昨年の6月2日に東京競馬場でデビューしたイスラボニータが、ちょうど1年後の6月1日に再び東京競馬場で走る。しかもそのレースは、すべてのホースマンが憧れる日本ダービーという最高の舞台だ。しなやかな体から繰り出される伸びのあるフットワークで、直線でも楽々抜け出し、ライバルをねじ伏せた皐月賞。ダービーに1番近い馬と言っても過言ではないが、血統面から距離不安も囁かれている。果たして2400mはこなせるのか。そして二冠馬となれるのか。主戦の蛯名正義騎手と管理する栗田博憲調教師に本音を聞いた。(取材・文:佐々木祥恵)
◆ハープスターとの戦いで得たもの 一昨年のダービーでは、フェノーメノで悔しいハナ差の2着。あれから2年の月日が流れようとしている今年、蛯名正義騎手に再びダービー制覇のチャンスが巡ってきた。
デビューからすべてのレースでイスラボニータの手綱を取ってきた蛯名は、同馬の長所も短所も、成長度もすべてその背中から感じ取って来ている。
イスラボニータに最初に跨ったのは、新馬戦の前だった。「軽い馬で能力もありそうだと思いました。でもヤンチャな面があって、良くなる可能性はもちろんありましたけど、悪い方に出る可能性もあるかなとも感じました」
蛯名の心配をよそに、イスラボニータは1戦ごとに成長していった。「一番きつい競馬をしたと思ったのが、ハープスターに負けた新潟2歳Sですね。掛かり気味だったので、少しずつ馬群の中に入れて競馬をさせました。ハープスターのように外を回った方が楽だったかもしれないけど、あえて馬群に入れて厳しい競馬をさせたことは、負けたとはいえ得たものは大きかったと思います」。イスラボニータ唯一の敗戦は、のちの皐月賞につながる収穫の多いレースだった。
そしてイスラボニータの父・フジキセキのデビュー戦の手綱を取ったのも、蛯名だった。新潟の1200mの新馬戦で2着以下に8馬身差をつける圧勝。衝撃的なレースだった。