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【潜入取材】競馬の舞台裏!競馬場の救護所(3)『医療の現場から競馬に貢献できること』

  • 2014年06月16日(月) 12時00分
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日常生活では目にしないような特殊な競馬の事故。時には、目を覆いたくなるような場面にも遭遇します。そんな競馬の最前線で、覚悟を持って働く救護所の職員さんたち。今週は「ジョッキーを守る」という強い信念のもと、過酷な業務をこなす心構えに迫ります。(第2回のつづき、聞き手:赤見千尋)

◆初めてのときのことは忘れられません

赤見 辻さんが、開催日に(馬場に待機している)救急車に乗るご担当になったのはいつ頃からなんですか?

 平成24年に「競走部厩舎関連室」へ異動してからです。救急車に乗るのは「厩舎関連室」「トレセン厩舎課」が主であり、あとは競馬場の「総務課人事厚生係」の者となります。

赤見 最初に救急車に乗るご担当に決まった時はどう思われましたか? 緊張しませんでしたか?

 緊張しましたよ。覚悟はしていても、いざ事故を目の当たりにすると、やっぱり辛いですね。初めて救急車に乗った時は、幸い1件も事故がなかったんですが、その後、他の競馬場では、担架を使うことになりましたが、なかなかその時の状況は忘れられません。

竹田 僕も、東京競馬場に来て最初の週に落馬がありました。救護所は、何も起きなければとても穏やかなのですが、何かが起きたときの状況というのは…。病院ではないですが、それと同じように、救急車が来て医師が処置をして。その状況を見ていて、「救護所は本当に重要な場所なんだな」というのを、着任1週目にして感じましたね。

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▲竹田「救護所は本当に重要な場所」辻「覚悟はしていても辛いです」


赤見 本当に、最前線ですもんね。

 もちろん何もないに越したことはないのですが、研修・練習だけではスキルがなかなか上がらないことも確かであり、気持ちとしては複雑です。だからこそ、事故に直面し経験したことは、その場ですぐに身につけないといけないと思っています。

赤見 そうですよね。大切な役目ですもんね。例えば、負傷したジョッキーの声も聞かれるわけですよね。「痛い」とか「辛い」とか。

竹田 そうですね。また落馬してしまった場合は、馬のことをよく聞かれたりします。後藤騎手もその時に騎乗していたジャングルハヤテ号のことを、とても気にされていました。

赤見 ご自身が痛い思いをされているのに、馬のことを…。意識があると、やはりレースの事も気にかかりますよね。

竹田 それもありますね。後藤騎手も、病院で意識がはっきりしてきた時には、その日のレースのことをおっしゃっていましたね。当日のフローラSで人気馬に乗る予定だったんですよね。誰に乗り替わったかとか、その結果などを気にされていました。

◆ジョッキーが安心して騎乗に専念できるために

赤見 落馬した場合は、重症でなくても必ず一度は救護所に寄ることになっているんですか?

 いえ。当然、本人に確認しますが、軽度の場合は救護所に寄らない人もいますし、「痛み止めだけ欲しい」「湿布だけ欲しい」という人もいます。

竹田 ただ、そういう場合でも、後から痛みが出てくる場合もありますので、1日の競馬が終わった後には、必ず本人に直接確認をするようにしています。

赤見 常に気にかけていらっしゃるんですね。やっぱりジョッキーのことは、その後も気になりますか?

 なりますね。自分が直接救護所へ搬送した場合はよく覚えています。特に大きな怪我をした人が、回復して元気な姿を見たり、聞いたりすると「あぁ、良かったな」と思います。

竹田 そういう場面に遭遇しているので、今まで以上に祈るようにレースを見るようになりましたよね。見る気持ちが違ってきます。

赤見 本当に精神的にも重いお仕事ですね。

 それでも、例えば街中で何らか救護が必要な場面に遭遇した場合でも、以前と比べてあまり躊躇することなく接することができるようになったと思います。仕事とは別に個人の経験として非常に良かったと思っているところもあります。

赤見 そうですよね。突発的なことに常にさらされているわけですから。大きな事故が起こった場合、過去の事例が教訓になると思うのですが、対応の仕方で昔と今で変わったことはあるんですか?

 基本的な対応は変わっていないと思います。昔も今も、まず、競馬場に来ていただいている医師に状況の把握と初期処置を行っていただくこと、重症の場合は医師の判断をいただいた上で、速やかに外部の病院に搬送するという流れですので。ただ、最近は特に医師不足の問題もあり、繰り返しにはなりますが、病院とは常日頃から密に接し、受け入れていただく関係を構築することで、ジョッキーが安心して騎乗に専念できる環境を作っていかないといけないと思っています。

赤見 救護所から、競馬に貢献できることはどんなことだとお考えですか。

 貢献なんて言ったら大げさですけど、負傷したジョッキーを救護所に速やかに搬送すること、騎手の話をできるだけわかりやすく、医師や看護師に伝えることで、医師による判断・初期処置がスムーズに取り掛かれる体制をつくること、その処置等の結果、出来るだけ早く怪我をした騎手が、速やかに競馬に復帰できるようにすること。それが救護所の役割かなと思っています。

赤見 これまでいろいろな取材をさせていただいて、こんなにジョッキーに対しての思いが強い場所もなかなかないなって思いました。まさに、競馬の縁の下の力持ちですね。(第4回につづく)

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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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