
改めてダービーを振り返るとともに、ジョッキーとしての複雑な思いを語ってくれました
サトノルパンで挑んだダービーは、残念ながら14着。勝ったのは、小牧騎手がベースとしている橋口厩舎のワンアンドオンリーでしした。今回は、改めてダービーを振り返るとともに、ジョッキーとしての複雑な思いを語ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)
■ジョッキーとしては悔しいし、複雑な思いが…──今回は、ダービー絡みの質問がけっこうきています。少々時間が経ってしまいましたが、改めてレースを振り返っていただけますか?
小牧 最初から掛かるだろうなとは覚悟してたんやけど、思ったよりうまく制御はできたんですけどね。ちょっと遅れ気味で出たら大丈夫やった。ただ、4コーナーの手前で前の馬に乗りそうになってね。
──そうだったんですか!?
小牧 うん。僕ひとりだけ外に行った場面があったでしょ。あのとき前の馬に乗りそうになって。3コーナー手前でやっとハミが外れて、手綱をプラーンとさせとったんですわ。直線までできるだけ温存しようと思ってね。そうしたら4コーナー手前で急にペースが落ちて、前がギューッと詰まって。そのときに前の馬に乗りそうになったから、外に逃げたんですわ。
──ということは、それくらい手応えがあったと。
小牧 いや…。直線に向いたときには、もう全然手応えはなかったです。敗因は距離です、はい。でもやっぱりダービーはいいね。雰囲気が独特や。
──相変わらず、応援がたくさんきていましたね。
小牧 きてくれてましたねぇ。いつもの男の子もきてくれてたわ。東京でも「小牧太騎手、応援しています!」って言うてくれたわ。彼が関東まで応援しにきてくれたのは初めてじゃないかな。ビックリしたけど、やっぱり嬉しいですね。そういえば、昼休みにダービーに騎乗するジョッキーの紹介があるでしょ? あのとき「純情派」って紹介されとったみたいなんやけど、なんで僕が純情派なの?
──いや、それはわたしにもわかりません…。でも、ちょっと笑ってしまいました。
小牧 そうやろ(笑)?「なんで小牧さんが純情派なの?」って、みんなに笑われたんやわ。
──今年は橋口調教師が悲願のダービー初制覇。レース前の厩舎の雰囲気はいかがでしたか?
小牧 なんせ先生への取材が多かった。しんどいやろうな…と思って見てましたわ。これだけ追っかけられたら、余計なプレッシャーがかかるやろうなと。ちょっと異常なほどの取材の多さだったからね。先生もさすがに疲れてたわ。逆に、これで勝ったらドラマやなと思いましたわ。
──そんなにすごかったんですね。ファンの方からは「正直、小牧さんに乗ってほしかったです」という意見や、「小牧さんに騎乗依頼はなかったのですか?」という質問もきています。
小牧 騎乗依頼は一度もなかったね。2歳のころはね、あの馬、ものすごくうるさかったんですわ。調教のときに立ち上がってひっくり返ったりね。だから、僕も積極的に乗ろうとしなかったところがあって。ひっくり返ったのを2回くらい見たからね。テンションがすごく高かったんですわ。だから持ち乗りの人しか乗れんでね。そのあと、徐々に馬が変わっていったんやけどね。
──そうだったんですね。
小牧 僕自身も複雑です。橋口先生のダービー初勝利の鞍上が、なんで自分じゃないんかなって。先生が勝ったことはホンマに嬉しいんやけど、ジョッキーとしては悔しいし、複雑な思いはあります。ましてや同じダービーに乗っていたわけやからね。本当は僕に乗せてもらいたかったなって…。でも、それも実力のうちですわ。僕に足りないところがあったということ。

先生が勝ったことはホンマに嬉しいんやけど、ジョッキーとしては悔しいし、複雑な思いはあります
──橋口先生にとって、ダービーは人一倍思い入れのあるレースですものね。
小牧 そうやね。フジテレビの番組を観たら、レースのあと、ちょっと涙を浮かべとったもんね。先生の馬でダービーに出られる可能性があるのもあと1回。乗せてもらえるように頑張るしかないですわ。
──もうひとつ、ダービー絡みの質問がきています。「ダートで勝ち上がってきたエキマエのダービー出走について、賛否両論が飛び交っています。芝で実績のない馬がダービーに出て、ほかの有力馬のチャンスを奪っているという人もいれば、現行のルール上、まったく問題ないし、馬主さんなら誰もがダービーに出したいと思うのは当たり前という意見もあります。これについて、小牧さんはどう思われますか?」というものです。
小牧 出走して当たり前ですよね。だって、競馬に絶対はないから。ダービーに限らず、出るからにはチャンスは18分の1なわけやからね。距離実績がなかろうと芝実績がなかろうと、チャンスは平等やからね。絶対に出るべきだと僕は思います。
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