11月26日大井「ハイセイコー記念」。シルクビートが豪快な追い込みで初タイトルを手にした。丸一日降り続いた雨で先行絶対有利の馬場状態。しかしそれが逆に1000m通過60秒8、2歳馬にはいかにも厳しいハイペースを呼んでいる。シルクビートはやや立ち遅れ気味のスタートで、向正面11番手。結果そこでじっくり脚を温存したのが最後の爆発力につながった。直線大外に持ち出しておよそ8頭ほどをゴボウ抜き。先に抜け出したエーピーライデン、カーリをあっという間に捕えてみせた。1590m1分41秒2。軽い馬場を考えてもこの時期の2歳馬としては悪くない。
ハイセイコー記念(サラ2歳 定量 南関東G2 1590m重)
△(1)シルクビート (54・的場文) 1分41秒2
◎(2)エーピーライデン (54・石崎隆) 3/4
○(3)カーリ (54・今野) 首
(4)キョウエイプライド (54・左海) 2.1/2
(5)モエレトレジャー (54・金子) 1/2
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△(6)ベルモントサファリ (54・内田博)
△(7)ブルーエース (54・早田)
▲(8)カネマサデューク (54・デムーロ)
単1690円 馬複1140円 馬単4400円
3連複4570円 3連単44920円
シルクビートは6月デビュー。新馬戦こそ落としたものの(4着)、以後立て直して2連勝、それぞれ後続を5、8馬身ちぎり、素質の片鱗はみせていた。続くゴールドジュニアーはベルモントサファリ、エーピーライデンに2.1/2差の4着。勝たれてみればそう意外な結果でもない。ただここまではレースぶりが固まらず、気性面でいかにも若い印象だった。ワンサイドの2勝はいずれも単騎逃げ。差す形での能力は未知数。今日は鞍上・的場文騎手の開き直り、思い切りが新境地を開いたということだろう。父スピニングワールドは、愛2000ギニー、ブリーダーズCマイルなどG1・5勝。シルクビート自身もガッシリしたマイラー体型。本質的に短~マイルで絶対スピードを生かすタイプか。ただし、「まだ成長途上の段階。年内は無理をさせない」(矢作調教師)という意向で、権利をとった12月17日川崎「全日本2歳優駿」は回避の公算が強い。
エーピーライデンは道中4番手のイン、いわゆるポケットでレースを進め、直線中ほど、追い出すタイミングも絶妙だった。「レース間隔があいたせいか、期待ほど伸びなかった」(石崎隆騎手)。不利を受けた前走ゴールドジュニアーの末脚はまさに2歳馬離れしていたが、一分の隙もなく乗った今回は並みの2歳馬…。結果論ながら競馬の難しさというほかあるまい。それでもパドック、返し馬など、ゆったりかつ豪快な馬体、走法で、父ワカオライデンゆえの早熟性は感じられない。こちらは次走予定通り全日本2歳優駿。そこで改めて真価が問われる。
カーリは3~4コーナー、外めを一気に追い上げ、直線いったんエーピーライデンと一騎打ちの格好に持ち込んだ。力まかせの競馬でいい脚が長く使えるあたり、父ユートカイザー(東京ダービー2着)の特長をよく受け継いでいる。こちらは来春距離延びて夢が大きい。ベルモントサファリは好枠から先手をとったものの、ブルーエース、キョウエイプライドにからまれて失速した。アジュディケーティング産駒。スタミナの点でも気性の点でも、今後の展望は微妙だろう。カネマサデュークは道中窮屈な競馬をしたが、それにしても直線ジリ下がりの8着は期待外れ。話は少し飛ぶが、この日、第1R「2歳・260万条件」で、ナマオ(ブロッコ×ノーザンテースト)が、デビュー戦に続き2連勝を飾った。その時計1390m、1分26秒2は、古馬準重賞レベル。いずれにせよ2歳戦線はまだまだ混沌。勢力図が固まるのはかなり先になりそうだ。
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ファーストレディー賞(大井27日 サラ3歳以上牝馬 別定 南関東G3 1790m重)
