       ☆       ☆       ☆

 13日川崎「ロジータ記念」は、マルダイメグが見事な勝負根性で逃げ切った。抜群のスタート、桜花賞馬メモリヒメにダッシュがつかず難なく先頭。1000m通過64秒6、確かに超スローだが、道中まるでカカる素振りもみせず、とにかく競馬センスが素晴らしい。直線外から迫ったジョウテンセレブがいったん頭ほど前に出たが、ゴール寸前、的場文騎手、渾身のステッキで差し返した。桜花賞を1番人気で4着、すぐ故障が判明し(おそらくレース中)、以後6か月の休み明け。「道中折り合いがつき終始いい手応えだった。それにしても走る馬。いきなり長距離なのにびっくりするほど終いも伸びた」。父フジキセキ、デビューから7戦5勝。2100m2分18秒6は物足りないが、状況を考えるとレースぶりのインパクトはきわめて強い。「まさか勝ってくれるとは…。今日はひとまず無事に走って…と思っていた。ローテーションはこれからゆっくり考えます」と佐々木仁調教師。ポスト・ラヴァリーフリッグというムードか。楽しみな馬が復活した。

 ロジータ記念(サラ3歳上牝馬 別定 南関東G2 2100m重)

(1)マルダイメグ    (54・的場文)  2分18秒6
(2)ジョウテンセレブ  (54・石崎隆)  頭
(3)スギノワンダー   (54・今野)   3
(4)ドラールモーション (54・内田博)  2.1/2
(5)ムギワラボウシ   (54・野崎)   3/4
………………………………………………………
(7)ケージーローズ   (54・納谷)
(13)モエギノマズル   (56・酒井)

単2120円 馬複4290円 馬単12670円
3連複5480円 3連単59460円

 ジョウテンセレブはインの3番手、じっくり前をみる形。3〜4コーナー、相手をマルダイメグに絞り絶妙のタイミングでスパートした。「ペースが遅い。内枠で我慢するような競馬になったから。外のほうがよかったね」。石崎隆Jとすれば悔いが残る敗戦だったらしい。もう少し早めに行って相手をねじ伏せたかったニュアンス。が観戦者としては、今日のところはマルダイメグの勝負根性を素直にほめて正解と思う。ジョウテンセレブもまだキャリア7戦、長丁場初体験。これだけ思惑通りのレースができれば悲観する部分は何もない。逆に勝負どころで前2頭に置いていかれたスギノワンダーは、枠順、位置取りがよかっただけに力負けか。ムギワラボウシにも同様のことがいえる。惜しかったのはやはりドラールモーション。痛恨の出遅れ。腹をくくった鞍上が、3コーナー手前で仕掛けて出たが、結局不利を挽回できなかった。それでも最後4着、改めてこの馬は走るという感触。帝王賞2着、ドラールアラビアンの半妹、父シングスピール。懸念された馬体減りもなく、こちらはマルダイメグよりもっと大きく、ポスト・ネームヴァリューの期待がかかる。

       ☆       ☆       ☆

浦和記念(11月20日浦和 サラ3歳上 別定 統一G2 2000m)

 予備登録があったイングランディーレが回避、リージェントブラフが回避、南関東側もエスプリシーズが回避。統一G2ながら屋台骨がグラついたレースになってしまった。ひとまず今年も東京大賞典トライアルとして位置づけられ、1〜2着馬に優先出走権が与えられる。例年おおむね12月上旬の施行。結局今年はタイミングが微妙にズレているということだろう。JBCクラシック、JCダート、確かに狭間で難しいが、統一G2という以上、開催日程(南関東4場)も含めやはり細心の配慮がほしい。

◎ストロングブラッド  (56・武豊)
○マッキーローレル   (56・赤木)
▲マキバスナイパー   (56・左海)
△ブラウンシャトレー  (56・張田)
△スナークレイアース  (56・後藤)
△プリエミネンス    (54・柴田善)
△ケリーライト     (56・内田博)

 ストロングブラッドは、前々走上山・さくらんぼ記念を強烈な追い込みで制した。春にカブトヤマ記念(芝2000m)勝ちがあるものの、やはり真骨頂はダート中〜長距離になるだろう。今後のイメージはミラクルオペラあたりになるか。ここで統一G2勝目なら展望が広がる。

 マッキーローレルは前走金沢・白山大賞典2着。ハギノハイグレイドを最後鼻差まで追い詰めた。兵庫生え抜きとしては異例ともいえる大出世。早くからのチャレンジ精神(セントライト記念4着など)がここで実を結んでいる。マキバスナイパーはこのレース2勝、不死鳥とも呼びたい存在だが、さすがに今年は半信半疑。プリエミネンスもそろそろ下り坂が否めず、スナークレイアースは相変わらずふっ切れない。南関転入2戦目ブラウンシャトレー、絶好調ケリーライトが穴。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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