
平取軽種馬育成センターでの審査風景
◆品評会は全体のレベルアップに繋がり、大きな意義がある。
今回初めて、平取の1歳馬品評会に参加してみた。第45回とあるからずいぶん長い歴史である。それぞれの牧場で昨年生まれた自慢の1歳馬を出陳し、みんなで各牧場を巡回して見て歩くという行事が品評会である。
平取町も例外なくこのところ牧場軒数が減っており、現在約20戸ほどであろうか。生産頭数はこの20戸で160頭弱である。ただ平取の場合は、早期から和牛(びらとり牛)やトマト栽培(ニシパの恋人などが有名)に切り替えた農家が多く、現在サラブレッド生産に従事している牧場は「残るべくして残った」牧場ばかりとも言える。
6月20日(金)午後3時。待ち合わせ場所の平取町農協に行くと、すでに30~40人の人々が集合していた。軽種馬生産振興会長の北嶋佳和氏が人々の間を縫って1人ずつ挨拶をして回っている。町内の生産者の他、取材のため同行するマスコミ関係者やJRA日高育成牧場の面々もいる。
今回の審査員はそのJRA日高育成牧場場長・山野辺啓氏、JBBA日本軽種馬協会静内種馬場場長・中西信吾氏、ビッグレッドファーム・岡田紘和氏、北海道競馬調教師会会長・桧森邦夫氏、岩手県調騎会会長・瀬戸幸一氏の5名が務めることになっており、岡田氏を除く4人がすでに到着していた。岡田氏は急用のため欠席することになり、この前日に各牧場を1人で巡回し予め採点を済ませているとのことであった。
各人に出陳馬名簿が配布される。A4判の立派な造りで、立ち写真がカラーで大きく掲載されており、ブラックタイプも完備している。今年の出陳馬は12牧場で計13頭。後半には協賛団体や企業などの広告が掲載されており、ずいぶんお金のかかっている印象だ。

平取品評会巡回風景
午後3時。予定通りに平取町農協前を出発した。移動はそれぞれが自分の車を使用するため、10数台の車列が並んで進むことになる。最初は二風谷軽種馬育成センターにて3頭を見ることになっている。
二風谷軽種馬育成センターに到着するとすでに出陳馬が広場に出て待機していた。それぞれ車を下りて、馬を大きく取り囲むように観察する。ここで採点のポイントとなるのは、血統や体型、体格などよりも、手入れの仕方や馴致、持ち手の引き方の方により重点が置かれていることだ。蹄の先までしっかりと見極められ、タテガミの梳き方やトリミングの仕方、耳毛や鼻、顎なども無駄毛がないか丹念にチェックされる。
立ちポーズでの展示の後は常歩で歩様を見る。引き手の指示にしっかりと応えて歩いているかどうかが採点される。審査員の持ち点は各20点。5人で100点満点となり、合計点で順位が付けられる。
二風谷軽種馬育成センターの後は、オークツリーファーム(2頭)、船越伸也牧場、川向高橋育成牧場、スガタ牧場(2頭)、コアレススタッド、清水牧場、高橋啓牧場、中田牧場分場と巡回した。全ての馬を見終わったのは午後5時半頃。移動するのにやや時間がかかったものの、まずは予定通りに全馬を見て回ることができた。
こういう行事でもなければそれぞれの牧場を見て歩く機会などないので、馬だけではなく、各牧場のロケーションの違いなどもひじょうに興味深かった。改めて、サラブレッドという高級品をいかに管理し、いかに良く見せるかについて考えさせられた。

表彰式&懇談会場の様子(くろべこ)
午後6時から、町内紫雲古津(しうんこつ、と読む)にある「くろべこ」(地元びらとり牛の専門店)にて表彰式と懇親会が開催された。結果は以下の通り。

最優秀賞・86点「ホーマンソレイユの25」
最優秀賞・86点「ホーマンソレイユの25」(牡鹿毛、父エンパイアメーカー、びらとり牧場生産、飼養者・二風谷軽種馬育成センター)。金賞・84点「ドナマッハの25」(牡鹿毛、父タイキシャトル、協栄組合生産、飼養者・オークツリーファーム)。銀賞・81点「タニノピカンテの2013」(牡青毛、父ワイルドラッシュ、北島牧場生産、飼養者・オークツリーファーム)。銅賞・77点「サンクチュアリの2013」(牝栗毛、父タイキシャトル、川向高橋育成牧場生産、飼養者・同)。

金賞・84点「ドナマッハの25」

銀賞・81点「タニノピカンテの2013」
名簿に掲載された各馬の立ち写真は一か月前に撮影されたもので、その後、どの馬も重点的に磨きをかけられた結果、見違えるような姿になっていた。審査委員長を務めた山野辺啓・JRA日高育成牧場場長は「全体的によく管理が行き届き、レベルの高い馬が揃っていた。それぞれの努力の跡が窺える」と講評した。北嶋佳和会長はその辺りについて「5月30日に馬の仕上げ方についての講習会も開催しました。今後もセリに向けて馬をどのように作って行くか、さらに全員で研鑽を深めたいと思います」と語った。

銅賞・77点「サンクチュアリの2013」
品評会はかつて、日高のどこの町でも生産振興会単位で開催されていたが、現在はここ平取と新ひだか町三石で継続されているのみ。しかし、この行事は全体のレベルアップに繋がり、大きな意義がある。休止されたままになっている他町の振興会でもぜひ復活して欲しいと思う。