△(1)アートブライアン (57・石崎隆) 1分53秒3
◎(2)ホウザングラマー (57・的場文) 4
○(3)ブルーマドンナ (55・左海) 頭
▲(4)アオバコリン (57・内田博) 2
△(5)タマノユウユウ (55・坂井) 3
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△(6)パッションキャリー (53・張田)
△(7)カーディアンゴット (57・佐藤隆)
単640円 馬複620円 馬単1850円
3連複1100円 3連単8510円
アートブライアンが、9月「トゥインクルレディー賞」に続き重賞連覇を飾った。道中4番手。パッションキャリー先導のスローをしびれるような手応え。直線中ほど、GOサインを待ちきれない勢いで抜け出し、最後は独走になっている。トゥインクルレディー(52.5キロ)から一挙に今回57キロ。中間疲労が抜けず2週間ほど馬場入りを休ませたとも聞いていた。正直予想者としては意外な結果。「ここにきて驚くほど力をつけている」(石崎隆之騎手)が本音であり、同時にすべてというしかないだろう。父サニーブライアン。出川克己厩舎、ラヴァリーフリッグのステイブルメイトで2歳時からの期待馬だが、以後パワー、逞しさの点でライバルに大きく水をあけられていた。今日の勝ちっぷりだけとれば再び肩を並べた印象。次走は明春2月「TCK女王盃」。状態をキープできれば統一Gでも脈がある。
ホウザングラマーは逆に57キロがイメージ以上に響いたか。道中はいつもよりスムーズに運べ、直線いったんアートブライアンに並んだが、そこからあっけなく失速した。運がなさ、ツキのなさ、そういう感じがないでもない。あくまで結果論だが、トゥインクルレディー3着のあと、牡馬相手のオープン2連勝で蓄積疲労が出てしまったうらみもある。ブルーマドンナは直線だけに賭けた競馬で、流れを考えれば好走といえるだろう。アオバコリンは中間船橋・佐藤賢二厩舎へ急きょのトレード。少々立派すぎる体つきで、道中折り合いがつかなかった。
勝負ごとの微妙さと危うさ…。毎回同じような繰り言で恐縮だが、今週もまたそれを痛感させられた。例えば石崎隆之、的場文男、両ジョッキーの思惑にしてもそうだろう。石崎騎手はハイセイコー記念=エーピーライデンで勝利を意識し、対して的場騎手はファーストレディー=ホウザングラマーで勝ちを計算していたはずである。しかしいざレースとなると結果が違う。思わぬ破綻と嬉しい誤算。競馬はわからない、だから面白い…。結局はそう結ぶしかないのだが。
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ローレル賞(12月3日川崎 別定 南関東G3 1600m)
◎ビービーバーニング (53・甲斐)
○キラキラ (53・山中)
▲クラメガミ (52・石崎隆)
△ゴールドファミリー (53・森下)
△グロウス (52・的場文)
△キスミートゥナイト (52・内田博)
△テラノパスポート (52・酒井)
ビービーバーニングはデビュー2連勝。それぞれ後続を6、9馬身ちぎり、古馬B級レベルの時計をマークしている。前走1500m1分35秒4、最後の脚いろも含め、昨年パレガルニエとほぼ互角のインパクト。バブルガムフェロー×デュラブの配合で、ダートならマイル~中距離までその能力は落ちないだろう。ここをすっきり勝って12月30日大井「東京2歳優駿牝馬」が青写真。今回折り合いがテーマだが、自分の競馬ができる限りまず負ける要素はない。
相手は北海道移籍組が有力。中でもキラキラは前走転入初戦(船橋)を好タイム圧勝。道営2勝はそう目立つ内容でもなかったが、何よりこちらの水が合っている。トレードぶっつけ組では厳しい相手に善戦を続けてきたクラメガミ。川崎生え抜きでは鎌倉記念4着・ゴールドファミリー、小柄でも芯が強いグロウス。いずれにせよ馬券はビービーバーニングの連下探しと割り切れる。